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【短編】

道端の大男



*********************************



大男が道端に座っている。


頭の上には、小鳥が数羽止まっている。



そこへ少女が一人やってきた。


少女は大男へ尋ねた。




「ここで、何をしているの」と




大男は旅人に答えた。




「分からない、気づいたらここにいたんだ」と




少女は不思議そうな顔を浮かべて、その場を去った。




*********************************




大男が道端に座っている。


肩の上には、リスが数匹どんぐりを食べている。



そこへ若い女が一人やってきた。


若い女は大男に尋ねた。




「家には帰らないのですか?」と




大男は若い女に答えた。




「ここに居ないと駄目みたいなんだ」と



若い女は「変わっているのね」と一言告げて、その場を去った。




*********************************




大男が道端に座っている。


膝の上では、猫が数匹眠っている。



そこへ婦人が一人やってきた。


婦人は大男に尋ねた。




「どうしたら、貴方みたいに大きくなれるのかしら」と




大男は婦人に答えた。




「分からないけれど、大きいことにも意味はあるはずさ」と




婦人は「きっとそうね」と一言告げて、その場を去った。




*********************************




大男が道端に座っている。


足の傍では狼が数匹戯れていた。



そこへ老婦が一人やってきた。


老婦は大男に話しかけた。




「貴方はいつまでここに?」と




大男は老婦に答えた。




「多分、ずっと」と




老婦はもう少し大男のことが聞きたかったが、足元の狼が怖かったのでその場を去った。




*********************************




大男が道端に座っている。


ただ、一人で座っている。





やがて、黒服に身を包んだ人達が街からやってきた。


彼らは皆悲しそうに、項垂れている。





行進する彼らの中央には、黒い棺桶があり、その中には一人の老婦が眠っている。


彼らは大男の足元に穴を掘ると、それを地中に埋めて、暫くして街へと帰っていった。






大男は、しばらく黙って考えていたが、ようやく気づくことができた。





自身が彼女の墓標であったことに。



そして、それが彼のこの世界での役割であったことに。




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