日常~西尾と特訓を~
——基本剣技《ホリゾンタル》!!
一気に肉薄した僕は武士が抜き放つ動きをして、反応に遅れた剛に打撃を与えようとする。水平に左から右へ木刀を走らせて、胴体に強く当てる。
——カァンッ!!
手首に負荷が掛かり腕に痛みが響いてきて、柄の握りが痺れるも落とすまいと堪えた。弾かれに逆らわず退きつつ見たことで、良く防げたなと思ったんだ。命中の直前に木刀を割り込ませ盾にして、受けるダメージを小さくされた。相手に不足なしと笑みを浮かべてしまう。
「フフッ……」
日々鍛練をしっかり積んでいること、対応出来て当たり前の考えにより驚きは感じないんだ。反対に容易く倒れはせぬこと、期待を抱き始めた。
「おりゃあぁ!!」
両足を地に着けると正面から叫び声がして、面白さに浸る間も無く切っ先を向けられた。基本剣技《スラスト》で、突き刺そうとしてくる。
——単純すぎる。
至近距離ならば回避しようにも難しいけれど、場所が遠ければ軌道が見えるので余裕が有るんだ。必要最低限の動きで道を開けると、空振りの勢いで転ぶ。
「……大丈夫ですか?」
「ああ……、ってなにをしようと……!?」
右手は心配と共に手を差し延べていて、左手は木刀を首へと狙っていたので、矛盾する行いに剛は目を剥き喚く。立場が逆だったら不安を覚えずには居られないって、思えど今だけは怖がらせたさに止めようとしなかった。
「そこまでだ!」
審判を努める巌さんの声を耳にすると、漸く切っ先を下ろして立ち上がらせた。部屋の中心に三人で座ると、反省や助言を始める。
「剣技を行使するタイミングが悪いですよ」
「何だ、最後の《スラスト》は」
「ヴっ、すんまへん……」
遠距離から突進して貫くならば単発の《ストゥレイト》を選ぶなどと、剣技について良く知らねば活かせず持ち腐れになる。基本も組み合わせにより上位に劣らぬこと、剣技の力に頼らなくても身体の力で下す者も少なくないんだ。
「勝とうとする思いは悪くないですよ」
「考えが足りておらん。猪みたいだ」
「そこまで言わなくても良いのでは……?」
「手を差し延べられ安ずるなぞ、気が緩んでいる証だろう」
「本当に、息子さんに対しても厳しいですね」
「戦場は甘さを捨てねば生きられぬ」
不意に裏土の記憶が蘇りして、彼女を守ると覚悟が在ったからこそと考えれば言葉を受け入れられた。愛情の現れも様々に思う。
「準備運動になりましたよね?」
「えっ……そやな……」
「対人戦をする意味は必ず得られます」
「ええのか?」
「言うは易く行うは難し。経験や反省を重ねてゆけ」
「おう!宜しく頼んます。次こそ……」
挑発のついでに助け舟を出してみると、後悔を覚える火の点きように圧されかけた。熱血さから逃げようと、位置に着くべく歩き出してゆく。




