定律~建国を迎える~
――マシューさん、いよいよです。
式典を前に衣装を着せられながら、窓の向こうに広がる青い空を見て居た。黒染の乱で犠牲になり、今日を迎えられぬ人へ思い馳せる。
――一緒に叶えたかったな。
去年の十二月に戦いを終わらせ、復興に八ヶ月もの時を掛けてきた。山頂以外の森は大半を失うも、本島の四方に都市を作ることができた。外国の制度や法律などを参考にしては、知識を有する者と共に礎を築いたんだ。
「終わりました」
「ありがとうございます」
不本意でも準備してくれた男性に礼を言うと、成功を信じての言葉を掛けてもらった。必要な見栄でなければ、脱ぎたくなる重さと暑さに耐える。絢爛な金色の糸と高貴な紫色の糸を合わせて織られた布は、煌めきに深みを感じさせた。混沌とは違う気がする。
――好きじゃないな。
最高位であると見て分かる装いは、欧州などの王様が着ていたガウン似の羽織りだ。派手さが民衆の目を引くと理由を聞くも、軍服だけで良いと思う。無地の黒色のそれは動き易いし、少し硬さのある襟が首を守る上に、刺繍された菊の花と蔓が気に入っているんだ。
「はい、どうぞ!」
部屋の扉を叩く音を聞いて、僕は声を投げ掛けた。誰なのかと思いつつ入り来るのを見れば、神霊の一つである木揺で、老人の姿をとる。
「順調かね?」
「早く終わらせて楽になりたいよ……」
「内外から多くの人が集うというのに」
「代わりなんて立てられんしさぁ……」
予期せずにガチャリと閉める音が耳に届いて、視線を扉へと移す。同時に身構えるも解いたのは、神霊の一つである風起で、男児の姿をとる。
「びっくりするじゃん!」
「馬子にも衣装とは、背が低いけど」
「余計なお世話ですっ!」
「界希、夢がようやく叶うな」
「うん、そうだね……」
「失敗しないように練習しとけ」
「行っちゃうの?」
「出来るだけ早く戻って来よう」
優しく頭に手を置いては、背を向け扉を開け出てった。一人にされて寂しくなりも、宣言する口の滑らかさと脳の柔らかさを保つんだ。噛まないようにね。
――世界に受け入れてもらえるだろうか。
根宮家当主が何代にも渡って、皇帝となる定めは良いとして、脅威に成り得る力を持つ者に対して、恐れこそすれ笑えないのなら悲しすぎる。
――妖異が出たら……。
十二神霊と共に鏡界を創り、表で殺し歩くことを禁じた。名前も裏蔓荒土として、鍵持ちだけが往来できるようにした。
「間もなくだ」
「風起、今の所はだいじょうぶ?」
万一のことがあってはいけないと思いから、不安だって気持ちを伝えた。各国の要人も参加するのだから、最初が大事だと重圧を感じているんだ。




