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終わり  作者: 千夜 すう
第一章
7/30

両親との話し合い

「優香」


母が泣きそうに私の名前を呼びながら抱き締められた。


「目が赤いな」


父が私の頭を撫でる。


安心する。さっき、枯れたんじゃないかと思うくらい泣いたのにまだ流れるんだな。



「早く家に帰ろう」


優しい声で、父に促される。


車内では、誰も話そうとしなかった。

母は私の隣に座り、私の背中を優しく(さす)る。

父は時々、バックミラーで心配そうに私達をみていた。

私は、こんなにも私を心配してくれる両親に、彼と浮気相手の会話を聞かせる事に申し訳ないと思った。

男の見る目が無くてごめんなさい...。






現在、私が一人暮らししている家から実家の距離は車で20分の所だった。

実家は普通の一軒家。生まれた時から高校卒業まで、私は家族と暮らして居た。




「ただいま」



「「おかえりなさい!」」



今の暮らしてる家も休まるが、この家が1番、ホットする。




「ココア作ってくる」



母はそう言い、台所に向かった。

大事な話がある時は決まってココアを飲みながらだった。

(いわ)く、甘いものは落ち着くから冷静になれるという。



「そこに座って待ってて」



私がいつも座る椅子に促され、父も台所に行った。

珍しい...

母がココアを入れる時は、父はいつも椅子に座って待ってた。

今日は手伝うのかな。

そう思っていたが直ぐに帰ってきた。




「ほれ。目が真っ赤になってる。これ、付けときなさい」


渡されたのは濡れた、フェイスタオルだった。



「それは、新品のやつだ。未使用だから安心せい」


促されるままに、濡れタオルを目につける。


目が冷える




「ありがとう」



「また、どうせ、後で泣くんだろうけどな」



....父よ。

今、ツンデレ発動するのか。


「入れてきたわよ」



母がお盆にココアの入ったマグカップを3つ乗せて、やってきた。



「いただきます」


まず、全員で1口飲む。


「うん。美味しい」


「ありがとう」


母の淹れるココアは市販のお湯を注ぐだけで終わる商品と少し違う。

無糖のココアパウダーでお好みに甘さを加えるのが母流。

甘過ぎないこの味が好き。



「早速だけど、潤くんが浮気の証拠は?」



大事な話し合いの時は、いつも母が仕切っている。

全て話し終わった後に父は結論だけを話す。



「これを聞いて」



鞄から携帯を取り出した。

今日、録音したファイルを開いて再生の項目を押す。




両親は、最初は会話に驚き青ざめ顔色だったのが、聞いてるうちにドンドンと顔を真っ赤にする。


相当、怒ってる顔してる。


3度目でもまだダメだな。

2度目と違って泣かないけども泣きたくなるのは変わらない。辛い。




「うちの娘を馬鹿にして」


滅多に怒鳴らない父が、大きな声を出して怒鳴っているのをビックリしたけど、嬉しかったし自分が情けなく感じて複雑な心境。



「9年って...」



「全然、気づかなかった」



「優香を幸せにするって俺に宣言したのは嘘だったのか。一緒に飲みに行って、優香が凄く好きって惚気けてたのも....」



「宮村さんご夫婦はこのこと知ってるのかしら?」



「それは、分からない。私が潤の浮気を知ったのも今週よ」



「この会話の時に知ったのか?」



父に聞かれ、私は今週の水曜日の夜に残業だと言っていたが、実は浮気をしていた光景を見たのを話した。



「この会話は今日の午前中に録った。午後に会う約束をしていて、会う前にカフェに行ったんだけど...。そしたら、潤の声と浮気相手の声が聞こえたの」




「気づかれなかった?」


「たまたま、私が座った場所の隣には仕切りがあるのよ。だから、バレなかった」



「お前との約束の前にお泊まりデートとはいい度胸してんな」


父は物凄く、低い声で言った。


「そうね。優香との約束が無くなったから今日、またお泊まりデートしてるんじゃないかしら?」



「私もそう思う」



「結婚しないことに反対はしない」


「そうね。あなたは、まだ若いんだから次があるわよ。」



「次はどうかな....」



今回のことで、恋愛はしたくないなって気持ちになってる



「今後、どう動くつもりだ?」



「上司の知り合いに弁護士がいるみたいだから紹介してもらって、相談するつもり。式場のキャンセル代は勿論、2人別々で慰謝料を請求するつもり」



「それがいいな。弁護士の料金は父さんがお金を出す」



「あら。お父さんそれはダメよ。あちらに払って頂かなきゃ」



「そうね。どれくらいの費用か分からないけど、最初は自分で払って、慰謝料別で弁護士費用もあちら負担にしてもらうことって出来ないかな...」



「確か、出来ると思うがあちらは渋るのだろう。弁護士の腕次第なのと、経済力によるかな」



「そうね....宮村さんご夫婦はこのことを知ってるのかしら?」



「それはどうだろう...」



「知ってたならば。許せないな」



「家族総出で騙し、騙されたんだものね。結婚詐欺よ。10年の歳月は重いわよ」



結婚詐欺....

母の言葉に納得する。

給料が良いとかも言ってたし...



「潤と優香の共通の友達で誰か知ってる人は居ないのか?」



「さあ。それは分からない。疎遠になってる人も多いし....愛美(あいみ)に聞いてみる」



愛美は小学校からの幼なじみ



「誠実そうに見えたんだけどね」



母は残念そうに言う



「優香は勿論、俺ら家族は見る目がなかったんだ」



「お母さんが言った結婚詐欺が1番しっくりくる」



10年、長かったけど、メソメソしては居られない。

辛くて悲しいのは勿論ある。だが、怒りの方が(まさ)ってきた。








「ねぇ、お父さん」



「なんだ?」



「私、泣かなかったわよ」



少し、悔しそうな父


なんで???


笑う母

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