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たとえどんなに苦しくても…  作者: 優一 雫
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2nd story~前編~

前回の話から5年…

リクエストがありましたので続きを書きました。

前編と後編に分けて投稿いたします。


あの悲劇から5年が経った。


「先輩!先輩って名前が女みたいですよね」

俺はふとされた質問に、

「そうだなぁ。そのおかげで真咲君じゃなくて、真咲ちゃんなんて呼ばれて…。俺な、時々本当に男かを再確認するんだよ」

返された言葉に後輩は笑みを浮かべて、

「そんな先輩も魅力的ですよ…ふふふ…」

とうとう笑みから笑いに変わった。真剣に言っているのか分からないがその優しさと親しみやすさに俺は救われた。


昔、俺は友希と家族について語り合っていた。お互い家族がいないし似た者同士だねと。


だからこそ、友希が亡くなっても落ち込んでいる暇はなかった。放っておけばお金が尽きるからだ。しかし、俺はそのおかげで当時暗く無表情の愛想無しだった。

そんな俺に話しかけてくれたのが後輩の加奈だった訳だ。


現在俺は修業をしている。料理のである。料理の道を目指したのは、友希のおかげだ。

俺自身、店を出すつもりはないのだが多くの店からオファーが来ている。何故ならいろんな大会で成果を納めてきたからだ。

しかし加奈は店を出すつもりでいて、俺のことを誘っている。

俺はこいつのところがいいのだが、加奈は俺の好きなようにすることを一番に願っているそうだ。


そんなこんなで一年が経った…


「マー君!」

そんな懐かしい呼び方が聞こえた方を俺はまさかと思い向いた。だがそこにいたのは後輩の加奈だった。

「ごめんね。軽々しく呼びすぎたかな?」

俺と加奈は一年間の間に仲がとても深まった。

「いや、いいよ別に」

しかし加奈は困った顔で慌てふためいていた。

「どうした?」

「マー君って呼ばれるの嫌?」

「なんで?」

すると泣きそうな顔で、

「だってマー君…泣いてるもん…」


俺はその一言で気づいた。俺の顔がどうなっているのかが…

そうだ…泣いてるんだ…俺。

加奈が困っているのだから泣いている場合ではない。

「いや。目にゴミが入ったんだ…」

手で目をこすりながら慌てて取り繕った。

「そ、そんなわけないじゃないですか!」

もう泣いているのに推しは強い。

「夕日が眩しくて…」

「まだ朝ですし、ここは日陰ですよ!マー君…嘘下手すぎ…」

「あはは…。いや、バレちゃ仕方ないな。やっぱ加奈は優しいな。」

加奈は涙を拭い、

「どうして泣いたんですか?」

と聞いてきた。

俺はあまり正直に話したくなかったから言い訳を探し、

「それより俺を呼び出した理由、そう理由を教えてくれよ!」

加奈はなんだか膨れた顔をしていた。

しかし加奈はやはり優しく、

「じゃあマー君!近くの喫茶店入ろう!」

と、二人で喫茶店に入った。


俺と加奈はアイスコーヒーを頼んだ。額には汗が…加奈がお手洗いに行き汗を拭き取って戻ってきた。

「じゃあ先輩お話ししましょうか」

改まった表情に俺は緊張感を抱いた。

「どうしたんだ…改まって」

「先輩、私は先輩のことずっと見てきました。無邪気な笑顔やさりげない優しさ…。そんな先輩だからこそ私は伝えたいと思いました」

俺は息を飲む。周りから伝わる緊張感…

「何を伝えたいと思ったんだ…?」

「先輩!私と会うのはこれで最後にしてください。」

え?


『最後』


「どうしてだ⁉︎」

俺は慌てて聞いた。

「理由は家庭の事情で言えません。でも先輩、これからは私に関わらないでください。」

「だからどうしてだよ!」

どんどん涙がこみ上げてくる。

「この際だからはっきり言います。私は先輩のいろんなところが大嫌いなんです」

そう言い残して加奈は去った。悲しげな表情と涙を浮かべて。


俺はすぐ店を出て後をつけた。

正直に言うと俺は結構傷付いた。だが加奈があんな顔するのは理由があるに違いない。


加奈はホテルに入っていった。

当然後をつけると、黒服の男が彼女の前に現れた。見守りながらも俺は自分に保険をかけて追いかけた。


ある部屋に加奈は入った。外には見張りが二人ほどいた。俺は近づき、

「あの…道に迷ってしまい教えていただきたいのですが…」

黒服の男二人は、一斉に銃を俺に向けた。

「どうして…俺に銃を向けてるんですか…」

男たちは確信したかのように笑みを浮かべて、

「どうして落ち着いているんだ?普通なら叫ぶところだぞ!」

やっちまった…。

読んでいただきありがとうございます。誤字脱字等や、ご感想や評価などは励みになりますのでどうぞよろしくお願いします!

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