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終わり  作者: 千夜 すう
第一章
3/30

食堂「おかえりなさい」

婚約者の浮気を知ってから翌々日。


今日を乗り越えたら明日からは休日。


婚約者の浮気の所為で、休み無しの忙しい休日になりそうだ。


会社を出る前に明日、会いたいとメッセージを送った。


すぐに了承の返事を貰えた。


以前、結婚すると報告したけど止める事になった話をしなくてはならない。







「おはようございます」


いつもと変わらない挨拶した


主任を見かけ、話しかける。


「今日のお昼の休憩時に、お話したい事がありまして、お時間を頂きたいのですが、よろしいのでしょうか?」


「いいよ。一緒に、ご飯食べながらでいい?」


「はい。大丈夫です。ありがとうございます。忙しい中でありがとうございます」




午前中は特にトラブルもなく、お昼の時間を迎えた


会社から出て徒歩五分の所に、仲のいい老夫婦が切り盛りしてる小さな食堂『おかえりなさい』に向かった。


ホッと落ち着く雰囲気の店内に暖かな笑顔くれる老夫婦の2人。


人柄が映し出されたかのように優しい味がする料理が本当に美味しい。


主任はここの常連さんで、私はたまに来る程度である。


始めて、主任と遭遇した時はびっくりした。


このお店は会社から近いけれども、道順がややこしくて、分かりづらい所にある。


他の会社員は同じく徒歩五分で、会社からこのお店に向かう反対方向の飲食店が沢山あって、賑わってる所でお昼を食べてく人が多い。



「いらっしゃいませ」


笑顔がステキな奥様に迎えられる。


店内は数席だけ空いており殆ど満席だった。


奏太(そうた)くん、今日は優香(ゆうか)ちゃんと一緒なのね。珍しいわね」


偶然に会う事は数回とあった。


実は、最初から一緒に食べに来るのは2回目である。


「いつものお願いします」


「私は日替わり定食を一つお願いします」


日替わり定食は500円とワンコインの安さにボリュームもあって、味も美味しいから、いつも頼んでしまう。


私の定番メニューである。


「2人とも日替わり定食ね」


注文を聞き終えた奥様は厨房に行き、注文を伝えていた。


「それで、話したい事は?」


「実は、結婚を中止し婚約破棄しようと思ってます」


上司は少し目を開く。


手で口を覆って、誤魔化すように咳払いをなさっていた。

まぁ。突然、こんな話されても戸惑うだろう。



「2か月前に、このお店で結婚宣言されたばっかなんだけど…」


初めて主任と、このお店に食べに来た時も、ここで報告したのだ。


「残念な報告ですみません」


少し気まづくなった空気の中で頼んだ料理が届く。


今日はカレイの煮付けだ。


食欲が湧く美味しそうな香り。


まずは、空腹を満たそう。



「「いただきます」」


うーん。美味しい!

しっかりと、お出汁が効いてて、ホッとする様な感じのお味噌汁。


甘辛く丁度良い味付けで、程よいシャクシャク感のきんぴらごぼう。


適度な塩味がきいている手作りのきゅうりとカブのお漬物。


細切りにされた大根と人参ときゅうりが、生野菜特有のシャキシャキ感サラダと、普通の市販のマヨネーズと違う、隠し味の工夫がされてるのであろう、コクのあるマヨネーズがサラダと相性が良い。


メインのカレイの煮付けは、カレイに味が染み込んであり絶品。


「美味しい」


それしか言えない。




「寿退社する予定も無かったし、挙式と披露宴も身内だけの予定のおかげか、結婚報告を早めにする必要が無かった。今の所、結婚予定だったのを知っているのは、俺と課長と人事部の浜田だけだから、変に噂される事なく、今後の仕事には支障がなく働けるだろう。」


「それならば不幸中の幸いです」


「サラッと言うのな」


若干、呆れながらに言われた。


寿退社の予定だと、後継ぎ等の事情で早めに報告しなければならなかった。


式と披露宴に招待も同理由。



それで婚約破棄の事実を知られたら目も当てられないだろう。


私にとっては辛い噂は勿論、好奇な視線に見られる事は予想がつく。


それは遠慮したい鬱陶しいのであろう。


「この店のファン仲間として相談は勿論、愚痴聞くよ。いつでもウェルカム」


「上司としてじゃないんですか?」


「この店のファン仲間」


重くならないように、軽く言われたが、心配してくれているのは声色と表情でわかる。


少し気が緩む



突然だった。


何回も思うが、幸せになるはずだったのに…なんで?と繰り返してる。


今、優しい言葉は胸に染み渡る。




「今日の夜、空いてるか?」


「え…」


「仕事終わったら、ここで夜ご飯食べない?急ぎの仕事はない。それに、ここのお店は23時まで営業している」


あまりに予想外の言葉に一瞬、思考を停止させる





「今日の夜ご飯、また2人で食べに来る」


主任は奥様にサラッと話しかける。


主任は何を勝手な事を言ってるのでしょうか。


私はまだ何も言っておりませんが...。


「嬉しいわ。サービスするわよ」


奥様も満面の良い笑顔


「楽しみ!ご馳走さまでした」


「美味しかったです。ご馳走さまでした」


お会計を終え、会社に向かう。


「夜ごはんの件ですけど、私は了承しておりません」


「今日は用事があるのか?」


「特には...」


ない。


まあ、いいかと思った。


一種の思考停止。

5分過ぎてしまってごめんなさい<(_ _)>〈 ゴン!〕

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