定律~黒影の近付き~
――夜が明ける。
少しずつ白む空を眺めながら、朝を迎えられる喜びを感じていた。今原で丸太に座り、頭がぼうっとするけど。胸の内では楽しみが、抑えられなくなってく。
「界希、おはよう」
「水流、おはよう」
「今日も晴れたわねー」
「本当に気持ちが良い」
「朝食したら水浴びしてきなさいよ。顔も汚れているから」
「分かった、そうする。どこにあるの?」
「心配せずとも私が連れて行く」
「風起、おはよう」
次々と神霊たちが姿を現し、薪を運び置いては火を点す。新鮮な食材は美味しい料理へと、出来るまで待ち切れない。食前の挨拶をしたらがっついて、腹に詰めていく。おかわりもした。
「ごちそうさま!」
「ゆっくりできないのか?」
嫌味にも聞こえる言葉を流して、早く早くと急かした。風起を先頭に麓へ下りて、川のある所へ向かった。近付くほどにせせらぎが、涼しさを感じさせる。岸で服を脱いで裸になるや、川に入った。
――気持ちいいっ……!
今日までまともに体を洗えなかったから、久し振りに心さえもが清められていく。川は穏やかで冷たさがあって、泳いだり潜ったりと楽しんだ。小さな魚が群れを成して、溯り行く様を見たりもした。
――フフッ。
爽快さに自由さなどから、笑顔が溢れて止められない。白木だった樹の枝を見れば、小鳥たちが首を傾げたり向き合ったりしていた。何にも縛られず、何にも傷を付けられず、原始的な生活を送る。在る物で命を繋ぎ、生きてきたことで尊いと思えるようになってたんだ。
「届け物だ、置いておくぞ」
水遊びはそこまでにした方が良いと付け加えながら、風起は着替えを岩の上に乗せた。時間はあるはずだから理由を聞く。島に近付く存在を聞いて警戒する。
「敵となるか、それともか……」
「行くから待って」
僕はザパァと音を立てては岸へと上がり、風を起こして体を乾かした。上下が一続きのひらひらした着替えの服を着ると、頷いて走り出す。気力を以て脚力を高め、山の頂きへと駆け登りつつ心が鐘を打つを感じる。
「見たのは?」
「向こう側だ」
風起を追いかける形で木立を縫うように進み、一望できる所へ出るや制動する。息を整えながら海を見下ろせば、確かに黒い影を認めた。手漕ぎ舟にしては遠めでも大きく、十人以上が乗れそうだ。武装しているかもしれない。
「元居た世界には戦艦と呼ばれる、兵器が造られていたんだ」
「あれがもし、そうだとしたら……」
「招かれざる客になるね……」
対応は僕に任せて、神霊たちは姿を現さない方が良いかもと、考えを伝えた。万一の備えや役目を決めて、迅速に行動を起こす。風起と麓へ飛び下り、海岸へと疾走しては隠れた。木を盾に待ちながら覗き見て、敵かを探るんだ。




