表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/103

日常~一木を傷付け~

「フゥ〜」

 現在地は天樹てんじゅの下で幹にもたれ、聖域の内側で空気の冷たさ清らかさを感じて居る。風は吹いてなく静かだからこそ、心も休める。

 ——…………。

 先程に着替えたことで汗のにおさは感じ取れず、乾いた服によってかさわやかさを感じ取る。息を吸う度に肺も洗われて、笑みを浮かべた。

「森が…………」

 騒いでいると、思うや根の上で立ち上がった。何か良くないものが踏み入れたと、声なき声の報せを受けて戦いの構えを取る。妖異よういではなさそう。

「あっちか?」

 東の方角に目をり気配を探り、未熟ながらも位置を特定してみる。聖域は猿戸さるどから出て駆け行けば、黒い霧のごとく虫が群がっている。中には人が振り払おうと手を動かし足は逃げていた。

 ——雀蜂すずめばちに……。

 襲われるなんてと、久し振りさやハテナに首を傾げてしまう。死に繋がるアナフィラキシーショックになられてはと、持ち歩いている笛を優しく吹く。自然素材は木のみで作られた小さな筒で、縦は十ミリに横は五ミリの物だ。森守もりもりは他に数えるほども、僕だけに与えられているんだ。

 ——ピィイィィッ。

 金属製とは違った温かみのある音が低く響き渡って、空気の振動により雀蜂の怒りを鎮めて巣に帰らせる。黒い霧が晴れた所に残りしは息を荒げる男の人で、顔や腕に刺された跡が赤くれている。見るに耐えぬ痛ましさだ。

「大丈夫じゃなさそうですね?」

「…………」

「立てますか?」

「…………」

「傷付ければ今のようになりますよ」

「うるさい!」

 俺は(おれ)は俺が遣りたいようにやる。何が悪いんだ。どいつもこいつも。口を開いて飛び出た声を聞いて、助けなければと思ってしまった。警察を呼ぶか救急を呼ぶか考えながらモバイル端末をポケットから出す。前者に要請を入れた。

 ——十分位で警察官が到着するだろう。面倒事は押し付けるに限ると、近くの木に寄り掛かり待つ。不満を絶えず呪文のように言い続ける男の人を良く見ると、四十から五十の歳で要職に就いていたらしき風貌ふうぼうがあった。

 ——思い通りに……。

 人を動かしてきたとすれば言っても届かない。上へ上へ昇るも切られたことで、失った多くの物を取り返そうともできない。差し延べる手はあるが渡せる金はあらず、他を責めるしかできぬ者の行く末はさよならだ。

「こっちです!」

ひどく刺されたものだな……」

 警察官の一人がそう言うと一人が立ち上がらせようとする。男の人は余りの痛さにうめきを上げ、歩くこともままならぬほどだった。

「悪くないんだ!!」

「話は署で聞かせてもらいますから」

 地森ちしんの外に停めてある白黒のパトカーへと協力して運び込む。対応や取り調べは任せて、損傷の程度を確認する為に戻った。殴打の跡一つあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ