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47.料理人の諦念

ある程度自分なりに改訂版の方針がたったので更新を再開させていただきます。

なるべくこんがらがらないように努めさせていただきますが何か不明瞭な点があったときは指摘していただければ幸いです。


追伸:ごめんなさいこの話の前にもう一話ありました。なので新しく「46話 冒険者たちの昼下がり②」が入りこの話は47話となります。本当に申し訳ありませんでした。

 ライセンスを無事取得できた俺はあの後依頼を終えたルリに拾ってもらい家に帰った。

 冒険者ギルドに戻ってきたルリは変な鳥みたいな魔物を収納バッグから取り出していたけどあれはどれくらいの価値になるんだろうか。過去の記憶にもない魔物だから今度詳しく聞いてみたいところである。


 そして今は全員がそろった食卓で夕食を食べているところだ。


「なるほど、今日は冒険者の登録に行っていたのですね」


「うん、ルリと一緒に。まぁでも当分は依頼を受けないけどね。職員さんにも能力がなさすぎだって言われちゃったし、バンやアイナにみっちり指導してもらってからにするよ」


「じゃあなんで今ライセンスを取ったんですか?」


「冒険者ライセンスがあれば私の依頼についてくることができるからだよ!! 資格がないと入れない場所とかあるし」


 パンをむしりながら質問してきたアイナにルリが答える。

 そう、俺は今回あくまでルリと一緒に行動できるようにするためにライセンスを取った。これがあればパーティーを組むという形でルリの活躍の様子を見ることができるからだ。


 単純にSランク冒険者の活躍をこの目で見てみたい。

 そういう思いからライセンスを取ったといっても過言ではない。

 まぁ、将来独り身になったときにできることを増やしておくという思いもあったが今日の検査で打ち砕かれた感は否めないけど。

 後は今後の俺の頑張り次第だな。はっきり言って望みも希望もないけど。


「なるほど。じゃあこれからはたっぷりしごいてあげますよ、主」

「手加減はしてくれよ・・・? 本当に今の俺はひどいんだから」

「わかってますって」


「それに俺なんかの話よりもみんなの話が聞きたいな。今日何があったのかみんな話してよ。シズクとか今日はどうだったんだい?」


 俺はスープを口に流し込んでから周りを見渡した。

 俺なんかよりもこの6人のエルフのほうが濃い日常を送っているに違いないからな。


「そうだな、今日はご主人と朝から晩までイチャイチャ・・・」


 人選ミス。

 やっべぇ初手にシズクを置くんじゃなかった、何やってるんだ俺は。


「おいシズク、開口一番から嘘をつくんじゃない。さっきまで今日俺が冒険者ギルドに言った話してただろ」


「そうだよ、シズクお姉ちゃん!! 今日お兄ちゃんとイチャイチャしたのは私なんだから!!」

「ほう? それは面白そうな話ですね。是非聞かせてもらいましょうか」


 そして話はどんどん嫌なほうへ嫌なほうへ流れていく。

 おいルリ、ヴェルとアイナが怖い顔してるの気付いてるか?

 なぁまじで頼むぞ?


「ちょっ、へ、変なこと言うなよルリ?」

「今日はお兄ちゃんとずーーっと抱き合ってたよ!! それにその後も・・・ねっ、お兄ちゃん」


 急に頬を赤らめるルリ。

 やりやがったこいつ。

 いや、その後とかないよな?

 別に何もやってないよな!?


「フィセル様・・・、ま、まさかルリと・・・」

「アイナ、断じて違うぞ何もやってない。なんでこの家の女性陣は嘘つきが多いんだ!? ルリもシズクも嘘つくんじゃないよ!!」


「なるほど。じゃあ私がこの後嘘か本当か確かめてやろう。あとで私の部屋に来てくれ」

「いえ、私が確認して差し上げます」

「いやお前は無理だろヴェル。強がるなって」

「ほう? この私に喧嘩を売っているのですかシズク?」

「フィ、フィセル様本当はどうなんですか!?」

「だから話を聞いてくれ!!!!?」


 思わず机をたたく。


 本当ならドンッて叩いて場を静まらせたかったのだが俺の力じゃ全然音は響かないわ口論は止まらないわ、手がめちゃめちゃ痛いわで散々な結果に終わったが。


「ダニング、今日のご飯もおいしいよ」

「ありがとうバン。今日は自信作なんだ」


 そして端の方では男性陣がのほほんと夕餉を楽しんでいる。


「いや君たちも俺を助けてよ!? なに男性陣だけでほのぼのしてるんだよ!!!」


「自分の過ちを認めないものを擁護するつもりはない」

「だからしてないって!!!!」

「別に俺はいいと思いますけどね」

「だから!!!!」


「フィセル様、まだこちらの話は終わっていませんよ」

「ぐはぁ!!」


 席を立っていた俺の首根っこをヴェルがつかんで座らせる。

 こうしてこの日の夕食もごく普通に騒がしく過ぎ去っていった。


 *********



 騒がしかった夜も更け、朝を迎えた俺はいつも通りバンとアイナに剣の指導を受けて朝食を食べ終えた。

 いつもと違う点としては朝からシズクがいるくらいか。


「ご馳走様。ふぅ、おいしかった。というか今日はシズク朝からいるんだね」


 俺は食べ終えた食器を手に取り立ち上がったついでにシズクに尋ねてみる。

 彼女はどこから仕入れたのか、新聞を読みながらコーヒーを飲んでいた。


「ん? まぁな。たまにはゆっくりするのも大事だし」


「そうだね。じゃあ俺も今日はゆっくりしようかな」

「それはいつもだろ。ここ最近少しずついろいろな事をし始めてるみたいだけど」


「ぐっ、ま、まぁね。俺だっていつまでもヒモ生活を送るつもりはないから」


「別にいいと思うけどな。ご主人からしてみればこの生活は隠居みてぇなもんだし。金は私たちがどんだけでも出してやるぞ」


 シズクはコーヒーをすすりながら視線を新聞紙から離すことなく話し続ける。

 一体このエルフたちはどれくらいの富を築いているのだろう・・・。


「だから君たちがそうやって俺を誘惑するからいけないの!! このまま行ったらダメ人間コースまっしぐらなんだよ!!」


「まぁ、何かやりたいこととかあったら協力するからまた言ってくれ。大体の事なら用意できると思うぞ」

「うん、わかったよ」


 俺はそんなシズクに背を向け食器を厨房へと持って行く。

 厨房にはいるとそこには何やら仕込みをしている様子のダニングの姿があった。

 何度も見てきたガタイの良いエルフの後ろ姿が。


「ダニングご馳走様、おいしかったよ。今は何をやってるの?」


「む? なんだあんたか。これは王城のやつらに頼まれた分の料理だ。パトラのやつがうるさいらしくてな、こうして俺が3日に一回料理を作って持ってってやってるんだ」


 ダニングはそう言ってやや大きめの容器を指さした。

 なるほどデリバリーみたいな感じでやってるのか。

 パトラ王女はダニングが取られたことに対して結構怒ってたからなぁ。


「え、知らなかったよ。そんなことしてたんだね」

「まぁこの前あんたと王城に行ったときに頼まれたことだからな。まだ始めてそんなに経っていない」


「でもそんだけダニングの料理を気に入ってくれてるんだろう? 凄いことじゃないか」

「まぁ、あいつの場合俺に懐いてたからな。料理目当てなのかはわからん」


 思い出されるのはこの前ダニングに飛びついてそれからべったりだった少女の姿。まるで俺とルリみたいな感じだ。


「た、確かにね。でもそんな王女様も気に入る料理を毎日食べられるなんて俺は幸せだな」


「それもこれも全ては200年前のあんたのおかげだ。今の俺があるのも」


「そうだね・・・、懐かしい」


「なんか昔を思い出すな。確か俺が最初に料理を作ったのはシズクが呪いに犯されていた時だったか」


 今でも思い出せるダニングとシズクを雇った日の夜。

 あの辺りは本当にきつかったな。

 確かシズクの呪いを解いた後気絶しちゃったんだっけか。

 あれもダニングの料理がなかったらあそこまで集中力が保てていなかったかもしれない。


「ダニングの料理はみんなを笑顔にするだけの力があるからね。みんながハッピーになれるよ。それこそまさに最高の料理人じゃないかい?」


 昔を思い出しながら俺は何の気もなしにそう呟いた。

 本当に、ただ単純に思ったことを。


 だが俺のこの言葉を聞いた途端、ダニングは動きを止めてしまった。


「・・・・・あんたは俺の料理がみんなを幸せにできると思うか?」


「え? ど、どういう事? なんか変なこと言った?」


「俺の料理は確かに人を幸せにできるかもしれない。だがな、それができるっていう事は逆もできるっていう事だ」


 再びダニングが動き始め、ストンッと包丁がまな板に当たる音が響く。

 だがさっきまでとは明らかに雰囲気が変わった。

 どういうことだ? 何が言いたい?


「・・・ダニングは自分の料理で誰かを不幸にしたことがあるってこと?」


「料理ってのはな、何も胃に入れてエネルギーとするだけが役割じゃないんだ」

「どういうこと? 質問の答えになってるそれ?」


「みんなを幸せにできる、か。俺が最高の料理人だったら実現できていたかもな。料理でこの世界を平和に・・・、とんだ夢物語だったな俺には無理だった。ましてや俺は多くの人を不幸にしたのかもしれない」


「ダニング!! どうしたんだよ!!!」


 食器を適当なところにおいて後ろからダニングの肩をつかむ。



 するとダニングは包丁をまな板の上においてこちらを振り返った。

 そんなダニングの両肩を再び両手でつかんだが、ダニングが動じることはなかった。


「いいか? 料理ってのは人の胃を満たして幸せにすることができる。それはその人の生きる動力となり、血となり肉となり骨となる。人によってはそれが生きがいとなり人生を豊かにしてくれる。・・・だが他にもいろいろな力があるんだよ」


「なんだよ、なんなんだよ!? 何が言いたいんだよ!?」

「それこそが俺の罪、一生背負うべき罪だ」


 そう言ったダニングの顔は言葉と違って安らかに微笑んでいた。

 やめろ、やめてくれ・・・。

 なんでそんな諦めた顔をしているんだよ・・・。


「あんたが目をそらし続けるのなら俺も共に目をそらし続ける。だが、あんたが俺を拒絶するのなら俺は甘んじて受け入れる」


 ダニングはそう言って俺の頭の上に手を下ろし軽く撫で、もう片方の手で肩に乗っている俺の手をほどいた。


「すまない、俺は最高の料理人になれなかった」


 その言葉と共に彼は厨房から立ち去って行く。


「ダニング・・・、なんでそんな顔をするんだよ」


 燃え盛る炎の音だけがパチパチと響いく厨房で、俺は一人で立ち尽くしていた。

また、皆様のおかげで書籍化させていただけることとなりました。

本当にありがとうございます。

これからもよろしくお願いいたします。

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