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日常~寄道し軽食を~

 図書館を出てから自転車を一向ひたすらぐだけで、二人並び走り行くも会話はない。空を見れば今の様を表すごとく雲って、心の暗さに溜め息を鼻でつく。隣りを見るも声を掛けられなくて、沈黙が続いていた。

「少し寄って行かない?」

「え、どこに?」

「商店街で蛸焼たこやきとか?」

「うん、いいね」

 現在時刻を確認すべくモバイル端末をポケットから出して、電源を入れ表示を見れば午後の三時だった。母親に心配させないように短くメールして、片付けるやしおりさんを追い街道に入った。環状交差点らうンダバウトの近くに屋根付通路アーケードがあり、古びた店など軒を連ねている。

「へい、まいどー」

 六個の柔らかな球体の上には鰹節かつおぶしが振り掛けられ、熱によって生きてるように動きながらソースの香りを漂わせている。日本大阪名物の蛸焼きを左手に焼かれつつ、自転車のハンドルを右手で握りままに歩き出す。

 ——どこかな……。

 先行ったはずだけどと思いキョロキョロと、両側の店の前やベンチに居る人を次々に忙しく見てゆく。清楚せいそな白を基調に着て、薄手のガウンを羽織った女性の姿を認められない。不安を覚えも進んでみれば、正面に居たんだ。

 ——何を見てるんだろ?

 近付きながらと栞さんの視線を辿たどると、古びたレンガ貼りのアンティークショップらしき飾りたくさんの店があった。照明はオレンジ色によって木製の品々が趣を感じさせてくれた。自然素材の物は使うほどに味が出てくるんだ。

「お待たせ」

 気付けば蛸焼きの熱さが感じにくくなっていた。ソースの香りも弱まっている。冷めてしまう前に早く食べようと、左手のそれを差し出す。

「あ……」

 一瞬のうちに一個なくなったことに対して、言葉が続かなかった。食べるのを我慢してたのにと胸中で思いつつ、美味おいしそうに笑う顔を見るんだ。

「どう?」

「少し冷めてるけど、いいわ」

「ごめん」

りゅうはすぐそうやって謝るのよね」

 悪くないと分かってるんだからしっかりしなさい。本当に思ってもないのにされても、心伴わぬ言葉は逆に怒らせてしまう。言っとけば良いし嫌われるよりはマシだと考えていたとすれば、残念の一言しかないわと話すんだ。

「食べないの?」

「全部あげるよ」

 栞さんは説教している間も食べ続け、今や残り二つとなっていた。先程までは早く食べたいとばかりだったのに、今度でいいやと欲が失せていた。遠慮の欠けらなく平らげるのを惜しそうに、心底で感じながら見て居た。

「ごちそうさま」

「僕が捨てるのね……」

 当然のように渡された笹舟ささぶねを思わず受け取ってしまい、後悔とあきらめの込もった声を漏らした。商店街に入った弓門アーチへと引き返すことにして、自転車を押す。ゴミ箱を探し歩き捨てて、再び並び行く。

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