日常~権限は大きい~
「終礼を行います」
二年A組の担任は教卓に立って、時間がないことを理由に挙げ、連絡事項を伝えるに留めてくれた。午後四時のチャイムが鳴る前に最期の挨拶をして、帰り支度をした。提示に終わると思わなくて、嬉しさに早く出たがるんだ。
「ほななー」
剛は先に帰ることを告げ、教室を出て行った。今日も鍛錬なのかなと思いつつ、鞄の中を覗いた。忘れ物はないかと確認した。
「じゃあね!」
栞は慌ただしく教室の中を駆けながら、僕に手の平を見せるやどこかへと。運動部はバレーに所属しているから、更衣室へ向かったのだろう。
「よし……」
帰るかと一人言をしては通学鞄を背負い、廊下へと足を進めた。今は放課後だから教師と擦れ違うだけで、賑やかな声もしない。気分を紛らわすように早足で階段へ向かい、駆け下りて玄関を目指した。
――眩しい……。
目に飛び込んだ西日の光に負けじと目を開けて、輝くような空間の中を歩き、自分の靴箱の前で足を止めた。
「根宮さん、少し時間をもらえるかね?」
「えぇ~……」
今から帰ろうと思っていたのに、学校長が呼び止めるんだ。何か確認したいことがあるらしく、手短にとお願いした。
「彼女の件についてですが……」
生徒会よりも上の権限を行使するつもりはないかと、聞かれて首を傾げた。意図が分からず困っていると、言葉を変えて話してくれた。
――なるほど。
皇家の者である僕は当主になったことで、守護家としての権限を持っている。帝国法で認められているそれは、護国のために有る。警察官のように身柄を拘束したり、裁判官のように裁決もできるが、皇帝を対象にはできない。
「考えていませんでした」
学校長が言わんとすることを理解した上で、正直に答えた。世間体を心配しているのか、行使されては困るみたいなんだ。
「学校内では生徒に徹すると決めていますから。余程のことが起きない限りは、ですけどね……」
「今日はそれに相当するかと思いますが?」
「意のままにと、申しました。一度でも覆したことがありましたか?」
「気を悪くしないでもらいたい。信じましょう」
「確かに僕はみんなと違います。それでも、同じように接してほしいです」
「分かりました。先生たちに良く伝えておきましょう」
「ありがとうございます!」
「気を付けて帰りなさい。遅くならんようにな」
「はい。失礼します!」
「また、明日」
僕は挨拶を交わすや上靴から運動靴に換えて、校舎を出た。普段は革靴でなくても良いと規則で許されているが、式や行事の日は履かなくてはならない。底は固いし、皺になったり、傷みやすいし、手入れが面倒だ。動物を殺してまで作る意味が分からない。正装だとしても。




