表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終わり  作者: 千夜 すう
第二章
29/30

女性のタイプのイメージ

婚約破棄をして新たな日常に慣れていた頃。


1年に1回の恒例行事の季節が近づいていた。正社員、派遣、アルバイト含め、会社の関係者全員で商品開発の企画を考えるイベントが開催されていた。優れた企画は採用され、商品化が進められ、給料から一定の金額のボーナスが貰える。


商品企画課に配属を希望して叶わなかった人は、悔しさをバネにして挑んだり、配属される事を諦めておらずに己の実力を見せて商品企画課に移動を狙っている。


実際に企画を採用されて異動になった者も居る...。それは、木佐優香の実体験である。新人の頃、最初に営業の方に配属されていた。入社した年に、この行事で企画が採用されて商品化までに進み、有難いことに売上が好調だった事で、今の仕事場へと異動された。


特に、商品企画課に何の思いもない正社員の殆どは、ボーナスを狙っていた。企画があまりに拙いと仕事が出来ないと思われかねないので、商品を思いつく斬新さや柔軟さが無くても、それぞれ、自分の得意分野からアプローチしてる。


派遣の人の中でも、正社員を狙ってる人達は、実力を見てもらえて正社員になれるチャンスだと張り切っていた。それは、アルバイトの子でも同じであった。


採用される人数は決まってなく、1人の時もあれば、良い企画が沢山あれば10人、無い時は0人の時もあるらしいと噂に聞く。


誰もが、今年こそはと意気込んでて、私も同じ思いでやる気に溢れている。


入社した年以来、この行事では私の企画が通らないから悔しい思いをしてる。



♢♢♢



会社で飲食出来るスペースでいつもと変わらないメンバーと共にお弁当を食べる。


「この時期になると和気あいあいとした職場が、ピシッとした緊張感が漂うから苦手です」

他の人に聞こえないように声を潜ませて言う金子君に、同調する岩波ちゃんは何回も頷きながら金子君と同じく声を潜めた。


「ちょっと、分かるかも...。他の人からの視線が気になる時期よねぇ」


2人に続いて声を潜める。


「皆が良い意味で敵だからね」


「そうなんですけど...。良い企画も思い浮かびそうにないです...!!」



「そこは、しっかり仕事しなさいよ」


苦笑してしまう。


金子くんの気持ちも分からなくはない。


会社恒例の行事があっても、普段の仕事が無くなる訳ではないから、当然な事で普段の仕事と両立させながら他の人よりも良い案を捻り出そうと、頭をフル回転させてる。少し、余裕が無くなる人が多い時期である。


私達もいつもと変わらない緩く喋ってるが、頭の中は企画の事で一杯だ。


婚約破棄等で時間を取られてしまって、企画の事をあんまり考えてなかった。毎年この時期にはある程度は絞れてるのに...。あぁ、婚約破棄して思った事は、あいつとの時間はトコトンに無駄な時間であった。


今年はどうしようかと少し焦る...。



「主任は凄いですよね。ほぼ毎年、選ばれてると聞いてます」


「そして、ヒット商品となる」


影で金の成る木として崇められてる...。昇進も近いと噂で聞いた。


「主任、かっこいいし仕事も出来るって最高だわ。1番は独身のフリーって所が...」


「えー、岩波さんは主任が好きなんですか?」


今まで、声を潜めていた雰囲気を始めた本人の金子くんが終わらせた。


「ワンチャンあったら良いなってだけよ」


「岩波さんなら有りそうですね」


岩波ちゃんの容姿は、目が零れそうな位に大きく、控えめで可愛いらしい小鼻に形の良い唇で、王道のアイドルの様で整っている為、金子くんの発言に共感をする。


「そう思う??」


頬を少し赤らめる姿は同性の私でもドキッと来るものがある。チラッと金子君を確認すると、視線は岩波ちゃんに釘付けになってた。耳も赤くなっている事を見逃さなかった。


爽やかイケメンは、岩波ちゃんに気がありそうだと、どこで役に立つか分からない情報を脳内メモをした。


「本気で狙っちゃおうかな」


可愛い顔なのに目が狩人になってる岩波ちゃんに苦笑しながらファイトーと声を掛ける。性格も良くて可愛い子だからイけるかもしれないと思ってる。


「あっ」


「金子君どうしたの?仕事のミスでも思い出した?」


「岩波さん、不吉な事は言わないでくださいよ」


急に思い出したんですけど...と今までより、より一層に声を潜ませる金子君に、なんだろうと好奇心で胸が高なった。


「実は主任は元カノさんに未練があると噂が」


えッ


私と岩波ちゃんが声が重なった。


「主任の元カノって事は美人そう」


岩波ちゃんは勝ち目あるかなと若干悔しそうな声と左手をキツく握っていた。


「主任と付き合う人は美人で仕事もできる女性ってイメージしますよね」


あ~と納得で頷く。


主任の彼女になれそうなのは、あのルックスに見合う美人な人で、仕事の鬼である主任と張り合える位のThe仕事が出来る女、スーツが似合いそうなバリキャリアウーマンなイメージ。主任は、ご飯が好きだから家庭的な要素も必須かな...。ふと、私は主任に似合う女性を考えながら気づいた。主任と付き合う人ってハードル高い...!!


ひぇーと慄く。


「何の話してるのかな?」


急に3人以外の新たな声が私たちに掛けられ、体がビクッと反応する。


恐る恐ると振り向くと爽やかな笑顔の主任がいらっしゃる。


「えっと...。」


イケナイ事をしてた訳じゃないし、悪い事を言ってた訳じゃないけど、話題にしてる人が急に現れると気まずくなる。


「凄く盛り上がってるな」


「煩くしてすみません」


金子くん、立ち上がって頭を下げる。


私と岩波ちゃんも続けて頭を下げる。


私達の行動に主任は慌てて頭を上げて座るように促された。


「そんなつもりは無かったけど、驚かせてしまったね。邪魔してごめん」


「いえ、こちらこそ、気まずくて過剰な反応してすみません」


金子くんが謝ったけど....。気まずいって本音洩れてるーーっ!


「気まずいって?」


気になりますよね...。

隠すのも誤魔化すのも変だから正直に言う事にした。


「主任が、付き合いそうな女性の話をしてた所です...」


なんだと主任は笑っていた。


「ちなみに俺が付き合いそうな女性のイメージが、どんなのか興味ある」


凄く、ワクワクとした声だった。


岩波ちゃんが上目遣い気味で答えてた。


「凄く美人で仕事が出来る人です」


「美人で仕事が出来る人ねぇ」


ふーんと言いたげに復唱していた。



「俺も同じです。キリッとした美人で仕事が出来る人なイメージですね」



「私も2人と同じです」


「別に美人とか気にしないけど...。仕事は、お金を頂いてるからには出来て欲しいかな...」


「まぁ、そうですよね」


納得して、3人は頷く。



「そういえば、いつもなら見かけないのに今日は珍しく、お昼休憩の時にこちらに居ますね」


金子君の言う通り、いつもならマキさんの所に居るのに珍しいと思った。


「今日の午後の一つの会議で、課長と共に木佐と打ち合わせしたい事があって、昼食を食べ終えたら小会議に集合と伝言。メールか電話でも良かったけど、コーヒーを買うついでに」


片手に持ってた缶コーヒーを軽く上に上げて、私達に見せる。



お弁当の中身が数口と残っていたが、箸をしまって蓋をしようとしたら止められた。


「別に弁当を残さなくても良いから。それ位の時間はある」


「ありがとうございます」


いつもより急いで食べ進める。


その間、主任を引き止めるように岩波ちゃんが話しかける。


「主任はいつもどこで食べてるんですか?」


「俺も実は気になってました。お弁当を食べれるこちらにも見かけませんし、外食派の人達に聞いても見かけないと言われるので、疑問に思ってました」


どこ?って感じで目をキラリとさせながら聞く金子くんに、岩波ちゃんはウンウンと首を盾に振る。


外食派の人達は駅の方に行っちゃうから見かけないんだろうな...。


必死な2人苦笑しながら主任は答えた。


「知り合いの店で食べてるんだ」



「ここから近いのですか?」



「まぁ、そうだね」



「お店、気になります。私、行ってみたいです」


「俺も」


ここは乗っからないと不自然なのかな...?


「あ、私も」


「会社の人に会うと仕事モードになるから内緒で」


左目を開けて右目をパチリと閉じた主任のウィンクで、誤魔化していた。


(それだったら、行くの止めた方がいいのかな)


元々、お弁当を作るのが面倒臭いと思った時に食べに行く頻度だった。


「ご馳走様でした」


急いで、箸をしまって蓋を閉じて風呂敷に包んでお弁当用のミニバッグに入れる。


「お待たせしました」


席を立って行こうとしたら「ごめんなさい。少し待って」と岩波ちゃんに引き止められる


岩波ちゃんは、紙袋から透明な袋を取り出して、私と主任に渡す。


「今日のデザートとして一緒に食べようとしたチョコブラウニー。空いた時間にでも食べて...!!主任も是非、食べてみて下さい」


「嬉しい。ありがとう」


(岩波ちゃんのお菓子は美味だから嬉しい)


「俺に渡したら岩波さんの分が無くなるから遠慮しとくよ」


渡された物を返そうとしていた。


「いえ、家にもまだあるのでお構いなく」


好きな人(?)に手作りのお菓子を食べて欲しい乙女心を察してフォローをする。


「この前、岩波ちゃんが作ったエッグタルトを食べたんですけど、絶品でしたよ!!受け取らないと後悔しますよ」


「そ...そうか...。ありがとう。大事に食べるよ」


心の中でガッツポーズしてるであろう岩波ちゃんが目に浮かぶ。


背中を向けて歩き進む主任に続いて、自分も歩き出す時に、主任にバレない程度で2人にグッドポーズをする。


女子同士の人間関係が円滑に進める為に、「貴方の味方だよ」とフォローしたりする行動を見せていった方が良い。やり過ぎは、注意なんだけどね...。



貰ったブラウニーチョコを見る。透明な袋の開け口を3回に折り曲げられて針金で止められていて、3つの細長く切られているブラウニーチョコが、3分の1程度に、英字のオシャレにプリントされたワックスペーパーに包まれて入っていた。


ワックスペーパーは、オシャレ用だけでなく、食べる時に手を汚さないようにと、気配りの利いた心遣いに流石だなと感じる。


(女子力が凄い)


食べるの楽しみだなと思いながら主任に着いていく。

第一章の後書きと今後についてを活動報告に色々と話してます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ