飛び上がり自殺
廃れた荒野で、その風景とは不似合いな巨大ロケットが発射しようとしていた。
「俺達が最後だ、さぁ乗ろう」
ロケットの入口には二人の男女がいた。
どちらにも生気は感じられない。
「本当に、このロケットで宇宙に行けるの?」
彼女は誰も分からない疑問を彼に投げかける。
彼も反応に困ってそのまま立ち尽くしている。
「宇宙には行けないかもしれないかもしれない。でも、こうする以外にはどうにもできない」
この世界はもう人間が住めるような場所ではなかった。
科学の発達と共に様々な技術が生まれていった。
だがある日世界に人々の体を徐々に機能停止にする強烈な毒が拡散された。
それはあっというまに広がり、人口はもはや町一つで収まるくらいの規模になっていた。
そこで行われたのが、宇宙逃避。
成功確率は半分にも満たなかった。
「ここで死んでいくなら、俺は僅かな可能性にかけたい。君ともっと一緒にいたいんだ」
彼の答えに彼女は納得できなかった。
彼女は彼の手を取らずに元きた道を走っていってしまった。
勿論彼も追いかけた。
「全員乗ったようだな。私たちが人間の最後の生き残りだ。生きよう。生きて再び地球に戻ってこよう」
風格のある男がそう言うと、ロケット発射のカウントダウンが始まった。
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爆音と共にロケットは発射した。
「終わりだ。私はこのまま宇宙にいって空腹で苦しく死にたくはない」
風格のある男の突然の告白に、人々は何も言えなかった。
「私たちが暮らしてきた地球と共に、散ろうではないか」
ロケットは花火のように青空で爆発した。
「俺たちが、本当に最後の生き残りだな」
「このまま廃れて行くのも、案外悪くないかもね」
彼と彼女はそう言って手を握り合った。