表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/103

足跡~美味の匂いに~

 ――――。

 真っ暗な海の底から引き上げられるように、意識がはっきりとしてゆく。水面へゆっくり迫るほどに、鼻孔をくすぐられた。

 ――……。

 僕はいぶかしさを覚えながら、美味おいしそうに思えるにおいが気になって、目を緩々(ゆるゆる)と開けた。仰向けの状態で最初に見たのは、天井ではなく枝葉だった。暗闇に負けず、神々しさを放っているんだ。

「あ、起きたわよー!」

 元気で明るい声が聞こえた。視界の外から女児姿の水流みずるが、顔をニュッとのぞかせた。

「…………」

 何の思いも抱かないで、僕はぼうっとした。上体をゆっくり起こして、今居る場所はどこかと見たんだ。聖なる樹の幹の近くで、根に乗ったまま。

「おはよう、なのかな?」

 起きたけれどもすっきりしない。天は真っ暗だから朝を感じない。時間が止まっている空間の中で、時間を数える方法さえ知らないんだ。

「疑問形にしなくても良いわよ」

 睡眠を取って目を覚ましたら、最初にする挨拶があるみたいけど。必ずこうするべきなのは、可笑おかしいと。気持ちを表現する言葉は、好きに選んでこそと。水流は考えを強く述べたんだ。

「ごめんなさいね」

 前触れもなく謝られて、状況が分からず戸惑とまどった。少し離れて居る風起かざおに視線を送り、助けを求めるんだ。

「鬼ごっこを強制された挙げ句に……」

 倒れてしまったから、りすぎたと思っているらしい。幸いにも命は危うくなく、泥沼にまったように寝ていたことを知らされた。

界希かいきひ、無茶なことをするな」

「うん……」

「水流は、程々(ほどほど)に遊ぶことを覚えろ」

「分かったわよ!」

 水流は反発するように言っては、ムスッとほおふくらませた。沈黙が訪れる中で、クウッという音が僕の腹から聞こえたんだ。

「おなかへった……」

 視線を下げては腹に手を当てて、力無くつぶやいた。視線を上げて風起たちを見れば、笑いをこらえていたんだ。顔がプルプルと震えている。

可愛かわいいわね~!」

「仕方ないさ。木の実しか食べていないからな」

「匂いがするんだもん。料理しているの?」

「どうだろうね。そうかもしれないわ」

「まあ、扠置さておいといて……」

 下行くぞと命令してきては、置き去りにして行くんだ。水流は根の上を楽しげに走り、風起はゆっくりと歩いていた。溜め息をついては仕方なく立ち、後をおって伸びた草のある所へ向かう。待ってよと叫んでは、慎重に下りるんだ。

「けむ?」

 誰かがき火でもしているのか、白い煙が細く昇っていた。不満を抱えながら歩いて、最後には飛び下り、地に足を着けた。少ししびれたんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ