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終わり  作者: 千夜 すう
第一章
5/30

驚愕と盗聴

土曜日の朝、私は浴槽に湯を貯めている。


普段は寝汗を洗い流す程度に朝シャンで済ますが緊張する日と冷静でいたい日は朝から湯船に体を浸かる。


緊張すると手足が冷えていく。


暖かい湯に包まれてると、頭の回転が速くなっていく感覚がある。


浮気を見た

婚約破棄する

式場キャンセル

キャンセル料金はそちらで払って貰いたい

両家に報告について




話しておきたい事や話しの切り出し方などを脳内でシミュレーションする



浮気相手は誰なの?

いつから浮気してたの?

私に何が不満があったの?

何で、プロポーズなんかしたのよ



相手のことを聞きたいが、聞いてもどうにもならない。

()()したのは過去で現在の()()だから…






------------------------------------------






午前中は用事があるらしく、午後1時から会う約束していた。

家にいても時間を気にして憂鬱になりそうだから、待ち合わせ駅から数駅の所の大きいモールでウィンドウショッピングする事に決めた。



プロポーズされてからお互いの両親に挨拶、両家の顔見せに式場の予約や打ち合わせだったりとここ暫くの休日は忙しかった。

式場に関しての打ち合わせなどは、彼は仕事が忙しいと私に任せきりだったから余計に忙しかった。

今思えば、仕事じゃないだろう…。





久しぶりのショッピングは楽しい。

好きなブランドの新作が出て欲しくなる。


一色グレーのワンピース。

胸が強調されそうが首に透けて見えるレース模様で下品に見えない。

ウエストで少しキュッと閉まり、そこから伸びるスカートは綺麗な曲線に広がっていて膝下の丈で裾でキュッと少し閉まったフォルム。腕の七分袖の裾3センチは首のと同じレース模様がある。



うーん。可愛いな。買うかどうかと迷った。

少しお高めの値段であった。

この迷う時間も楽しい。

また後で寄っていこう。その時に改めて決めようかな。




沢山歩いて疲れたから、モール内のカフェに入る。

そこそこ混んで居る店内。イマドキのお洒落風なカフェで女性同士やカップルの客が多かった。

私は奥の方の席に案内される。

約束の時間まで、後、70分。逆算して、40分はここで休憩できる。

コーヒーと軽食のハムサンドを頼む。


頼んだものが届き、食べ始めた時。よくあるお洒落な、上に植物を置いている仕切りの先の隣の席に人が案内されていた。


「昨日からのお泊りデート楽しかった」


カップルが来たみたいで、弾んだ可愛らしい女性の声が聞こえる。


「そうだな。ここでお別れは寂しい」



男性の声を聞いて身体が固まる。物凄く、聞き覚えのある声だった。



「私も寂しい!次、いつ会えるの?」



「明日、会おう。今度は美希の家に泊まって、そこから出勤する」



「まぁ、悪い人。今日、婚約者と会うんでしょ?」



へぇ。婚約者が居るって知ってたんだ。

私は隣に気づかれないように慎重に鞄から携帯を取り出した。そして、録音ボタンを押す。



「あぁ。昨日、会いたいって言ってた。最近、放置してたから寂しがってると思う」



「私は最近、沢山会えて嬉しかった。次は私が寂しくなる番かな」



「美希に寂しい思いさせる訳無いだろう。そんな事、今まで無かっただろう。俺の方が寂しくなって無理だ」



「確かに!9年間、ずっと彼女より私を優先してきたよね。本当に悪い人」


悪い人と言いながら笑っていた。


9年!?

(あま)りにも長い年数に内心、絶叫したくなった。

ずっと、私より浮気相手を優先って、どんだけ私をバカにしてるんだろうか。

ずっと、気づかない私がバカだった。



「俺はお前を愛してるし、あいつには情はないが両親に気に入られてる。給料も申し分ない。後は子供を産ませなきゃいけない」


「私は潤に愛されてるのはずっと昔から知ってるよ。私が不妊じゃなきゃ良かったのにね」



「俺も美希との子供が欲しいがこればっかりはな…。早く子供産ませて虐待したと適当な事をでっち上げて親権を取る。ついでにお金も取って美希と再婚する。」



「素敵ね。待ってるわ」


素敵と思えるセリフは、どこじゃいと突っ込みたい。

私は出産マシーンか。

atmか。

自分勝手な2人の会話に腹わた煮えくりかえる。

彼の本性にも長年の浮気にも気付かない私はバカだが、こんな所でこんな話をする2人はもっとバカなんだと思う。



そのあと、私を(おと)す発言で盛り上がったりバカップル全開の会話して2人は店をでた。


お店を出る時、無音で動画に切り替えて撮った。




体調が悪いから会えないメールを打つ。

大丈夫?家に行くよ。と言われたけど、丁重にお断りした。





私は決めた。

絶対に二人から慰謝料取る

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