嘘つき2人
仕事終わった。
終わってしまった...。
仕事が欲しいです。
無給でいいです。
いや、むしろ払わせてください!
仕事をください。
心の中で叫びながらも、泣く泣くと帰り支度の準備をして、潤との待ち合わせ場所に行く
「優香、こっち」
私を見つけて手を振る潤。
笑顔で近づいた。
泣きたくなるし、ぶん殴りたいって気持ちもあるけど、いつもと変わらない私を演じなきゃいけない。
怒りや恨みをぶっ放したいが我慢する。
「この間はごめんね」
「体調崩したんならしょうがないよ。大丈夫だった?」
「寝てたら回復したよ」
「それは良かった。今日は呑む?」
「明日は仕事がまだあるから呑まない」
「そうだよな。お前の部屋で美味しい手料理を食べたい」
えー。急だな。朝の時点から言って欲しかった。
こんなに人の都合を考えない人だったっけ?
「材料ないよ。チャーハンぐらいしか出来ないよ」
「いいよ。それで」
なんか、偉そうに聞こえるのも勘違いかな。
浮気をしていた事を知ってから、今まで気にならなかった事を気に触るようになった。
私の部屋に着き、料理をする。
潤は手伝う事もなく、テレビをつけて観るのはいつもの事だった。
前はこういう状況も楽しかったんだけどな...。
今はただただ、疲れる。
1人でゆっくりしたかったなと思う気持ちしかない。
「出来たよ」
レタスチャーハンともやしの中華スープ
「いただきます」
食べると我ながらに普通に美味しいと自画自賛する。
食べてる時の会話は、潤がお喋り好きで会社の愚痴をずっと言ってた。
内心、つまんないし興味ないと思っても、ちゃんと聞いてますよって感じに適当に相槌をする。
「今日、泊まっていいか?」
「明日、出張でしょ?」
「駅のロッカーに着替え諸々の入ったバックを預けてきた。」
「それでも、今日はちょっと....」
「だめか?実は仕事が忙しくてさ。これから、時間が作れないから優香充電したかった」
本当に仕事かなと笑いたくなる。
何もかもが信じられない。
「ごめんね。実は今日から女の子の日が始まったから出来ないんだ」
嘘だが、潤とやりたくない。
「ごめんね。無理させちゃって....今日は帰るよ」
「本当にごめんね」
少し、気まずい空気...
出来ないと分かった瞬間に帰るとは、私と会ったのは行為をする為だけだったのかと呆れてしまった。
「テレビつけていい?」
沈黙に耐えかねたのだろう。
私の返事を聞くまでもなく行動に移していた。
その時、つけっぱなしのテレビから『 浮気特集』と流れた。
聞こえてるか聞こえてないのか、いつもと変わらない様子の潤。
私は少し、揺さぶってみたくなった。
「浮気か...」
「どうしたの急に?」
「ほら、テレビ」
流れてる浮気特集を気づかせる。
「珍しいね。浮気を気にするの」
「今日、会社の同僚が恋人に浮気されたって耳にしたから気になっちゃってね」
「てっきり、優香が浮気したのかと思った」
「しないわよ」
貴方と違って
「だよな」
「でも、もし私が浮気したら、潤はどうするの?」
「そんなの許せねぇかな。」
「普通そうよね」
浮気は裏切りだもの。
貴方と浮気相手2人の裏切りは私だって許さないわよ。
「お前は?」
少し、真剣な声で聞かれた
「私も許せないかな」
「そっか」
「うん。潤。愛してるわ」
「俺も愛してる」
私は愛していた。
今はお互いに嘘つきだね。
その後、ご飯を食べ終わった潤はそのまま帰り、私は岡崎さんには潤と何を会話したのか、何があったのかを一報告した。
その後、親友の愛実に電話をかける。数回コール音が鳴った
「もしもし優香?」
「うん。今、電話平気?」
「今ね。ぼーっとテレビを眺めてただけだから全然平気」
「今さっきまで潤と会ってたんだ」
「えー」
朝の誘いから浮気特集の会話などを全部、話した
「うわぁ。宮村って、やっぱり最低」
「人がやって許せない事を平気な顔でやる。あいつがムカつく」
「自分がやられて嫌な事は人にはやってはいけませんって基本なのに、幼稚園でも出直して来て欲しいわ」
「愛実。幼稚園の子でも分かるから失礼よ」
「そうね。幼稚園の子達に謝らなきゃ」
「私、浮気の話をした時に潤に罪悪感を持って欲しかった。でも、いつもと変わらないんだよ。私が浮気のこと知らなかったら、気づかない位に普通の反応だった」
「優香....」
「明日、みんなに会うのが少し怖い。だって、知ってる人が居たら....嘘つかれてたら私は分かる自信もない。」
「私も嘘つかれたら分からないけど....でも、私は優香の味方だから!何も役に立てないのは申し訳ないけど」
耳がキーンとなるくらいに愛実は叫んでいた
「ありがとう。役に立てない事はないよ。今、私の話を聞いてくれて、味方だと言ってくれるだけで充分だよ」
「正直に私も怖いけど、友達が浮気されてるのを知ってるのに、黙ってるなんて許せない」
「うん」
その後、延々と浮気最低。潤最低とボロクソにガールズトークをした
電話を切り、岡崎さんからの返信を見た。ヒヤヒヤしましたと表示されていた。
お風呂に入って寝巻きに着替えて、布団に入る。
目を瞑る。
明日....