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終わり  作者: 千夜 すう
第一章
27/30

異国の言葉は難しい

全部、終わった。


ちょっとしたやり返しも出来たし、スッキリした。


後は、無事に慰謝料を支払われるのを待つのみで、私が今やるべき事は、潤と過ごした思い出を全て捨ててやろうと思って、以前から目をつけてた物件に引っ越した。


潤からの贈り物等の思い出深い物は持ってたいと思わなくて、だからって捨てるのは勿体ないと思い、売れる物は全て質屋に持って行って売った。大した金額ではなかったけど、引っ越し代の微々たる足しにした。売れない、ラブレターや写真、デートした先の半券等をシュレッダーに掛けて燃えるゴミへと捨てた。その他の売れない物も適切な方法で処分した。


売ったり捨てたりと手放す事に、躊躇いや悔やむ事は無く、寧ろ片付く事でこびり付いた嫌なものを捨てる気分で、スッキリとする。


家電製品や家具も一新したから出費が大変だったけど、これから振り込まれる慰謝料を見越して貯金を切り崩して、この際だからと奮発して、以前よりもワンランク上げて買い物をした。


#物__・__#だけど、新たなものはトキめくのは不可避ね。



♢♢♢



「主任、今日のお昼の休憩時に報告したい事がありますので、お時間を頂きたいのですが、よろしいのでしょうか?」


晴れやかな私の顔を見て何かを感じた主任は「いいよ。一緒に、ご飯食べながらでいい?」爽やかな笑顔で答えた。


「はい。大丈夫です。ありがとうございます。忙しい中でありがとうございます」


いつかと同じ会話をする。


主任と外で話す時の定番になった食堂。


今日もワンコインの安さで美味しくて満足する日替わりランチだ。


メインは、衣がサクッっとした食感で中はジューシーなチキンで、衣に甘辛なソースがなんとも堪らない美味しい味。食べた事ない味で感動して箸が進む。


定番の白菜や細切れの人参が入ってるキムチは、適度な辛さと酸っぱさが美味しい。

初めて食べるシャキッとした食感を残してるもやしキムチも食べてて美味しい。


甘酢で付けた角切りの大根は、ポリポリと食べる。浅漬けのきゅうりも箸休めに丁度いい。


ごま油が効いたピリ辛の野菜炒めも外れなく美味しい。


そして、ホッとするシンプルな豆腐が入ったお味噌汁。


ご飯が止まらない。



♢♢♢



バクバクと箸が進む木佐に、奏太は安心した。


この前までは、元気が無いように見える暗さがあった。

それを、仕事に出さないようにするのは社会人として当たり前だと思いながら、人生でキツい場面でも冷静で居たのは、流石だと思った。

無意識だろうけど、この店で食事をする時に、時々、箸を止める事があった。婚約相手の事を思い出しているのだろうなと安易に想像つく。 頻繁に、その動作をしてる訳ではなく、ずっと見てなきゃ気づかない程度であった。


正直、心配してた。


入社してきた時から、同じく入ってきた同期の誰よりも真面目に一生懸命仕事をしてきた後輩。


仕事で、自分で考えても分からない事は恥ずかしがらずに素直に聞いて、分からないを分からないままにしてなかった。新入社員の時なら、変な遠慮や先輩に聞く勇気を持てずに、そのままにして勝手に判断してミスをすることが多い。


珍しいことではない。でも、木佐の場合はミスをしないように最初から当たり前の行動が出来ていた。何処まで出来てて、何処から出来てないかを仕事の進み具合を報告。


何かあったら連絡。


悩んだら即相談。


当たり前の事だが、新入社員がこの行動をキチンと最初から出来てるのは珍しい事だ。


優秀な後輩が入ったなと注目してた。


俺だけじゃなくら木佐と一緒に仕事をした他の人も、早くに仕事を終わらせたりと派手に目立つ事をしてる訳ではないけど、真面目で丁寧な仕事ぶりを密かに注目していた。


皆に分け隔ても無く優しく接していて、本人は無意識にだが、何気ない言動で救われた人も沢山いて、密かに信者を増やしたりと老若男女に好かれてる。


周りからの仕事や人柄の評価を、本人は凄いと自覚しなくて、当たり前の事をしただけだと思って驕ることもなかった。


益々と、人に好かれる。


結婚報告を聞いた時は仕事を辞めるんじゃないかと一瞬、頭に過ぎった。


優秀なのに勿体ないと...。


直ぐに杞憂であったと知ってホッとしたのを覚えてる。


この世の全てが、幸せだと表情を浮かべてた木佐を見て、心から祝福出来たのだが、緊張した面持ちで結婚をする事を辞めると聞いたときは驚愕した。


そんな木佐は、パクパクとリズミカルに箸が進んでいて、見てて気持ちが良かった。


俺自身も大学時代に浮気をされる経験をした。その時は、何もかもも絶望して友人に迷惑をかけまくった事を今でも申し訳ないと思ってる。


愛した人からの裏切りは、自分を否定された感覚があって、立ち直るのに時間が掛かった。俺は、周りに迷惑をかけてウジウジとしていたが、木佐は、生涯を共にすると決めた相手の裏切りに、冷静にケジメをつけてきた所をカッコイイと思った。



「あの...」


ご飯を食べ始めてから主任は私をじっと見ていた。最初は、気にしないで食べてたが余りにもずっと見られると無視できなくなって尋ねた。


「いや、何でもないよ。ヤンニョムチキンを美味しそうに食うなと思って」


何でもないで、あんなに見るかなと疑問に思うが流した。


「ヤンニョムチキン??」


私が食べてる美味しい鶏料理はヤンニョムチキンの名前らしい。


「奏汰くん。よく知ってるね。今日は韓国風の定食でメインは、ヤンニョムチキンにしてみたの」


にこやかに説明をするマキさん。


(この美味しいの韓国料理なんだ。知らなかったな)


「ヤンニャミュチキン美味しいです」


........。


異国という言葉は難しいと実感する。


ニヤニヤとからかいの顔になってる主任。


「美味しいですよ。このヤンニャミュチキン」


「ヤンニャミュチキンを気に入ってくれて嬉しいわ」


マキさんは茶目っ気のある人だと、たった今の行為で知った。


2人にからかわれて恥ずかしさから拗ねたくなる。けど、子供っぽい反応をして更に、揶揄かわれそうだから拗ねない。


気にしてないって顔を取り繕ってたけど、主任には、バレバレで違う話題になった。


主任と食事しに来た本題を...。










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