ファンタジーショートショート:嬉しくないチート転生物語
「俺は死んだのか・・・?」
「はい。そして魂の状態となって今私の前に居るのです」
真っ暗な空間の中で青白い炎と眩い光に溢れた人型とが対峙していた。青白い炎は生前、事故によって亡くなった青年の魂。そして人型は神と名乗った。
「死んだらどうなるんだ?やっぱり天国とか地獄とかあるのか?」
「申し訳ないのですが、そのような場所へは連れて行きません。貴方にはとある世界へ転生してもらいます」
いきなり生まれ変わるという話に驚く青年。
「なんでまた?事故で死んだとは言え自分がそんなに特殊な人間だったとは思えないのだけれど?」
「貴方は生前とあるオンラインゲームをやっていましたね?それが理由です」
「ますます話が見えないな?」
「まぁ貴方はそのゲームの世界ではそこそこの強さを持っていたでしょう?そのステータスをそのまま今の貴方に移し変えて差し上げます。これ以上の話は転生してからご説明しましょう」
言うが早いかあっと言う間に青年は見知らぬ草原に立っていた。
「転生したのか?」
「その通りです。そしてゲームの環境そのままですので念じればステータスやら持ち物も見れますよ?」
その通りにしてみると確かに自分がゲームしていた時のステータスや持ち物がそのままにしてある。
「おぉ!これは凄いな。と言うかこのステータスってこの世界でも通用するのか?」
「勿論です。貴方の強さは、この世界のモンスターならあっと言う間に蹴散らせる位ですよ」
それを聞いて上機嫌になる一方で神の考えている事が、段々分かってきた気がした。
「・・・わかったぞ!つまりこの力を使って世界を救え!とか?」
「うーん半分当たりですかね?」
その微妙な回答に首をかしげる青年。
「まぁその答えは街に迎えばすぐ分かりますよ」
こうして青年は神に誘導されながら街へ辿り着いた。
「この街に何があるんだ?」
「よく見てください。ほらあのおじいさんの杖代わりについている物とか」
ぼんやり立っている老人の杖を見やる。そしてそれを見た途端青年は、震えだした。
「どうゆうことだ・・・あれは昔期間限定クエストでしか貰えなかった剣じゃないか!俺もあのクエストは途中で挫折したというのに・・・」
「つまりあの方も元プレイヤーなのですよ」
「何だって!?」
「それだけではありません。この世界の住人全てが同じオンラインゲームをプレイしていた方達なのです」
その事実に驚いて言葉が出ない青年。
「何故半分正解なのかと言うと貴方だけでなくこの世界全ての人の力でこの世界を救って欲しいのですよ」
「つまりこの世界にも脅威となる何かがあると?」
「まぁぶっちゃけると魔王なのですがね?ただ魔王の出現率が尋常じゃないのです。1時間に1回くらいのペースなのですよ」
「なんだそのハイペース!」
「でも貴方達の力なら剣の一振りで瞬殺出来るレベルなんですけどね」
「それ・・・本当に魔王か?」
「貴方達の力が本当にチートなのですよ」
「私があちこちの世界を創った時に出た不純物とか切れ端とかを一まとめにしたらとんでもない世界になってしまいまして。そんな魔王がばんばん出てくる世界とかやだなーと思っていたら貴方達の魂が上手い事チート転生できることが分かりまして、それならこの世界で生きてもらう代わりに片手間で魔王を倒して欲しいななんて思いついたのですよ」
それを聞いた青年はげんなりする。
「結局は、神様の出したゴミ処理みたいなもんか?」
「まぁそう言わないで下さいな。第二の人生ですよ!しかもチート!」
「皆チートだけどな・・・」
「まぁ魔王さえ倒してくれれば後はどうなろうと良いのです!貴方も楽しんで下さいね!」
そう言うが早いか神は、あっと言う間に消えて後は青年が残されるだけとなった。
「どうしようかな・・・」
この後青年はゲームでも行っていた釣りをしながら魔王を討伐することとなる。
「釣竿の一振りで消滅する魔王ってどうよ?」