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終わり  作者: 千夜 すう
第一章
4/30

2回目の食事

本日2回目の『おかえりなさい』のお店である。


ただいまと言いたくなる店名だ。



案内された席に座る。

奥にあるテーブルで他の客から死角になる場所で隣にお客さんも居ない。

流行りの曲のBGMが流れている。



日替わり定食は、お昼の時間と夜の時間では値段とメニューが変わるそうだ。


私がこちらのお店に行くのは、いつもお昼の時間だから夜の店のメニューを見るのが初めてで、好奇心を少し擽られながら昼と夜のメニュー表の違いを比較する。


「主任は夜のメニューで食べた事ありますか?」


「俺は昼よりも夜の方が多いな」


「そうだったのですか」


頼んでいた料理が運ばれた。


今日もしっかりと出汁が効いてるお味噌汁。

程よい塩味のナスとセロリの漬物。

少しの苦味がアクセントになる菜の花の和え物。

タコときゅうりの酢の物。

あまじょっぱくてご飯が進む卵焼き。

ホクホクと美味しいじゃが芋に芯まで味が染み込んでる肉じゃが。

サラッ軽くサクッとした食感の衣に美味しい季節の野菜が揚げられた天ぷら。

メインのマグロの唐揚げは、マグロがパサついて無くしっとりとしてて、衣のザクっと感が堪らなく美味である。





「美味しい!セロリの漬物を食べた事ないです」


「実はセロリ苦手なんだが、何故かここのセロリ漬物は食べられる」


「私もあんまり好きな食材ではないですね」


食べられない訳じゃないが子供の頃から苦手な食材だ。


でも、私にとってはセロリは大事な食材だった。


「結婚する予定だったの人はセロリが大好きな人でした」


「変わってる人だね」


主任が笑いながら言い、私も笑いながら返した


「私もそう思います」


料理にセロリが入ってると大袈裟かと思うくらいに喜んでいた。


セロリの入った、私が作った肉じゃがが世界で一番に美味しいと笑顔で語っていた。


セロリ入り肉じゃがが、我が家の味になるんだろうかなと、いつか子供が生まれて、セロリ苦手だったら大変だなと作る度に、未来を馳せ妄想をしていた。



そんな未来は来ない事実をあの時から何回も痛感させられている。


「私ってマゾなんですかね」


「えー。マゾなの。そうじゃないと思うんだけど」


えー。木佐ってマゾなのか?と首を傾げ、悩みながら呟く主任に少し笑ってしまう。


辛くなるのがわかるのに彼との思い出を思い浮かぶのはマゾだと思ってしまう。




「婚約破棄の理由を聞いてもいいか?」


恐る恐ると聞く主任に私は躊躇いもなく言った。


「相手の浮気です」


ハッとし、少し気まづそうな主任。


自分から聞いたんですよ。


まあ、理由としては気まづいでしょうが破棄するには良い理由はあまり聞きません。


自分から聞いたんですからね。

主任と思った。


「俺も大学時代に浮気された事あるから少しだけその辛さがわかる。辛いよな」


「少しだけ…」


「俺の場合は結婚の話は具体的にしていなかった。自分の中ではそういう未来もあるかもと思っただけで…。木佐はしっかりとその人と約束したんだろう。現実的な未来だった。俺のと比べると辛さが違う」


驚愕(きょうがく)なカミングアウト。

主任の容姿は、世間一般的にイケメンと言われる部類だった。


浮気をした彼女どんな美人だったのだろう。


若しくは浮気した相手はどんなイケメンだったのだろうか。


「浮気する人って最低ですよね」


「同感」


「ケジメをつけて別れてから付き合えばいいのに」


「同感」


「ここのお店美味しいですね」


「同感」


「同感しか言ってませんよ。もっと、ボギャブラリー増やしてください」


「おっと、国語力鍛えなきゃな」


おどけて言う主任。


和やかな空気が流れ、会話が弾んだ。


お店の人からは、私が夜に来たのが今日が初めてだからと、その理由でサービスだと言われてソフトクリームを貰った。

ミルクが濃厚なのに後味サッパリして美味しかった。







帰りには、主任からは知り合いに弁護士が居ると言われ、必要になったらよろしくお願いしますと私は頭を下げた。



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