足跡~戦力を欲する~
「ごめんなさい……」
感情的になったこと。妖異に出逢ったこと。九死に一生を得たこと。我が身を以て知ったこと。謝罪の言葉ひとつに、思いを込めた。
「まあ、な」
聖なる樹のうねる根の前で、風起は言った。反省しているのだから責めまいと、許してもらえた。水流も悪いからお互いと、話を結ぶ。
「恐ろしさは分かったな」
「うん……」
忘れることは難しく、思い出すだけで竦んでしまう。声のおぞましさに絡め取られ、逃げられず敵わずに居るしかなかった。戦えない。
「力を欲するか?」
今回のようなことがまた起こるだろう。自分の身は自分で守れるようになりたいかと、訊かれて僕は頷いた。不安と好奇が半々に感じながら、思案する様子と仕種を見て待った。
「仕方ない、基礎から教えてやる」
「本当に!?」
「ただし、厳しくなるけどな」
「がんばる……」
風起は最初に守るべきこととして、許可した以上の行為を禁じた。鍛錬から行使に及ぶ一切を、自分の判断でしてはいけないと。誓えず守られずの場合はそれまでだと。念押しされるも変わらずに、決意を固めた。
「属性はいくつだと思うか?」
「神霊の数で、十二くらい?」
「自然の中にはそれよりも多くある」
説明しながら右手にいつ持ったか知れぬ枝で、地面に見たことのない文字を書いていく。読めないからこそ耳を傾けて、聞き漏らさないようにした。
「全てのものは、大きく八つに分けられる」
左側は、光、火、水、林、と。右側は、闇、雷、風、地、と。上から順に弧の並べては、円を作った。地中に根が伸び広がるように派生して、覚え切れない。
「単一系のそれ以外に、複合系が四つある」
北は無を。東は異を。南は有を。西は似を。周りに書き加えた。先程と違って動詞になっているのは、目に見える形がないからだと言う。
「自己の属性は、生まれた時で既に決まっている」
両親のと同じになることが多いが、例外は少なからずあったようだ。僕が元居た世界では有り得ない能力なのだが、一つは持っていることを願うばかり。
「行使可能な属性は、個人差がある」
相性や型によって、得意なものが異なるから。血筋によって、限定されているから。様々な要因によって、自分と同じはゼロに近いらしい。
「鍛錬を始めるとしようか」
楽に座れと言われて、胡座をかいた。四大行の一つ、座で気を抑えられるようになれと言われたが、遣り方が分からなかった。
「背中を向けててな」
不安を感じながら頷くと、手が当てられた。力強い息と共に前へと押され、次には体を温かいものが包む。何だかぬるっとしているのが、嫌だ。
「今、感じているのが、己の気だ」
揺れ動いているのを、止め続けられること。目を閉じて、集中して、纏うみたいに。自分で感覚を掴むしかないと。出出しから大変だ。




