日常~防壁の出現に~
――――!?
僕はけたたましく鳴り響くサイレンを聞いて、何が起きたのかと身構えた。ウーという音によって、教室の窓ガラスが小刻みに震えていた。
「敵襲か?」
剛の疑問に対して、何も言えなかった。訓練の可能性もあるが、情報は入って来ない。ピンポンという音が二度聞こえ、教室のスピーカーを見るんだ。
「生徒のみなさんは教室に戻り、指示があるまで待機してください。繰り返します……」
生徒に状況を知らせることなく、先生に従えと言うだけだった。不安がなくなる訳がなくて、困惑していた。居ても立ってもいられずに、窓を開ける。
「あれを見ろ!」
「壁が迫り上がっていくぞ!」
窓辺の誰かが叫んだ声を聞いて、僕も窓から顔を出す。指し示された方向を見れば、確かに防衛設備が展開されている。国内の各所にある物の一つで、防災紅壁と言うんだ。
「敵襲、なのか?」
妖異相手だったら結界を展開して、被害を最小限に抑えるはず。残念ながら視えない。未だに外からサイレンが、聞こえていた。
「せやなぁ。にしては……」
「気付いた?」
「ああ。音がせえへんな。戦いの……」
「武器を使ってなさそうだね」
剛と疑問を話していると、不意にサイレンが鳴り止んだ。非常時だと思っていたのに、静かになった。頭の中ではまだ鳴っている。忘れられない。
「あれ、なんで……」
「おかしくねえ?解決したのか?」
「壁が下がっていくぞ!」
「何だったんだ?」
窓辺の仲間たちが口々に、疑問を発する。外からピンポンパンポンという音が聞こえ、町内放送が流される。耳を傾けた。
「えー、ただいま、点検中、点検中。お騒がせしております……」
何だよと、思わずには居られなかった。開いた口が塞がらない。何事もなかったのなら、それでいいのだろうか。本当に、緊張感が半端なかった。前もって知らせてほしいものだ。苦情を一つ入れたい。
「驚かすなよなー……」
「先生は知っていたと思うよ。三分は経っているのに、来ないもん」
「え、ほんまや。どうなっとんねん」
「避難訓練でもしてくれたら良かったのにー」
「せやなぁ。授業はせえへんでな」
「違うよっ。授業はしてもいいけどね」
「は?」
「本格的な状況の中で動くことは、経験になるからさ」
「せやけど、終わった後の話って、長いよな?」
「あー……。だよなー……」
再び校内放送が流され、休憩が五分延長された。次の授業は苦手意識から、サボりたい気分だ。時間が短縮されたことに対しては、喜べそうだった。




