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終わり  作者: 千夜 すう
第一章
25/30

女の戦い

潤の浮気相手との対面の日が遂にやってきた。


面と向かって会うのが初めてだったから、いつも以上に気を張ってスキンケアと化粧を施した。


眉毛は、しっかりと整えて程よい存在感を出す程度にふんわりと仕上げる。


アイメイクは、しっとりとした感触の粉でピンクベージュの色味を全体的にアイホールに塗り、ピンクグレーのような色味を眼球に沿って薄く引いて(ぼか)すと彫りが深く見える。


薄く赤系の薄い茶色でアイラインを目に沿って引き、目尻は程よく守ってあげたくなるようなタレ目気味に引く。

先程のアイライナーよりも少し濃いめで、まつ毛を埋めるようにインラインを引くとさり気なく目がぱっちりとする。


アイメイクの最後に目頭の所をくの字を意識するように、上品に見える細かいピンク系のパールをハイライトとして引く。


頬は、血色感を出す程度に抑えて濃く塗らないようにする。


口紅は、デート用の桃花色の薄いピンクをリップブラシで丁寧に塗る。


清楚系を目指した愛されメイクの完成。


髪は、緩く巻いてハーフアップ。髪飾りは細めのアンティークっぽいデザインを使う。


清楚で上品さを演出する膝下のグレーのワンピース。

フォーマルの場でも着れる便利なこのワンピースは私の戦闘服だ。


今日は、顔のコンディションが最高で気分が上がる。


相手の容姿はそれなりに良い方だろう。

だからこそ、今日は女として負けたと思われたくない。


今日も形から入る。


両親はこの前と同じテイストでフォーマルな格好だった。


でも、母も私と同様の気合いの入り方をしてた。

同じ、女同士。

女の無言の戦いがあると分かっている。



前回と同じく、早めに着いて冷静な対応をと注意を受ける。


前回は冷静に成りきれずに爆発してしまった。

今回こそは冷静な対応をしようと気合いを入れる。



浮気相手とそのご両親らしき人と宮村潤がやってきた。


相手は私を見て驚いてた。


宮村潤に#(ないがし)ろにされてるから、どんな見窄(みすぼ)らしい女だと思われていたのだろう。


席に座らせ話をする。


私と宮村潤が婚約同士である事。


それを知りながらも宮村潤と付き合った事に対しての慰謝料を請求する事に反論をした


本当ならば、彼女が居ると知って付き合い、婚約をしたと知っても付き合い続けてたのが正解だ。


「私は婚約者居たと知りませんでした...。9年間も付き合ってたんです。そろそろ、結婚をしようかって話し合いもしてて」


涙目で訴えてた。


(私達が証拠を持ってる事を潤から聞いてなかったの?)


「娘も被害者なので慰謝料は...」


娘が可哀想だとこちらも涙目で訴え母親。


「いえ、婚約してると知っていました。その証拠が」


スッと、岡崎さんは優雅に音声を流す。


「これは....」


「みき」


鬼の形相で娘を問い詰める父親。


「確かに貴方は子供を産めないけど....」


みきは、違う...違うとだけ言ってる。


「これは何かの間違いでは...」


母親は岡崎さんに綴るように聞いてた。


「間違いではありません。疑うようでしたら声紋で調べましょう。」


「声紋......ねぇ、違うんでしょ?調べよう?そしたら疑いが晴れる!」


母親にそう言われても、やりたいと直ぐに言えないみき。


何故なら、その音声は本物で身に覚えがあるのだろう。


「ねえ 、みき」


「なんで、黙っている?まさか、本当なのか?」


父親は低く怒りを抑えるような声色で娘に尋ねてた。


「それは....」


それでも、何も言えない娘に確信したのであろう父親は、娘に平手打ちをした。


「あなた」


悲鳴の様な声で父親を止める母親。


「お前はなんて事をしたんだ」


それでも止まらない


「落ち着いてください」


それでも、ハッキリと聞こえる岡崎さんのおかげで止んだ。


「そういうのは家でしてください。今は慰謝料についての話し合いです」


少し落ち着いた父親は娘を睨んだ後、私達に深く頭を下げた。


「娘がとんでもない事をしました。申し訳ございません。慰謝料は払います」



「パパ」


「黙れ」


「金額は、こちらでございます」



「何よ...。こんなのぼったくりじゃない?」


みきは、唖然として値段に文句を言った。



「そうよ。娘にそんな金ありません」



岡崎さんは結婚詐欺の方の話もした。


潤と一緒で裁判で訴えない。被害届も出さないその為の金額も含まれてると話した。



父親は、それに納得して頂けたみたいで娘に書類にサインするように促した。


「こんなに払えない」


「お前が犯した罪だ。払えないではなくて払うんだよ」


「そんな...。」


綺麗に涙を流して、こんなに請求されるなんて可哀想を演出してるように見える。


「俺の所でも、かなりの額を請求してるのに...。」


「潤も大金を請求されてるの??」


「これよりも請求されてる」


それを聞いたみきは、私の方を鋭く睨みつける。


「酷い。この金額でも大金だと思うのに、これよりも大金を潤にも請求してるんでしょ?最低よ」


みきの父親は、娘の言葉に腹が立ってもう1発平手打ちをしようとしたら、みきの母親に手を押えられた。


「止めるな」


「止めます」


綴るように体全体で必死に止めてる。


「なんで、私を殴ろうとするの」

怯えながら、潤の後ろに隠れた。


「お義父さん、止めてください」


潤の姿は、さながらプリンセスを守るヒーローのようだった。


「俺は、お前のお義父さんじゃない。お前にだけは、言われたくないセリフだ」


その言葉に、何故かショックを受けたような顔をしていた。


「みきに請求された金額を見れば分かる。ぼったくりでもなんでもない。正当な金額だ。とっとと、サインしろ」


「さっきから、お義父さ...みきの父親として、なんでみきの味方をしないんですか?」


宮村潤が、お義父さんと言いかけて本人に睨まれたから言い直していた。


「娘が悪い事をしたからに決まってるだろ。それを正すのは親の務めだ。ずっと、思っていたが部外者が何でここに居るんだ?」


「部外者では」


「部外者だろう?みきに駄々を捏ねられたから折れて連れてきたが...役に立たないなら黙ってろ。みきは、そこで泣いてないで、さっさと書け。時間の無駄だ」


「こんなに払えない」


「分割払いでも良いと木佐さんと話し合ってます」


岡崎さんは、分割払いの場合のプランを説明をしようと資料を出そうとしたら、みきの父親に手で制された。


「私達が肩代わりしますので、一括払いにします」



有難い事に一括払いで払ってくれる。


「パパが払ってくれるのね」


顔が明るくなって、必要な書類にサインをしてくれた。


(払ってくれるのは嬉しいけど、本人に何のペナルティがないからモヤモヤとする)


静かに低い声で怒りを抑えてない状態で父親は言う



「みきもママも、一言も木佐さんに対しての謝罪をしてないのな」


「潤を愛してしまって...取ってしまってごめんなさい」


謝罪とは程遠い、バカにしたような姿の娘に再び父親が怒ろうとしていた。


「それが」


「良いんです」


私は、父親を言葉で制した。

私の雰囲気で察した父親は、好きに言ってくださいと自分の怒りを抑えた。


私は岡崎さんを見ると、どうぞと言ってるような雰囲気だったので私は言いたいと思ってた事を言う。


私は、頭を下げながら言った。


「みきさん、ごめんなさい」


私の言動に周りは驚いていた。


私の父が、止めようとして私の母に笑顔で止められていた。


思いっきりの哀れみと困った顔をしながら言った。



「みきさんも悪い事をしたんです。それに関して、慰謝料を請求する事に後悔はしないんですけど、女として......ねぇ」


「なによ」


「貴方達の会話を聞いた時は、貴方が本命だと思ってたけど、違ったみたいで...浮気してた最低男だけど私の事を愛してたみたいね」


「見え張っちゃって、そんな事ないわよ」


まだ、余裕を崩さないその様子。


「まだ、騙されてるのね」


「はぁ?騙してねぇよ」


「騙してるって自覚がないの?...。」


困ったわ...どうしようと演出しながら黙っていると、みきの母親が聞いてきた。


「前の話し合いの時に、みきさんの事を結婚するまでの遊びだと言っておりました」


「そんな事、言ってない」


潤は、嘘をついていたが私の母は逃がさないように話した。


「潤君、嘘はイケナイよ。確かに、私たちにそう言って婚約を破棄しないように頼んでたじゃない」


「婚約破棄をすると話を進めていたのに、未練タラタラで本当に婚約を破棄していいのか?、蒸し返したりとする姿に、私の事を愛してたんだと信じました」


「さいってぇ」


「ち、違うんだ」


みきに言い訳をしようもしてる所に父親が怒りを抑えながら言った。


「その事は、後で話そうか」


「違うんです」


宮村潤は、情けない姿でみきやその家族に言い訳を始める。



私は話したい事が終わったから岡崎さんの方を見た。


「私達の用件は済んだので、お引取りを願います」


「娘が本当に申し訳ありませんでした」


父親が深々と頭を下げて謝って、騒いでる面々を抑えながら、その場を去った。



潤は、私の事を愛してないのは知ってる。

悲しい事に、出産マシーンとATMとしか見てない。


けど、私を騙してた罪は重いのよ?

お金を渡して解決なんて生ぬるいと思った。

だから、潤に対しての不信感を抱かせた。

そんなに簡単に本命と幸せになるなんて許さない。


2人に仕返しが出来て、色々とスッキリとした。




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[良い点] 更新お疲れです! [一言] ☆ 完 全 勝 利 !☆ 今回はスカッとしましたわーw 戦う前から勝ってるって感じ! あげくに不信の芽を相手に植え付けて 仲間割れを誘うとは中々の策士振りでし…
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