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ラピスと黒猫のロシュ  作者: 咲 潤
~一人目の来訪者~
12/12

二人目の来訪者 ~2~

見覚えの無い部屋で、椅子の上に座る猫。


その猫が、女性に微笑み口を開いた。


「やあ、ボクはロシュ。磯で君を見つけて、家に連れてきたんだ」


「……えっ!?ね、猫が喋ってる!?」


女性は驚いて、慌てて体を起こした。


枕の方に急いで体を寄せると、布団を肩までたくしあげる。


そして、布団の上に顔だけ出して、猫を見た。


「あー……。驚かせちゃったみたいだね。ここは不思議な世界だから、ボクみたいな猫でも人の言葉を話せるんだ」


「……こ、これは、夢?」


未だに自分の身に何が起こったのか、解っていない様子の女性。


「夢じゃあないんだけど、似たようなものかなぁ?」


黒猫は、手のひらを上へ向けて、片手を上げる。


「だって、普通なら猫は喋らないわ」


「そうだね。だから、不思議な世界なんだよ」


「そんな世界なんて、夢でもない限りあり得ない」


少し怒っているのか、女性の語気が強まりだした。


「まあ、夢って事にしても良いよ。君の受け入れやすい方法で、真実を見失わなければね」


「……何を、言っているの?」


「外を見てごらん?」


訝しい顔で見る女性に、ロシュは窓の外を手で示した。


「そと……?」


窓から見える景色は、オーシャンビューの綺麗な風景。


空には虹色の鳥たちが羽ばたき、光輝く海の向こうには水平線から水平線に架かる大きな虹が見える。


「キレイ……」


そう言って、女性が一息突いた所で、部屋のドアがノックされた。


コンコン。


「……入りますよ?」


ロシュには聞き慣れたラピスの声。


女性には初めて聞く、少女の声がドア越しに呼び掛けた。


「良いよ。開けようか?」


返す言葉に詰まる女性の代わりに、ロシュが答えて椅子から飛び降りた。


「大丈夫よ」


そう言って、ラピスは自分でドアを開ける。


先にドアを開けられてしまったロシュは、ラピスの姿を見上げて横に避けた。


お盆を持って現れたラピスが、足元のロシュに気付いていない様だったから。


「あら、目が覚めたのね?」


ラピスが真っ先に気にしたのは、ベットで体を起こしていた女性だった。


「……え、ええ」


困惑した顔で答える女性に構わず、ラピスはお盆をサイドテーブルへ置く。


「……ロシュは?」


キョロキョロと辺りを見渡すラピス。


「ボクはここだよ」


そう言って、黒猫はラピスが部屋に入った後の扉を、全身を使って閉めていた。


「……気分はどう?」


ロシュを見たラピスは、安心したのか微笑んで女性に向き直り、そう尋ねた。


「私、……どうしてここに?」


女性はラピスの問いには答えずに、疑問を返す。


「ここは何処なの?何で私はここに居るの?」


ここを訪れる人達の中には、こういうケースもままあった。


次元の穴から吐き出された人は、基本的に必ず意識を失っていた。


その中でも、彼女の様に穴から出てくる所にロシュ達が出会(でくわ)すと、こうして部屋で寝かせておく。


グリフォードの時の様に、ロシュ達が気付かない所に吐き出された人は、そのまま穴から落とされた場所で目覚める。


そして、ロシュ達に出会うまでは島の中を彷徨う事になっていた。


そもそも、次元の穴が出現する場所は決まっていなかったんだ。


以前は、眠っているロシュの上に突然落とされた人も居た。


ロシュは落とされた人の足の下敷きになって、背中を強く打ったけど、直ぐに魔法で治してた。


他にも、海に落とされた人も居たし、家の屋根の上に落とされて、転がって屋根から落ちた人も居た。


次元の穴から出てくる人は、既に亡くなってるから、高いところから落ちても死なないし、怪我もしない。


けど、生きて島に住んでるロシュ達は、怪我もするし、打ち所が悪ければ死ぬこともある。


そんな不公平な世界の最果てで、生きたままのラピスとロシュに、新たな来訪者との刺激的な一日が始まろうとしていた。

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