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25.斯くして少年はAと会う②

 気がついた時は保健室のベッドの上にいた。

 額の上の方に痛みが走ったので軽く触ってみるとポッコリはれ上がっているので多分たんこぶができているんだろう。


「・・・はぁ、アイナと会うチャンス逃したな。それにしても本当にエルフの姿って昔と変わらないんだな」


 と誰もいない保健室でぼやく。

 保健室の先生位いてもいいと思うのだが誰もいない。

 なんか悲しくなる。


「まあいいか、いつかまたチャンスはあるだろうし」


 終わったことをくよくよしてても仕方がない。そう思って保健室のベッドから立ち上がろうとした時であった。

 誰もいない保健室のドアがノックされた。


「は、はい?」

「失礼します。騎士団長のアイナです、中に入りますね」

「え!?」


 適当な返事をした俺に返ってきたのは紛れもなくアイナの声だった。

 アイナは俺の返事を待つことなく保健室の中に入ってくる。


「だ、大丈夫ですか? カーテン開けますね」


 アイナが保健室の中に入ってきた以上、俺とアイナを隔てているのは保健室のベッドに取り付けられているカーテンだけだ。

 空ければすぐに対面できる。

 だが何となく、アイナには今のかっこ悪い俺を見られたくなかった。


「ちょ、ちょっと待ってください! 開けないでください!」

「あ、お、お着換え中でした!? ごめんなさい無神経で」

「い、いえそういわけじゃ・・・」

「そうですか。今さっき怪我を負わせてしまった生徒がいるとの報告を聞いて回復薬を持ってきたんです。あ、あぁ怪しい薬じゃないですよ。私の知っている中でも一番すごい人が作った薬なので効果はばっちりです!」


 回復薬・・・。

 今彼女が持っているのは昔俺が開発した回復薬なのだろうか。

 今でも俺の薬を使ってくれているんだな・・・。


「そうですか、ありがとうございます。それじゃあそこに置いておいてください。あとで使います」

「・・・本当にごめんなさい。私の監督不届きでした」

「いえ、そんなことはありません。俺の実力不足です。・・・ただ彼はなんか八つ当たりしてきたようにも思えましたが」


「・・・・やっぱりそうですか。いえ、こっちの問題です。彼にはあとできつく言っておきますのでどうか今回の件はお許しください。本当に申し訳ありませんでした」


 部下の失態だし、彼女からしたら俺はガキなのにここまで謝れるアイナはすごいなと思う。

 だから団長にはなるべくしてなったのかもしれないな。


 ・・・まてよ、これはチャンスか?


「あの、申し訳ないと思っていらっしゃるのなら一つお願いを聞いてくれませんか?」

「はい、なんでしょう? できることならなんでも」


 なんでも、と聞いて一瞬最悪の妄想が浮かんだけど手で払う。

 ちがう、そういう事が言いたいんじゃない。


「この後、僕とも手合わせしてください」



 *******



 アイナが保健室を出たのを確認して、彼女が置いていったポーションを使う。

 流石俺が作っただけあって飲んだらすぐに痛みは取れてコブは引っ込んだ。

 時計を見ると時刻は16時過ぎくらい。

 多分他の生徒はもう下校したに違いない。


 保健室の先生とはちょうど入れ違いの形で保健室を後にした俺は、アイナが待つ運動場へと向かっていった。

 靴を履き替え、先ほどまで授業をしていた運動場に再び戻った俺は、この日初めてアイナと向き合った。



「来ましたね。って、どうしたのですかその顔? まさかそんなに重症だったのですか!?



 アイナがそういうのも無理はない。今の俺は顔に保健室の包帯をぐるぐる巻きにまいてある。

 回復薬のおかげで俺には一切の怪我はないが、保健室の先生に変な顔で見られたから後で怒られると思う。


「いや、何となく顔を見られたくなかったんです。怪我はあなたがくれた回復薬で治りましたので安心してください」

「そうですか、何か見られたくない理由があるということですね。それでは始めましょうか」


 アイナの声を合図にして打ち合いが始まる。

 もちろんだが俺が彼女に勝てるはずないし、アイナはアイナでめちゃくちゃ手を抜いて瞬殺しないようにしてくれている。

 俺の剣を丁寧に受け止めて、流す。

 素人の剣なのに彼女の手が加わればまるで芸術のようだ。



 だからこそ気づいてほしい。

 200年越しに経験する汚い俺の剣筋を。体運びを。

 そのために顔を隠した。

 変わってないことを知ってほしいから。


 ある程度打ち終わった後最終的に疲れ果てた俺が足を取られて盛大に転ぶ。

 やり切って満足げの俺とは打って変わって彼女の顔は非常に困惑していた。

 まあ俺の顔は包帯で隠れてるけど。


 転んで運動場で寝そべる俺を起き上がらせ、困惑したままの顔で彼女は俺に尋ねた。


「・・・・・・どうしてもその包帯を取ってもらうことは出来ませんか?」


 彼女は気付いてくれた。

 俺の剣筋と体さばきだけで。

 高鳴る心臓を頑張って抑えながら顔に巻き付けてある包帯に手をかけて無言でほどいていく。

 シュルシュルという布がほどける音とともに、俺の顔がどんどんあらわになっていった。


「あぁ! やっぱり、やっぱりそうだったのですね・・・・・・・」

「こんな形で知らせることになってなんかごめん。無事帰ってきたよ」

「フィセル様!!! ずっと会いたかったです!!!」


 せっかく起き上がったのにアイナに抱き着かれてまた転ぶ。

 それでも彼女は腕の力を弱めない。


「ずっと、ずっとお慕いし続けておりました、フィセル様・・・」

「泣くなよアイナ、せっかくのかわいい顔が台無しだよ」

「フィセル様こそ泣いていらっしゃいますよ」

「え、あれ? 本当だ。はは、止まらないや」


 沈んでいく太陽が照らす運動場の中央で、俺らは少しの間抱き合い続けた。



 ********


「フィセル様、他の者たちにはもう会いましたか?」


 まだ涙でぐしゃぐしゃの顔のままアイナが俺に尋ねる。

 俺もぐしゃぐしゃだが。


「いや、アイナが初めて。なんか皆偉くなっちゃったみたいで全然会えなかったんだ」

「そうですね・・・。まぁ、ダニングとルリなら割とすぐに会えると思います」

「ダニングは王城の料理長やってるみたいだね。この前新聞で見たよ」

「そうなんですよ! それにルリは今やSランク冒険者なんですから!!」


 Sランク冒険者。

 それは冒険者ならだれでも目指すゴールのようなものだ。

 200年前も冒険者ギルドというものはあったし、その時もSランクという者は存在していたからそのやばさが分かる。

 確か今では国に5人くらいしかいないんじゃなかったか?


「え、Sランク!? ていうかやっぱりルリは今冒険者なの!?」

「そうなんです。彼女がもしかしたら今一番強いかもしれませんね」

「ほへー、・・・なんか想像つかないな。俺の中では5歳くらいで止まってるや」


「ぜひ会いに行ってあげてください。多分彼女なら冒険者ギルドに行けば会えると思うので。あと・・・シズクさん、兄さんとヴェルさんは普通に過ごしてたら会えないと思うので私の方から連絡を入れておきますね」


「ありがとう。てかあの三人はそんなすごいことになってんのか・・・」

「いえ、今はそういうわけではないんですけど」

「今は?」

「あっ!  いえ・・・。ごめんなさい忘れてください。なのでフィセル様の通話式魔法具の番号を教えてくれませんか? 私からまた連絡しますので」


「わかった。じゃあよろしく頼むよ」


 少し引っかかったが、まあいいやと思い俺は通信式魔法具を取り出した。

 200年前とは打って変わってもうなんかできることが多すぎてよくわからないことになっている魔法具だ。

 俺は基本通話でしか使っていない。

 俺的には余計な機能が付きまくって寧ろ退化した気がするが・・・。


「ありがとうございます。あとダニングさんですが、彼はどこにいるかも私が把握しているので直接会いに行ってあげてください。そのほうが嬉しいと思うので」


「わかった、ありがとう。どこに行けば会える?」


「そうですね・・・、この店ならおそらくダニングさんに会えると思います。彼は決まった時間に自分の目で食材を見て買っていくそうなので。私もたまに待ち伏せて話しかけますし」


 そういってアイナがポケットからメモを取り出してペンを滑らせていく。


「おそらくもう今日の分は終わってしまっているので、明日の正午にこの場所に行ってみてください。多分会えると思います」

「わかったありがとう。また会えたら連絡するね」

「はい、待ってます! それでは私はこれで」

「うん。アイナに会えて本当にうれしかった!!」


「・・・私はおそらくフィセル様の10倍はうれしかったと思います。それと私としたことが言いそびれておりました。


 フィセル様、おかえりなさいませ」


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