01もしも・・・
00もしも
あなたは、童話が大好きですか?
まず、お姫様がいますよね。
そしてお姫様は悪い魔女によって呪われてしまいます。
かわいそうなお姫様に救いの手を差し伸べたのは
そう、素敵な王子様。
勇敢でかっこいい王子様は悪い魔女を倒し、
お姫様と結ばれ幸せに暮らしました。
王子様とお姫様が表れる童話はだいたいこんな感じですよね。
さて、私たちの知らないその後の話だとどうなっているのでしょうか。
幸せに暮らしていたということは、子宝に恵まれ誰もが羨む結末でしょう。
どちらかが死にそうな時はこう言っていると私は思います。
「生まれ変わったら、また・・・結ばれようね。」
では、前置きはここまでにしましょう。
ここから本題です。
もしお姫様と王子様が生まれ変わった姿を見て本当に結ばれるのでしょうか・・・?
もしお姫様の生まれ変わりが男だったら?
もし王子様の生まれ変わりが女だったら?
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01
咲いたばかりの桜は、新学生の門出を祝う。
今年もこの学校では毎年恒例の部活勧誘が始まっている。
あぁ今年も元気な声が聞こえるなと、桜は少しずつ散ろうとした。
そんな桜を背景に先輩たちの大きな声が聞こえる。
「夢は甲子園!野球部!」
「夢いっぱいの美術部!」
「一緒に心も鍛えよう剣道部!」
「流行りにのってバスケに入ろう!」
「高校生活は音楽で青春しよう。軽音楽部」
などなど、個性豊かなキャッチコピーとともに部活勧誘の声が響く。
渡すチラシは数多く、数枚風に乗って地面にゆっくりと降りる。
新学生たちはこれからの青春に心躍る。
これから恋人ができて、それから友達とたくさん遊んで、バイトもして・・・
などなど色々と話し声が聞こえる。
皆、これからの青春に期待をしていた。
この中で一人の少女もこの学校に入学していた。
高校になり立てということで、まだ中学生と間違えられてもおかしくない幼い顔立ち。
身長は少し低いぐらいで・・・まぁ、俗に言う普通の女子高生だ。
彼女は剣道部のチラシしか手に入れてなかった。
ここにに入る!
その決意が彼女の目ではっきりとわかる。
今日はただのプレゼン。
一週間のあいだは仮入部ができるが、意志の強い子は翌日に入部が可能である。
彼女は明日剣道部に入部する気満々であった。
軽い説明を終了し、彼女は真っ直ぐに家に向かう。
しかし、それが彼女の運命が変わっただなんて、
だれも分かっていない。
時間が経ち部活の時間となった。
大半の一年生は仮入部ということで、いろんな部活に参加をする。
だけど彼女はウキウキとした顔で剣道部に入部手続きに行く。
「え?!私入部できないのですか!?」
「できないというか・・・君違う部活に入部になってるよ」
「きっと何か誤解ですよ!名前が違うとか・・・」
「いや君の苗字が少し珍しいから、同じ人はいないと思うけど・・・」
入部手続きでは学校のネットワークで管理されている。
顧問の権限で入部・退部が決まる。
他の顧問が違う部活に勝手に入部・退部などはできないのだ。
学校では掛け持ちを禁止している。
掛け持ちしていないかどうか確認をするため彼
女の名前を検索すると、既にどこかの部活に入部していることがわかった。
もちろん何かの間違いだと思う両者は、その部活に行って確認をしなくてはならない。
渋々彼女はその部活に行くことにした。
その部活は『演劇部』出会った。
普通の演劇部かと思ったら、
実は何もしていないのでみんな本当にあるかどうか謎の部活と言っている。
それでも部室の存在があるため、彼女は渡された地図を見ながら部室に向かう。
現在その部室前だ。
「はぁ・・・どうしてこうなったのかな・・・しつれいしまーす」
ゆっくりとドアを開くと、そこには男性5人と女性1人座っていた。
全員綺麗な顔立ちで、彼女は息を飲む。
(綺麗な顔・・・なんだろう、私この人たち知っているような気がする。)
一瞬見とれ、なぜか懐かしみ本来の目的を忘れてしまうところであった。
すぐに我に戻り、このままじゃ演劇部に行かされると思い、すぐに本題を出す。
男性たちは指定の制服を来ていたが、女性は赤と黒のミニスカスーツを着ていた。
きっと女性は顧問であろう。
彼女は女性の顔を向ける。
「あ、あの!何かの間違でこの演劇部に入っていることになっているのですが・・・
先輩たちに申し訳ないのですが・・・そ、その退部・・・っていうのできます・・・か?
違う違う!退部させていただきます!」
あまりにも緊張していたのか、彼女は廊下に響き渡る大きな声。
言い切って少し落ち着いたのか小さなため息が出た。
とりあえず何かの手違いということを説明が付いたため、彼女は部室をさろうとした。
すると後ろから誰かが拍手をしてきた。
あのメンバーの中で唯一の女性だ。
「ふふふ、なかなかの大きな声ね。
これぐらいだったら体育館で大きく響くわ」
「あ、あの・・・何のことですか?」
「え?合格よ。あなたこれから演劇部の仲間っていうこと♪」
・・・い、意味わかりません
言葉を出さずオーラで態度を取る。
だけど女性の性格はマイペースなのか、だんだんと彼女に近づきドアを締める。
そして先程までいた席に戻る。
「あのっ、私剣道部に入部したいのです!」
「え~もったいな~い」
「もったいないじゃなくて!」
「あぁ!運動部に入ったからこんなに大きな声が出せるのね!」
「そうですけど・・・じゃなくて!!!いいかげんにしてください!!
先生のワンクリックだけでいいですから!」
「やーだー!」
話にならない・・・というか、話のキャッチボールができていない。
彼女は諦めて男子生徒に視線を送る。
緑のネクタイということは一つ年上の先輩たちだ。
助けて欲しいと願うが、男子たちは只黙っただけだ。
むしろ彼女をじぃっと見つめているだけで、何も言おうとしなかった。
こうなったら他の先生に説得してもらおう。
そう判断した彼女は再びドアを開こうとした。
だが・・・
「・・・・・・・・・あれ?あ、開かない!」
さっきまで簡単に開いたドアは鍵でもかかっているのかビクともしなかった。
彼女はすぐに鍵を見るが、鍵はしていない。
(も、もしかして・・・入部しないと帰してくれないってこと!?)
これはこれで大問題だ。
まぁ自分が外に出ることができたら、今回のことを他の先生に言うつもりだ。
流石にこれはやりすぎだろう。
「いいかげんにしてください!
これで入部してくれると思っているのですか?!
それに私は昔から剣道していたのですよ!
だからこっちに入学したら絶対に入ろうって思ったのですよ!
今なら誰にも言いませんから、早く出してください!!」
私は本気です!と近くになった棒をもち睨みつける。
「あらあら」と女性が困った顔をせずにフーンとした顔で彼女をみる。
いくら男性たちが多くても彼女は負ける気は全くなかった。
「あなた、相変わらずあなたは正義感強いのね~」
「え?」
『相変わらず』というのは、つまり昔から知っていることになる。
ふたりは今日初めて知ったのに、なぜ女性は彼女のことを知っているのだろうか。
彼女は記憶をフル回転して女性のことを思い出そうとした。
しかし思い当たることは何一つなかった。
「そりゃそうよー、今のあなたじゃないんだからね~」
「・・・あの、なんなのかさっぱりわからないのですが・・・」
「うーん、それもそうよねー
でも無理やり思い出させたら混乱しちゃうから、あえてこのままにしてあげましょ」
「だからなんのことですか!!!」
「まぁいいわ。そろそろ棒をおろして頂戴。話はそれからにしましょ。
若王子 実果子さん♪」
彼女の名前を言い終わったあと、女性の人差し指が少し動くと
実果子が持っていた棒が自動的に落ちた。
強く握り締めたのにどうして?と実果子は不思議に思う。
「まだわからないの~?まぁいいわ。
それよりお互い自己紹介しましょ♪
私は馬路 夜恵。この演劇部の顧問よ。
さて、あんたたち!この子に自己紹介しなさいよ」
馬路という先生に言われ男たちはやっとか・・・という解放されたような顔をしていた。
どうやら実果子と馬路との会話が少し退屈だったようだ。
「私は 細雪倫一。演劇部の部長だ」
白い肌に艶やかな黒髪。
赤い瞳によく映えるグレーのシンプルなメガネ。
チラッと実果子の顔を見てすぐに視線をそらす。
「僕は灰原玲司と申します。副部長ですが衣装係です。」
金色のウェーブで優しそうな顔立ち。
ニコニコと嬉しそうな声はまるで祝福してるかのようだった。
育ちがいいのか、年下である実果子でも敬語で声をかける。
「自分は文月帝。シナリオ担当だ」
倫一同様黒髪だが、光が照らすと紫の光が見えた。
ムスっとしていてこの中で唯一実果子を睨んでいた。
月のような黄金色の瞳はどこか悲しんでいるように見えた。
「俺は宝塔ルイス。背景担当なんだ♪」
続いてはこの中で一番背が高い男であった。
顔立ちは日本人離れをしていたため、もしかしてハーフかもしれない。
しかし背の高さもそうだが、男性でこんなに長髪が似合う人は初めて見る。
「ボクは魚月泡・・・音響担当・・・」
前髪で半分顔が見えない。
すこしおどおどしていたが、なぜか頬を赤く染めている。
全員自己紹介が終わる。
「だから?」と実果子は夜恵に聞く。
「あら、何も感じないの?やっぱり複数いたら気づかないものねー」
「あの・・・・だからどうしたっていうことですか?」
「しょうがないわねー。ほら、あんたたち彼女に思い出して欲しいなら自分たちから言いなさいよ」
「全く、これだから結婚ができないんだよ」
「何か言った?お・ひ・め・さ・ま」
「は?」
何を言っているんだこの人は・・・と哀れんだ視線を送る実果子。
たしかに綺麗な顔立ちの彼らだが、どう見ても男である。
もしかして・・と思ったら全員男の声であるから間違えることはむずかしい。
「いいから!あんたたちが言わないならあたしから言うわよ!」
「・・・先生は黙ってて」
「とうとうこの時が来たというわけだ」
倫一と言われた男はため息なのか、深呼吸なのか大きく息を吐いた。
「私は白雪姫の生まれ変わり」
「僕はシンデレラの生まれ変わりですよ」
「自分はかぐや姫の生まれ変わりだぞ」
「俺はラプンツェルの生まれ変わりだ!」
「ボクは人魚の生まれ変わりなんだ」
「・・・・は?」
実果子は当たり前の反応を出す。
はじめて出会う男たちが、みんな知っている童話のお姫様の生まれ変わりと言い出す。
何なんだ・・・この部活は。
厨二病を通り越して何か違う方向ではないか。
実果子は頭を抱えて混乱した頭を整理する。
「それで、私と先輩たちとは何の関係がありますか?」
「ん?決まっているじゃん」
ニコニコと笑うルイスに実果子はまさか・・・と冷や汗を出す。
全員人差し指で実果子を指す。
「「「「「前世は王子」」」」」
「ん?いや、自分の場合は帝か」
「え・・・・う、うそだあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「あら、言い叫び声ね~♪」
さらに混乱する実果子。
そんな彼女を見て笑う夜恵であった。
「いや、本当よ~
たしかにあなたは物語で表れる王子様の生まれ変わりなの」
「なんで先生が知っているのですか!」
「だって私がそうしたの」
「はぃ?」
ようやくキャッチボールが出来たと思えばわけのわからない幻想なことを言い出す。
夜恵はにやっと笑い出す。
「だって、私魔女だもの。
あ、かぐや姫の場合は月からきた使者なのよ♪」
「え、いや・・・もうやめてくださいよ・・・わたし、本当に剣道がしたいのですからぁ・・・・」
たくさん混乱してしまったのか、実果子はゆっくり床へ座る。
実果子の目からは大粒の涙が流れてきた。
「からかうのやめてくださいよ・・・
なんで私にこんなことをさせるのですかっ」
ひどい人たち。と実果子はこれから先の高校生活が恐ろしく感じていた。
すると実果子の前にあの五人がたっていた。
今度はなんてからかわれるのだろう。
あぁ私の高校生活はどうなってしまうのだろう。
最初に声をかけたのは玲司であった。
「ごめんなさい。こうなるっていうのわかっていました。
だけど僕たちは真剣なのです」
「・・・」
「君の気持ちもわかるよ
俺たちだって前世はあの有名なお姫様だもんね」
ルイスは視線を実果子に合わせてしゃがみ、彼女の頭を優しくなでた。
男らしい大きな手に包まれ、ほのかに暖かさに少し落ち着く実果子であった。
視界から一枚のハンカチが表れる。
どうやら持ち主は帝であった。
「ふん、おまえの泣き顔は見飽きた。
いい加減涙を止めろ」
「まぁたしかに性別変換されているから不思議な感じだよね」
うなづく泡はポケットから一つの飴を実果子に渡した。
少しは落ち着いてくれるかなという彼の良心だ。
「まぁたしかにやり方は強制で申し訳ないが、
そうでもしないと私たちとお前は出会えなかった」
「だから馬路先生に頼んでここまでやっていただいたのです」
「先輩・・・」
「といっても馬路は退部させる気はないらしい。悪いが諦めろ」
「ですよねー・・・分かりました。私諦めます。」
こうなれば幽霊部員になろう。
そして剣道の道を一度中断しよう。
そう考えていたら、夜恵が突然立ち上がってきた。
「あのね、今度定期演劇することになっているんだけど、その日から自由になるっていうのどう?」
「え?」
「この子達はね、前世の記憶が蘇った時からあなたを探していたの。
ようやく見つけたと思ったら混乱しちゃって別れちゃうでしょ?
そう考えたら彼らの思いがかわいそうでしょ?
だったら猶予っていうことで、
少しのあいだここで部活をしたらどう?
もし定期演劇までに思い出せなかったら演劇部をやめるっていうこと
どう?」
最初っから夜恵が仕組んだこと。
でも実果子は少し悩み始めた。
もし仮に本当のことだったら?と自分に聴き始めた。
確信となる証拠は何ひとつもない。
彼らは演劇部。
演技をしている可能性だってある。
だけど彼らが嘘をついているような目になっていない。
もしかしたら本当かもしれない。
夕暮れが部室をオレンジ色に染、遠いところからカラスが鳴く。
目の前のグランドに運動部の叫び声がだんだんと小さくなっているような気がする。
初めて彼らを見たとき、
一瞬だったのが長い時間と同じ感覚に陥る。
実果子は再びその感覚が蘇ってきた。
一分がまるで一時間のようだ。
そして、実果子の口が小さく動いた。
「はい」
はじめまして。
初めての投稿をさせていただきます。
この物語は作者の暴走という名の趣味を詰め込みます。
こういった乙女ゲーが発売されないかな~とか妄想しながら物語を進んでいこうと思います。
ここまで見ていただきありがとうございました!
誤字・脱字などございましたら・・・は・・・恥ずかしい・・・・////