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思念同調能力者奇譚

「お願いです!娘を探してくださいっ!」


両親揃って頭を下げられた




さあ困ったものだ





オレは思念同調能力者だ


物を触るとそこに込められた思念や過去の出来事が判るという能力を持っている人間だと思ってくれ


一般的に言うと、サイコメトリスト、だな





いや日本的にはサイトメトラー、か


言っておくが造語だぞ?





もちろん秘密にしている


大体が嘘つき呼ばわりされるのがオチだからな






もっとも中学や高校の親しい友達は知っている


あの頃は若かったんだ


それに子供だと不思議を能力を疑わないんだよな





もっともオレが言った訳ではない


なんとなく判ったというか、自分で秘密を暴いたというのが大きいのかもしれん



だからそんな秘密を共有している仲間からの依頼は受けることにしている


もちろん仲間間でのトラブル解決をするためだけに使うというのが前提だった




ところが今回、友達がとある夫婦を連れてきた


中学の娘が夏祭りに行ったっきり行方不明だというのだ




オレは怒ったね


秘密にしているのを勝手にバラしたんだ






「人の秘密を何勝手にバラしているんだ」


と両親そっちのけで口論けんかしたね


その間、約30分




「もちろん秘密にします」


憔悴した両親は約束した




怒ってはいるが娘が居なくなって憔悴している親を目の前にすると無碍にもできにない


本当は見捨てるのが正しいことは判っている


だが実際に見捨てれるかというとそうもいかない




人間のロジックではないんだな


・・・ただの甘ちゃんだと自分でも判っている


後で泣くことになるのはオレ自身だからな





そこで詳しい話を聞いてみた




両親からの話だと


日曜の夜の7時くらいに近所の夏祭りに出かけたそうだ


そして返ってこなかった





携帯にかけても繋がらない


警察に届けたけれども見つからなかったそうだ




もちろん両親も聞き込みをしたそうだ


夏祭りの屋台の人


夏祭りに踊りに行った人


近所の人


娘の友人


思いつく限り聞きまくったそうだ



・・・親の愛って凄いよな





そんなわけでひさしぶりに能力全開だ


といっても事件に関係する物品がないと役立たずなんだよな





というわけでまずは娘の写真を見せて貰って顔を覚える


あと当日の服装も、だ




手当たり次第に触りまくったおかげでなんとか手がかりが得られた


そして悲しい結末も、だ





犯人は同級生の男だった


一方的に思いを寄せて、拒絶されたので殺したそうだ



・・・いつものことながら気が滅入る結末だ



オレの能力を使うというのは大体そういうことだ


隠された秘密を暴くというのは大抵ロクでもない人間によるものだ


だから結末もロクでもないものになる




両親は娘の遺体を前に泣いていた





警官は憮然としていたな


『探偵』を名乗るオレに先を越されたのだ


おまけに遺体を自分達よりも先に見つけ出す始末




オレも不機嫌だ


なにせ警察から「犯人の仲間だろう!」と根掘り葉掘り尋問されたからな


もっとも任意なので返ってきてやったがな






・・・結局今回もロクな結末にならなかったな


まあ犯罪なんてこんなものだ





被害者


被害者の親


警察


オレ


誰もが幸せにならないという不条理



コ○ン君や金○一君が羨ましいぞ

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