3
家に帰って、テレビゲームをしながら無料アプリの電話で話しながら、コントローラーをカチャカチャと動かしながら口を動かしていた。
「それでー?」
「だーかーら、陽花の話だって言っているの~」
「あーはいはい」
「陽花とは何を話していたのー? 私知っているんだよ? 放課後、一緒にいるところを見たって友達が言っていたんだぞ~」
「別に、特に何も話してないよ」
画面にはゲームオーバーという赤い文字が書かれていて、人が倒れている。
死んでしまった。
このキャラクターも不幸だよな。彼らからしたら何度も生き返させられて、また死んで、また生き返されて、また死んで。
何度死んでも許されることのない世界に生まれさせられた。
人気作品ほど、キャラクターの死亡回数は多いだろう。
そんなキャラクターを何度も死なせて喜んでいる自分もまた最低な人間なのだろう。
「おい霜月、話を聞いているのかー? おーい」
「聞いているって、うるさいよ」
「うるさくさせているのは霜月だからね、それで陽花とのデートの話なんだけど」
「いつもみたいに遊びに行けばいいんじゃないのか?」
「…それだとさ…なんかマンネリ化しているような気がしてさ。なんかスパイスを加えられるアイディアが欲しいって言っているんだけど」
「塩・胡椒を持って行けば良いと思うよ」
「そういう意味じゃない」
「ていうかさ…もういい加減好きですって言えばいいじゃん」
「ば、ば、馬鹿じゃないの!?」
一際大きな声で怒鳴り、思わずコントローラーを動かしていた手を耳にあてる。
画面にはまた「ゲームオーバー」と表示されていた。
違います。今のは俺じゃなくて、望月茜が殺しました。だから僕は悪くありません~。
教室も一緒に沢山話しをしているところを何度も見ているが、過度なスキンシップは避けている。小学校の時、姉妹だからと言ってベタベタし過ぎでおかしいと囲まれて言われてから、外で2人きりになることを出来るだけ避けるようになった。
実はこの姉妹、お互いを恋愛対象として見てしまっているのだが、世の中同性の恋愛には批判的(差別的)で、大っぴらに言うことが難しい。本人達もそれは分かっているようで、霜月明を仲介役にして、イチャイチャしているようだ。
ちなみに家でも親に隠れてイチャイチャしているようだが、お互いの思いは伝えてないらしい。
「だから、どうすれば陽花をドキドキさせることが出来るかって聞いているの」
「霜月がベタベタ身体をくっつければ喜ぶと思う」
「そ、そんなの…痴女じゃない! 私が遊んでいるような印象を抱かせちゃうじゃん!」
「じゃあ…一緒に遊びに行くとか」
「2人きりとか無理、絶対私暴走しちゃうって」
「女友達連れて行けば?」
「霜月以外信用できない」
…めんどくさいな…。
姉妹でお互い恋愛対象として見ているが、それを告白しているわけでもなく、2人とも片思いしているような状態でアドバイスをしろって…。
どんなアイディアがあるかな…
「あ、ごめん、私そろそろ」
「おう、お休み」
「うん、おやすみなさい~」
通話が途切れる。
時計を見ると、もう夜遅い。
明もゲームをするのは止めて、風呂に入って歯磨きをして、就寝した。