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日常~生徒を叩くな~

「手を放したら叩くんでしょ?」

 僕は声を荒げていた女性教師の右腕をつかみながら、思ったままに問い掛けた。出来るだけ冷静になりながら、鋭い目に負けず立ち向かう。

「退学にしますよ!」

「止めただけなのに、ですか?」

 無茶苦茶なことを言うんだなと、心の中で思った。処分等の決定権は学校長にあることを知っている。同等以上の権限を生徒会が持っていることもだ。

「誰か、職員室に行ってきて!」

「分かった、呼んでくる」

 駄目もとで頼んでみたら、三人の仲間が応えてくれた。出来ないと首を横に振られたらどうしようと思うも、杞憂きゆうに終わって良かった。

「規則を守らない人が悪いでしょう!」

 女性教師は言うや僕の手を振り払い、おびえている男子のほおへと手で風を切る。怒りのままに、勢い付けて。

「しまっ……!」

 僕は振り払われた腕を戻せずに、上体がのけ反る中で悔しがった。今すぐに立て直して、叩くのを止めようにも間に合わない。無理してでもとあらがって居ると、女性教師の手を誰かが止めた。

「だから、言ったやろ。鍛え足りんと」

つよし……」

 腕力の無さを指摘されて、返す言葉もなかった。安堵あんどの息を吐いては、助けられたなとお礼を言った。借りが一つできてしまった。

「手ェ出すなんて、やりすぎやで」

西尾にしおさんも、退学にしますよ!」

「構わへん。暴力を振るう教師が居るんやからな」

 言い切りやがったと、僕は思うとともにみを浮かべた。剛は称賛の目をみんなに向けられる。勇気付けられた仲間たちが、次々と声を上げてゆく。

「先生、もうやめてください」

「先生、落ち着いてください」

「先生、らしくない……」

「先生、今は抑えてください」

「先生、許したげてください」

「先生……」

「貴方たち、黙りなさいっ!」

 火に油を注ぐ結果となり、必死の叫びは女性教師の心に届かなかった。何の権利があるだの、逆らったらどうなるかだの、声を荒げてはまくし立てていた。

「うるさい‼」

 僕は全く非を認めようとしない女性教師に対して、全力で怒鳴り沈黙させた。あふれ出そうな百万語を押し留めて、冷静になりつつ口を開く。

「生徒にだって、権利はありますよ。教育法で認められていますから」

「少しばかり知っているからと、立場を考えなさい!」

「証拠ならあります。監視カメラの存在を忘れていませんよね?」

 教室の天井に付けられたそれは、主に教師が体罰を行っていないか、次に生徒が問題を起こしていないか、記録するために有る。抑止力として働き、消すことは出来ない。女性教師は今の状況が分かったみたいで、見上げている顔は血の気が引いたように青くなってゆく。冷えすぎたのか、顔を震わせるんだ。

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