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「げ…」
「げ?」
「元気?」
「さっき教室で目があったでしょ」
「そうだね」
明は古本屋で本を大量に買って帰宅している途中、顔を合わせたくない人と会った。
望月陽花、幼稚園から一緒で今通っている中学校までずっと同じクラスだった。幼稚園から小学校高学年になる前までは少し交流をしていたが、男女のグループがはっきりしやすい小学生高学年になると全く交流をしなくなった。
妹の茜とは高学年になっても時々交流をしていたが、話の内容は姉である陽花のことで、お互いのことはほとんど話をしたことがない。しかし、陽花と接するよりはまだ接しやすい方だと感じている。
「…じゃあ」
「…」
適当に返事をして、陽花の前を立ち去ろうとするが、
「…あの、相談良い?」
「…また?」
「また」
「…」
「お茶一杯奢るよ」
「分かった」
陽花が前を歩いて昭は少し離れた距離でついていく。どこに向かうのかと思っていると近くのファミレスに入っていった。
「いらっしゃいませ~、何名様ですか?」
「2人です」
「2名様ご案内です~」
店員さんに案内されて4人席に案内される。ドリンクバー2つとフライドポテト(一番大きいサイズ)を注文して、順番で飲み物を取りに行く。先に昭がオレンジジュースをコップに入れて戻り、陽花もオレンジジュースを入れて戻ってきたのと同時に注文したフライドポテトが届く。
「…うま…もぐ」
「私の分も残してよね」
「考えとく」
「残せ」
「はい」
強い口調で言われたので動かす手を緩めながらフライドポテトに手を伸ばし続ける。
「それで茜についてなんだけど」
「うん」
明はフライドポテトを食べて聞き流していたが、陽花が明の手をぺしっと叩き
「聞いて」
「聞いているっての」
フライドポテトに手を伸ばしても何度も手を叩かれ、ついには抓られる。
「いて」
「聞けっての」
「はいはい、妹がどうしたの?」
陽花は少しためらうような感じで間を空けた後に、顔を真っ赤にして
「今日も可愛かったなって」
「知っていた」
陽花からの攻撃を回避してフライドポテトの皿を両手でつかみ、口を付けて飲み込もうとするが
「ごほ…うへぇ…ごほ」
思いっきり喉に詰まってしまう
「それはそうなるでしょ。本当に全部1人で食べちゃったの?」
「美味しかったです」
「それに関しては霜月が払え」
「断る」
「は?」
「断る」
「…あんた良い性格をしているわね」
「冗談、このフライドポテトに関しては金を出すけど、ドリンクバーは望月が払えよ」
「そういう約束だから、それは良いけど…」
「じゃあドリンクお代わりしてくる」
「…はい」
オレンジジュースを飲み切って、またコップ一杯にジュースをギリギリまで入れる。
そして陽花の所に戻り話を聞くことに
「それで、霜月さんが可愛かったと」
「そうなの! デザートでお弁当に入れていた桃を食べている時の表情とか」
「それ本人に言ってあげたら?」
「妹にそんなことを言ったら気持ち悪がられるでしょ!?」
「じゃあ友達に言えば…」
「妹を可愛いって言うと、なんか反応が悪いのよ。私のは度が過ぎてるから注意しなって言われた」
「…とりあえず、霜月さんの魅力を語ってくれ」
「もとからそのつもり!それでね~」
それから数時間以上、妹の茜のどこが可愛いかとか、どこに不満があるとかという話を一方的に聞いていた。
よくもまぁ、妹のことをそんなにペラペラ話せるものだ。
5分に1回ドリンクバーに向かって、ジュースをお代わりしに行って、代金に見合う分の量を飲んでいく。
明がなんどもジュースをお代わりしに行っても、陽花は怒らない。
いつものことだからだ。明が陽花に話すときも、陽花はいつも明の話を聞き流している。
これが2人の距離感だ。
陽花の惚気を聞き流していたら、既に外は暗くなっていた。
「あ、話しすぎた?」
「外見てみ」
「なんだ、まだ全然話し足りなかったわね」
「いや、外真っ暗ですけど?」
「まだ明るいでしょ?」
「霜月が指差しているのは街頭な」
「…また今度話していい?」
「はいはい」
「じゃあ…バイバイ」
「おう」
明に別れを告げて、家に帰っていった。
昭も家を目指して、足を進める。
そんなこんなで家に帰った。
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