足跡~灼熱の竜巻が~
「風よ、人の子がなぜ居るんだ?」
司のとは違った声が、突然に聞こえた。続いて、目前に炎の竜巻が出でる。赤々と燃えるそれは、火傷を負わせるかのよう。
「熱い、熱すぎるよ‼」
僕は顔を守るように手を翳し、大きな声で訴えた。徐々に手の平が赤くなり、痛みへと変わっていった。何が起きてるのと、思うんだ。
「やれやれ」
首を振りながら呆れている様子が、目に見える一言だった。自然を司へと移して顔を見れば、熱さを物ともしないんだ。
「火よ、矛を収めろ」
姿はないのに竜巻に向かって、怖いほど真剣な目になり、事情を説明したんだ。魔女という単語が良く出ることに、疑問を感じた。傾げるも話を遮ることをせず、静かに待った。終わってから返ってくるまでに、少しの間があった。
「なるほどだ」
声がしたと思ったら炎の竜巻が掻き消えて、手の平や顔に受けていた熱さも収まった。人の姿がそこに現れて、歩き寄ってくる。衣装を見れば仏像のように布を纏って、右肩を出している。司と同じ。
「珍しいな。いつから、そうなった?」
情が移るほどに、面倒を見るほどに、優しくなるなんて、と。否定するように言いながら近付き、立ち止まるんだ。僕や司よりも背が高い青年の男性は、逞しい腕をしていた。左手の平に右拳を当てて居るから、好戦的な性格だなと感じたんだ。
「神霊……?」
「私と同じ存在で、火を司るモノさ」
先程の現象が起こった理由を、自ずと悟った。確かに力を持っていないと、派手な登場はできないだろう。辺りを見れば燃えた跡が、どこにも。
「別に教えなくても良いだろ」
「後で教えることになるのが見えている」
「子供というのは、厄介だな」
男児と青年の遣り取りを聞きながら、僕は攻撃されないかと不安で一杯だった。無意識に身構えながら、話す様子を見て居た。
「火ほどではないさ」
「風よ、何か言っただろ」
徐々に空気がピリピリしてきて、肌が痛い感じだ。今にも喧嘩しそうな雰囲気で、巻き込まれたら死ぬだろう。怪我で済めば良いけど。
「――と、言う訳さ。干渉は許さないと伝えてある」
「……死にたい、だぁ?」
火を司る青年の自然と声を受けて、居た堪れない気持ちになった。顔を見られるのが恥ずかしいと俯いて、話が終わるのを待った。
「……………」
声が聞こえないなと思って顔を上げれば、男児と青年は何やら難しそうに考えていた。僕のことでだろうとしか思えない。
「取り敢えず。私のものだからな」
司は手を出すなよと青年に釘を刺し、表情を緩めることなく上から見て居た。殺気なのかは分からないけど、息苦しくなったんだ。向けられていないのに恐れを感じて、動くことができなかった。沈黙が続いた後にようやく。




