表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラスボスの生け贄へ転生した私が足掻く話  作者: えっちゃん
4章 生き延びるための戦い
42/99

03.新たな破滅フラグ

途中で視点が変わります。

 ふと気が付くと、クリーム色の霧に包まれた広い空間に私は立っていた。


「此処は夢の中?」


 うーんと唸って私は寝る前のことを思い出す。

 昨日は、アレクシス王子の生誕祭用のドレスと装飾品選びのため、着せ替え人形にされたせいかベッドに入って直ぐに寝てしまったのだ。


 何故か、リズリスまで侍女達と一緒になってあーでもないこーでもないと何度も着せ替えさせられて、疲れたしセクハラされまくった。

「もっと寄せ上げて」と言いながらむぎっと胸を触られ、掴まれた時は、悲鳴と共にリズリスの足を思いっきり踏みつけてやったが、その後もベタベタ触ってきたことから彼はエムッ気のある変態なんだろう。

 美容に詳しいエムッ気騎士にロリコン気味の騎士......ヴァルのことは大好きだけど、私が幼女の頃からの行動を思い出してみて客観的に考えたら完全アウトだ。抱っこは兎も角、頬擦りにキスするって護衛騎士や過保護カテゴリーじゃなくてロリコン枠にはまると思う。

 二人と同じ黒騎士でまだ会ったことがないダリルは、ゲーム画面では見た目で筋肉隆々な屈強な戦士タイプの男性だった。

 彼に育てられたアレクシスは真っ当な考えを持っているから、ダリルは黒騎士の中でも常識人だと信じたい。




「......ジット」


 思考の淵にはまっていた私は、自分の名を呼ぶ声に弾かれたように顔を上げた。


「アレクシス?」


 声の主の名前を呼べば、クリーム色の霧は一ヶ所に集まり人の形となっていく。


「ラクジット」


 完全に霧はアレクシスの形となり、彼はくしゃりと笑って腕を広げる。

 笑顔で駆け寄る私を、ぎゅっと抱き締めた。


「すぐに来れなくてごめん。やることが多くて身動きが取れなかったんだ。おまけにリズリスが離宮の結界を張り直したから、侵入するのに時間がかかってしまった」


「アレクシスは王太子様だし、国王代理だからしょうがないよ」


 腕を伸ばして私もアレクシスを抱き締める。


 腕をしっかり伸ばさないと抱き締めにくくなったアレクシスは、もう自分より肩幅は広くなり20㎝近く背が高くなっただろうか。

 顔に当たる胸や抱き締める腕は鍛えられた筋肉が付いていて、私は首を動かすと上を向いて双子の片割れを見た。

 光の加減で私の銀髪は白にも見える白銀色だが、彼の銀髪は少しだけ暗く銀鼠色、シルバーグレイに近い色で、切れ長の目は蒼色というより碧色。

 顔の造作は似ているのに、双子でも色合いが僅かに違うため一見すると双子には見えない。

 以前は体つきも顔立ちもよく似ていたのに、二年前くらいから急に彼は背が伸びてきたのだ。


「まさか私が王太子妃候補とか、吃驚したけど......国王のお妃候補よりはマシかな?」


 苦笑いで言うと、アレクシスはばつの悪そうな表情になる。


「カルスト、宰相から提案された時は俺も吃驚した。国王派の奴等を欺きやすいからって言われて了承したけど、ラクジットは嫌だった?」


「ううん。吃驚しただけ。アレクシスに代替わりした時のために私を王太子妃にするってことなら、今の国王の状態はかなり悪いの?」


 三年半、国王は体を維持するために眠っているくらいだ。出来ることなら、今すぐ代替わりしたいだろう。


「そうみたいだな。ずっと冬眠させるのも肉体が崩壊するから、今回覚醒させるみたいだな。一旦起こして、俺が成人するまでの期間で徐々に魂を馴染ませ何れ肉体を乗っ取っるつもりらしい。今の体は不安定だから、一気には乗っ取れないみたいだ。母上のお陰だな......」


「アレクシス?」


 俯いたアレクシスが泣き出しそうに見えて、私は彼の頬へと指を伸ばした。


「不安なの?」


 問えば、私を抱き締める腕に力がこもる。


「不安、恐いんだ。国王が冬眠前、暗黒竜化した姿を俺に見せたんだよ。真紅の目をした暗色の竜で『早く成長しろ』と地響きみたいな声で言われた。あの時は、体の震えが止まらないくらい恐かった。覚醒直後に倒さなきゃ、体を乗っ取られてしまうのに戦うのが恐い。情けないだろ?」


 自嘲の笑みを浮かべたアレクシスの全身が小刻みに震える。


「一緒に足掻こう。私と貴方はある意味一心同体でしょ。アレクシスが乗っ取られたら私も終わりだもん」


 頑張ろう、とにっこり笑えば少しは落ち着いたのかアレクシスの震えは止まった。

 アレクシスの背中を撫でていた手を離し、私は腕組みをして唸る。


「近親相姦のバッドエンドだけは避けたいし。親子、兄妹近親相姦エンドとか、エロゲというか鬼畜ゲームのジャンルじゃない。このゲームはそんなのじゃなかったと思うけどなぁ。現実とゲームは違うとは分かっているけど」


 今やこの世界はゲームの世界とは考えてはいないが、モブキャラだった私が足掻いてイレギュラーの動きをしたから、ゲーム設定の内容と変わってきたのかも。

 確か、ゲームの年齢制限はR15、しかし今の状況はR18は越えている気がする。


(あれ?)


 そこまで考えて、私は首を捻ってしまった。

 ずっとアレクシスが次期国王の器として狙われている、と思っていた。国王は男性だから彼が狙われている、と思い込んでいたのだ。


(私も国王の、竜王の血を受け継ぐ王女だった。私も器の資格があるんじゃあ......それとも栄養剤になるとか?)


 下手したら栄養剤代わりで暗黒竜に喰われるか、体を乗っ取られる可能性があることに気づいた。悲鳴を上げなかったのは、自分を誉めてやりたい。

 死亡、破滅フラグが更に増えた気がして、私は身震いする肩を抱き締めた。




 ***




「鬼畜、か......」


 顰めっ面で腕組みをしているラクジットを見詰めながら、ポツリとアレクシスは呟いた。


 前世の記憶が甦った後、ラクジットを探したのは双子の片割れだからじゃない。自分と同じくらい危機に瀕した仲間を探したかったから。

 探し当てた後、彼女の前世は同じ国で似た時間軸を生きていた転生者と分かって嬉しかった。自分と同じ存在、裏切らない存在がやっと出来たと歓喜していた。

 だが、今では彼女が自分と全く違う存在だと分かる。


 ラクジットを見ていると、訳の分からない感情が沸き上がって来るのだ。

 竜である国王への恐怖や、守ろうとしてくれた母上に対する情とは違う感情。


 “この雌を、欲しい”


 暗黒竜を見た瞬間、弾けるように目覚めた自分の内に存在する竜が、時折贄を欲しいと囁く。

 贄を口にしたら戻ってはこれまい。

 暗黒竜の干渉は、本性を自分に見せつけた11歳の時より始まっている。

 竜の血が強い魔力を持つ女を求めているのか、同じ血を持つラクジットを求めているのかは分からない。

 喰らいたくなる衝動は理性で抑えられるが、感情は年月を重ねるにつれて抑えられなくなってきていた。


(ラクジットを妃に据えてもいい、と少しでも思っていると知られたら、全力で逃げ出すかな)


 それとも、優しい彼女は戸惑いながら自分を受け入れてくれるのか。



「どうしたの?」


「いいや」


 胸に渦巻くどす黒い感情を知らないラクジットは、不思議そうに見上げてくる。

 形の良い唇は赤く色付き、僅かに突き出しているのは「食べて欲しい」と訴えているように錯覚してしまう。


(ラクジットは、妹だ。だが、もしも双子の妹だと知らなかったら? 互いの関係を知らず、俺の妃候補として出逢っていたら......)


 迷うことなく愛を請う言葉を囁いていた?

 否、この感情の意味は、全ての決着を付けた後考えればいい。

 

 それよりも、アレクシスが成人するまでの三年間で国王の体が保てなくなったら、暗黒竜は確実にラクジットを喰らうか彼女の体を奪うはず。


「そんなことはさせない」


 全く親類の情など抱いても無い父親にこの身を乗っ取られるのも、体を維持するための繋ぎとして大事な妹が暗黒竜に喰われるのを回避するため、生き延びるため足掻く、ただそれだけだ。



アレクシスの竜王の血を目覚めさせたのは国王です。

暗黒竜の力に干渉されて、ラクジットを意識していると思いたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ