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54.助けてください本当に

翌日バンに連れられて行ったのは、俺たちが住むハイホルン王国とは海で隔たれたとある小さな島であった。もちろんそんなところまで馬車で行けるわけもなく、ドラゴンの背に乗って向かうことになったのだが思いのほか遠くて驚いた。

というか俺がハイホルン王国の外に出ることが滅多にないからというのが大きいだろう。


「バンはこうしていつも他の国に行ったりしてるよね?」


少し暇を持て余し始めた俺は前に座ってドラゴンを操るエルフに向かって話を振ってみることにした。というのもあの家では特に女性陣にお互い振り回されている影響でこうして1対1で話すことが少ないからである。


ヴェルやシズクはよく俺にちょっかいをかけにわざわざ俺の部屋に出向いてくるがそれ以外のエルフはわざわざ訪ねてこないし、それほど大した用事があるわけでもないから当然だろう。といっても俺がそんな部屋にこもるなんてことは一日のごくわずかの時間だけど。


「そうですね、基本的に俺は王女様がたが外国に出かけるときの護衛をしていますから。なんとなくですけど王国内の事はアイナが、外国の時は俺が護衛している感じですね。アイナとは違って俺は頼まれた時だけですけど」

「確かにアイナがずっとついていくのも大変だろうし、外にいる間に何かあったらいろいろやばいもんね。ってことは今日はそれ関係? あれ、なんで俺まで?」


俺が首をかしげるとバンは少し声を弾ませて軽く手を振った。


「いえ、今日は全く関係ないです。いや少しは関係ありますけどとりあえず王家の人たちは関係ないので安心してください」

「なるほどね。・・・面倒事じゃないよね? いやな予感がするんだけど」

「はい、安心してください。俺はアイナと違ってトラブルメーカーではなりませんので」

「いや君のその笑顔は何かあるときの顔だよ。俺は知ってるんだからな実はあの6人のエルフの中で君が一番意地悪だってこと。このドS王子め」


にっこり爽やかな笑顔で笑って見せたバンに向かって悪態をつく。

そんな俺をじっと見た後また顔をほころばせてバンは前を向きなおした。


「ふふっ、くくっ。いえ、本当に大丈夫です」

「・・・・笑ってるよね? 今笑ったよね!? 本当に大丈夫? 嫌な予感しかしないんだけど!?」

「あ、もう着きますね。ここからは少し危ないのでしっかりつかまっていてください」

「おい話そらす・・・、どわぁあああ!!」

「だから言ったじゃないですか。・・・ちょっときついかもしれませんが我慢してくださいね」


そう言ってバンが少し魔法の詠唱をすると手から縄のようなものが湧き出てきて俺とバンを優しく一纏めに結んだ。

おかげさまで俺は今バンの背中に張り付いてしまっている。

・・・なんだこの構図。


何が悲しくて俺は男のエルフに抱き着いていなけりゃならんのだ。

いや、バンはとんでもなくイケメンだしいい匂いはするしで嫌じゃないんだけどね、その・・・なんだこの構図(2回目)。


「このドラゴンはまだ未熟でいろいろ危なっかしいところが多いのでこうさせてもらいました。すみませんが少しだけ我慢してください」

「・・・・・・・うん」


こうして俺たちは海に浮かぶ島、『ジランド王国』に到着するのであった。


 *******


「うん、ありがとう。また帰るときは呼ぶからよろしくね」


バンが俺たちを乗せてきてくれたドラゴンの頭をなで優しい言葉をかけるとそのドラゴンは気持ちよさそうな声を出して空に羽ばたいていった。

去り際に俺を威嚇してきたのは偶々だと信じよう。


あとなんとなくだけどあのドラゴンは雌な気がする。

多分そうだ。じゃないと俺をあそこまで威嚇しないだろう。

怖くて腰が抜けかけたのは俺だけの秘密にしよう。

あれなんかデジャブだなこの感覚。


「さてじゃあ行きましょうか」

「ちょっと待ってよ、俺どこに行くのかまだ知らされてないんだけど」

「あぁそうでしたね。今からはここの国王の城に行きます」


俺がドラゴンに怯えていると、バンはあたかもそこら辺の店に行くかのように目的地を告げたがあまりに行き先がぶっ飛んでいる。

ダニングの時もそうだったが俺は男連中と外に出ると王城にぶち込まれるようになっているのだろうか。


「なんで!? え、ちょ、観光とかじゃないの!? 『主にはいつもお世話になっているから俺のお気に入りの国を案内します』って言ってたじゃないか!!」

「もちろんそのつもりですよ。それにもまず国王には挨拶しておかないといろいろと面倒ですからね」

「・・・そういうこと? なーんか裏がある気がしてならないんだけど」

「確かにこのまま黙っていてもいいことはなさそうですね。いえ簡単なことです。王城にいる少しの間だけ俺の彼氏役をしてほしいのです」


「なるほどね、彼氏役を・・・」


待て、今こいつなんて言った?

状況を整理している頭の中で新たな爆弾が生まれた気がしたが気のせいだろう。

今彼氏役って言わなかったかさすがに聞き間違えだy・・・。


「はい、彼氏役です」

聞き間違いじゃなかった。

ちょっと待て、本当に待って。いろいろと思考が追い付かない。

頼むから聞き間違いであってほしかった。


「ゑ?」

「言葉通りです」

「その、俺が彼氏役? なんで? しかも彼氏? 彼女じゃなくて」

「実はこの島の王女様に少し前から求婚されているのです。最初の方はやんわり断っていたのですが段々とエスカレートしてきまして。なら相手が男だといえば諦めるかと思いまして先日謁見した際に彼氏を連れてくると伝えてたのです。彼女、相当嫉妬深くて彼女がいると言ったら恐らく強硬手段に出るに違いないと思いまして。ならば男であれば文句はないだろうと」

「そして俺がその役を?」

「お願いします。少しの間だけお付き合いください」


なんだかよくわからないがバンにもメンツというものがあるのだろう。

もちろん俺の答えは・・・。


「NOだ。これ以上変なことに巻き込まれたくないし王女様に嫌われるのはクレアでお腹いっぱいだ。ただでさえクレアには嫌われているのにこれ以上変な人間関係を作りたくないんだ。というかダニングに頼めばよかったんじゃないか。同じエルフだし」


「ダニングはこの島でも有名なのでいろいろとややこしくなるんです。ほかのエルフたちもしかりですし、その・・・、主は今の時代全くの無名の一国民なのでいろいろと都合がいいんです。それに同じ釜の飯を食う仲ですし綻びは生まれにくいでしょうから」

「嫌だ!! 俺は帰る、帰るぞ!! さっきのドラゴン呼んでくれぇ!!」


「無理です。あともし協力していただけないのならあのことバラしますよ」

「あのこと? どのことをいってるのさ? バンの作ってる秘伝のソースを熟成中にこぼして水でかさ増ししたこと? アイナの隠してるお菓子を食べたこと? ルリの冒険者カードにお茶をこぼした・・・」



さっさと帰ろうと踵を返した俺だったが、バンのそのきれいな碧色の瞳に見つめられ何か自分がすべて悪いような気がしてきてしまった。まるで女神の前にひざまずいているかのように。

そして俺がこれまでしでかしてきた悪事の数々が走馬灯のように駆け巡り思いつくまますべて口から飛び出てしまった。

完全に無意識だったしまさかこいつ魔法を使ったのか?


「あ、もういいです。というかどんだけやらかしてるんですかあの家で」

「はっ!? ま、まさかバン! 君は俺をだましたのか!? というかなんかスルスル言葉が口からあふれたぞ!? なんか魔法を使ったのか!?」

「少しだけ、ですけどね。ただまさかここまでやらかしているとはびっくりです。それにそこまで強い魔法じゃないはずなんですけど、主の魔力では効果抜群だったみたいですね。一応主くらいの年齢だったら抵抗できるはずなんですけど、無理だったようですね」

「い、いやだぁあああああ!!!」


この場から逃げ出そうとバンに背を向け走り出そうとしたがすぐにニコニコ笑顔のバンに腕をつかまれて引き戻されてしまう。

そしてこのことは今後の俺の教訓になることになった。

薄っぺらい笑顔を張り付けていつもより強引なバンは絶対何か企んでいると。


「ダーニング!!!!!! ダニングゥ! 助けてーーーーー!!!!!」

「いませんよ。よし、行きましょうか」


ひ弱な俺はバンの力に逆らえるわけもなく、俺は無様にもそのままバンに引きずられる形でそのまま王城へと引きずられていくのであった。


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