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ラスボスの生け贄へ転生した私が足掻く話  作者: えっちゃん
4章 生き延びるための戦い
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10.モブはヒロインに成り代われない

 白く輝く聖なる炎に全身を包まれ、暗黒竜は苦しそうに腕を振り回して咆哮する。


 巨大な竜が全身を揺らして暴れるため、地下空間全体が地震みたいに揺れて壁には亀裂が走る。

 収束しない揺れで転ばないように、私はへっぴり腰になってアレクシスの傍まで歩いた。



「アレクシス、貴方って光魔法まで使えたの?」


 ゲーム設定では、光魔法を使えるのはヒロインと騎士団長の息子で、2の途中で騎士からレベルアップし聖騎士となった攻略対象キャラ、オスカーだけだった。

 竜王の血をひくアレクシス王子の適性は、たしか火と風属性、少しだけ闇属性があっただけだった気がする。


「いや、使えなかったよ。暗黒竜は闇属性だろ? 一番有効なのは光魔法だから必死に習得したんだ。適性はほぼ0だったから、魔力は倍近く消耗するため数はそう放てない。ゲーム沿いならヒロインと会うのは三年後だし、好みじゃないヒロインに頼らなきゃラスボスを倒せないなんて、どうしても受け入れられなかった。三年後なんてラクジット死んじゃうだろ? それは絶対嫌だったから」


 切なそうに眉間に皺を寄せて、アレクシスは私を見下ろす。


「色々使って底上げや補助はしているけどね」


 さらり、髪を掻き上げて見せたアレクシスの右耳には魔石が付いたピアス、左手親指と小指には魔力を帯びた指輪がはまっていた。

 いかにも特殊効果付与がある魔法の指輪は、ゲーム画面と攻略サイト、設定資料集で見たことがある。たしか、この指輪は......


「魔力UPと聖騎士の装飾品?それって、光属性の能力を上げる代わりに闇属性に弱くなるデメリットがあるんじゃ......」


 ゲームのラスボス戦中、闇魔法耐性が低い前衛のオスカーが闇魔法を防ぎきれなくて瀕死になっていたことを思い出した。

 聖騎士のスキルはラスボスに効果大で主力メンバーだし、武器が剣だから後衛には出来ず、でも即死魔法を毎回くらうから困ってしまい一回リセットをして、オスカーに闇魔法対策のアクセサリーを装備させて補強したんだった。

 聖魔法の攻撃力を重視しても闇魔法への耐性が無かったら、アレクシスは危ないんじゃない。

 まさか、アレクシスは“攻撃こそ最大の防御なり!”とか言う脳筋じゃなかろうか。


「ならば、闇属性に耐性があり竜王に近い魔力を持つお前が補助し、カイルハルトと王子が攻撃の要となればよかろう」


「エルネスト? まさか、この装飾品を作ったのは貴方なの?」


 魔道具に込めた力を使うわけではなく、アレクシスは自分の魔力で聖魔法を放っていた。

 適性が無い魔法を使えるようになる装飾品なんて、私は知らないし攻略サイトでも載って無かったと記憶している。

 そんなレアアイテムを作れるとしたら、作ったのはエルネストしかいない。



 ぶわんっ!


 突風が暗黒竜を包んでいた聖なる炎を吹き飛ばし、白い煙を鱗から立ち上らせた巨体が姿を現した。

 アレクシスが放った聖なる炎は僅かに漆黒の鱗を焦がした程度、大したダメージは負わせられ無かったようだ。

 怒りからか炎に炙られたためか、暗黒竜は鼻息とともに鼻の穴から白い煙を吹き出した。


《アレクシス、我に逆らうと言うか! ククククッ面白い! 貴様と邪魔者を喰らってから、娘の体を奪うとするか》


 鋭い牙を剥き出しにして向かってくる暗黒竜を前に、カイルハルトとアレクシスが迎え撃つため出る。


「ラクジットに手出しはさせない」


 ドラゴンスレイヤーをかまえたカイルハルトが床を蹴る。


「俺も喰われたくないし、全力でいきますよ父上」


 腰の剣を引き抜いたアレクシスは、カイルハルトと視線を一瞬合わせてから床を蹴った。


「わ、私も戦う」


 左右に別れて斬りかかる二人に遅れて、私も参戦しようと幻夢をかまえる。


「お前は私の側から離れるな」


「何これっ!?」


 参戦しようとした動きを抑制するように、エルネストは私の周囲を硝子に似た結界で囲んでしまう。


「竜王の狙いは我等や王子を喰うことではない。ラクジットの体と魔力だ。此方が隙を見せれば、直ぐに奪われる。お前が奪われたら、数年かけた全ての計画が水の泡だ。それに、闇に堕ちた竜の執着は凄まじい。完全に消滅させなければ竜王は骨になっても執念でお前を求め、地の果てまで追いかけてくるぞ」


「そんなこと......あっ」


 とあるスチルを思い出して、私はハッと息を飲んだ。


 ゲームのバッドエンドの一つに、倒したと思っていた暗黒竜が半年後にドラゴンゾンビとして甦り、油断しきっていたヒロインが喰われてしまうといった悲惨なものがあった。

 腐敗した肉や鱗は崩れ落ち、一部骨が剥き出しになったグロテスクなドラゴンゾンビのスチルを思い出して、私の背筋が寒くなる。

 そんな状態になってまで生にしがみつく国王の執念と復讐を果たそうとする怨念が恐ろしい。


「で、でも、守られているだけなんてっ」


「先ほど言ったはずだ。補助をしろと。ラクジットの魔力は竜王の糧となるが、逆もしかり。竜王の魔力はお前には届かない。補助役に徹していろ」


「......分かった」


 有無を言わせないという、エルネストの迫力に私は渋々頷いた。


 ラスボス戦で守られているだけなんて、貴重な光属性でも光の攻撃系魔法が使えず、他の魔法も威力が中途半端なため補助に徹していたヒロインと同じじゃないか。

 モブでも生け贄でも、メインキャラのアレクシスやカイルハルトと一緒に戦うことをずっと目指していたのに、守られるだなんて。

 味方キャラのやる気とランダムでステータスを向上させる“応援”コマンドが無い分、ヒロインよりも役に立たないとは......私は下唇を噛んだ。



 ドォンッ!


 竜の尻尾による強力な凪ぎ払いで、すり鉢状の壁が崩壊する。

 凪ぎ払いを避けたカイルハルトはドラゴンスレイヤーを一閃させ、暗黒竜の背中を真一文字に斬り裂く。


《おのれぇっ!》


 攻撃をしたカイルハルトが着地する瞬間を狙い、炎を吐こうと暗黒竜は大きく口を開いた。


「ホーリーソード!」


 聖なる光を収束した剣を具現化させたアレクシスは、暗黒竜の顔面目掛けて聖剣を振り下ろした。

 聖剣による攻撃と自らの炎に口腔内を焼かれるダメージに、仰け反る暗黒竜へ向けてエルネストは多重魔方陣を展開させていく。


「グラビティブラスト!」


 多重魔方陣により磁場の乱れと重力エネルギーが暗黒竜へ襲い掛かり、大きく床が陥没しメリメリと巨体が軋んでいく。

 防御無視の重力による攻撃魔法。鋼鉄より硬いとされている漆黒の鱗が、バリンッ!と音をたてて割れていった。

 割れた鱗の間からは肉が覗き、真っ黒な血液が流れ出す。


《ぐぅ!ゆるさんぞぉ......!!》


 押し潰さんばかりの重力に逆らい、血を吐きながら暗黒竜は魔法を解除しようともがく。

 魔法を展開させているエルネストの表情が歪み、頬を汗が流れ落ちる。


 加勢したくとも、下手に近付けば魔法に巻き込まれ重力に押し潰される。

 鱗の間から流れた真っ黒な血は、靄のように暗黒竜の全身を霞ませていく。


「っ!?」


 怒りに染まった真紅の瞳が此方を射殺さんように見たのに気付き、嫌な予感に私は全員を守る防御壁を張ろうと詠唱を開始した。


《ぐがぁぁあー!!》


 憤怒の咆哮と共に、暗黒竜の背中から一対の翼が広がる。


 爆発した強大な魔力はエルネストの多重魔方陣を弾き飛ばし、半円型に広がっていく。

 触れるもの全てを焼き尽くす爆発の熱量に、不完全な詠唱のまま私は防御壁を発動させた。


 迫り来る炎に私は閉じそうになった目蓋に力を入れて、よろめいたエルネストの前へ立ち両手を広げる。

 魂を完全に同調できるくらい似通った魔力ならば、これくらい可能なはずだ。



 ドカーン!! ガラガラガラ......!!


 暗黒竜が放った魔力衝撃波により、轟音をたてて地階の天井は崩れ落ちていった。


“応援”コマンドは、「頑張って!」「負けないで!」ってヒロインが応援して、相手の新密度によってやる気とステータスが上がるっていうやつです。

戦闘描写が難しい...


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