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終わり  作者: 千夜 すう
第一章
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社会人としての責任

婚約者の浮気を知った時は、混乱をして、何も考えれなかった。


これが所謂、頭が真っ白な状態だった。



1人暮らしをしている家に帰り、お風呂に入って、すぐに寝た。


あの光景を見る前は、お腹を空かしていたのに、いつの間にか食欲が失せていた。


自分が思ってるより気を張っていたのだろうかな。


夢を一切、見なかった。


いつもの時間に目が覚めて会社に行く支度をする。


今日は木曜日だ。


今日と明日、あと二日間は、まだ会社に行って仕事をしなければならない。


考えるのも悲しむのも後だ。


今は社会人としての責任を全うしよう。


昨日のことは忘れて、仕事に集中しなければと自分を鼓舞し、切り替える。


「おはようございます」


いつもと変わらない挨拶をする


「おはよう。早速で悪いんだけど、木佐さん。この前、頼んでいた資料は?」


「その資料ならこちらに」


私に話しかけるのは、実年齢より若く見える童顔の主任。


私が主任に渡した資料は【テーブルにかけられる便利傘の年代、性別の売り上げとアンケートを纏めたもの】


私の仕事は、ちょっとした便利グッズを編み出して、商品化に向けてプレゼンをする。


その後の売れ筋やアンケートを元に、リニューアルしたり、更なる新商品のアイデアを考えるのを繰り返しである。


私が勤めさせて頂いている会社は中小企業で、あるようでなかった便利グッズを開発して販売を行っている。


消費者から意見を聞き、しっかりと反映させて、より良いものを販売する事から人気がある。


お陰様で黒字でございます。


少し変わった販売方法で、店舗で買う時に必ず会員証提示の会員制で、アプリやウェブサイトで登録して頂き、購入したものは必ず、使用感のアンケートや要望などを専用のフォームで送らなければならない。


とても面倒くさいルールだと感じると思うが、より良い物を開発する為に必要な事だった。


消費者側も意見が反映されるからキチンと答えてもらっている。


購入毎の報告以外にも、あったらいいなって思いついた物を専用のフォームで送る事も出来る。


閑話休題



「この傘は女性の方が売れ行きがいいね」


「はい。主婦層に大変人気がありました。アンケートでは派手過ぎない、女性らしい柄が欲しいと書かれておりました。」


「女性目線では、木佐はどう思う?」


「元々、女性受けを狙った訳ではないので、スタイリッシュなデザインになってますよね。私個人の意見ですけど、花柄やレースなどあったら可愛いなと思います。売れ筋の良い、主婦層を狙うならば可愛い過ぎない上品な物が良いのではないかと思います。男性目線で、主任はどう思いますか?」


お互いに書類から目を離さずに意見を交わす


主任はうーんと唸りながら


「想像よりかは男性から買って貰えてないよね」


「はい。元々のコンセプトは飲食店での営業の打ち合わせなどで、邪魔にならないコンパクトさとテーブルにかけられる。便利さを狙ったのですが...」


普通の傘はテーブルに掛けようとしても、良く落としたりしてしまう。


折り畳み傘だと仕舞うのが面倒くさいのではと思い、相手にも不快に思われない様にするのを考えて、邪魔にならない用コンパクトにもした。


もちろん、本来の実用でコンパクトになっても成人男性の方でも雨に濡れないようになっている。





「デザインも安っぽさが無くて、スタイリッシュなシンプルさでいいと思うんだ。価格も安くはないけども、機能性を考えると高くも無い。購入して頂いた男性のアンケートでも、特には不満がある訳でもない」


私はアンケートを睨みつけるように見る。


そう。特に不満があるとも、こうして欲しいという要望がないのだ。


より一層。何故、目論見よりも少ないのかと眉間に皺を寄せながら考える。


「うーん。でも、全く売れてない訳でもないし、女性受けの良いデザインを考えよう」


「分かりました。デザインの人と考えてみます」








忙しかったお陰で余計な事を考えずに仕事に集中できた。


だけど、仕事が終わるとダメだ。


熱めのお湯で溶かされた柑橘系の匂いが強く香る入浴剤。


足を少し、ばたつかせた。



子供の様な仕草をして、意味もなく無音をさける。


昨日の光景が頭の中で、まるで映画のワンシーンのように、何度も繰り返させる。


打ち消す様に足に水を打ち付けて鳴らす。


数分で疲れてしまった足を休ませる。


少しずつ冷静でいようと思考を巡らす。考えなきゃいけない事、やらなければならない事が沢山ある。


まず1つはこのまま結婚しない。


未来を約束した人が居るにも関わらず。平気で、他の人と浮気する彼の事を信じられない。


私との結婚までの火遊びだろうか...。


結婚をしても、そのまま、浮気相手と付き合い続けるかもしれない。


別れても、また別の人と浮気する可能性もある。


私が今回の浮気を見逃して、予定通りに結婚してもずっと疑い続ける。


それは裏切りを知ってしまったからだ。


信頼することは無理だろう。


信頼関係がない中での結婚生活は私の中ではありえない。


今後、お互いの両親や友人、会社にも婚約破棄を報告報告しなければいけない。


式場諸々にも中止するのを連絡しないといけない。


幸いな事に寿退社する予定が無かった事で収入源の心配が無かった。


今後の生活をしていける事に安心する。


寿退社の選択を取らなかった事に心の底から良かったと思う。



恋人同士の関係と違って、婚約関係の場合は浮気は慰謝料が発生される。


私は2人に請求する事は出来るけど、揉めるのは目に見えて明らかだった。


婚約関係を早くに終わらせたかった。


私たちの関係は終わったのだから...。




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