夏が終わる
「もうすぐ、夏が終わるね」
8月下旬。
彼女と俺は夕暮れに染まる川原に居た。
「夏の終わりは、寂しいね」
彼女は、毎年8月の終わりにそんな事をつぶやく。
そんなくせに、彼女は夏が嫌いだといった。
「だって、夏って暑いし、ムシムシして嫌じゃない?」
そういうと赤く染まった川に石を投げ入れ始めた。
だったらなんでそんな悲しそうに夏が終わるなんて言うんだ。
なんて、無口根暗で通っている俺には言えない。
「夏は嫌いだけど、なんでか夏の終わりは、寂しいんだよね」
彼女の横顔はとても悲しそうに見えた。
「君は、去年から何も変わってないね。相変わらず、無口で、近寄るなオーラだしてるし」
クスクスと笑い俺を小馬鹿にして言う。
そうだ、俺はあれから、あの夏の終わりから何も変わってはいない。
でも、君もそうだろう?
「そうだね。君の言うとおり。私もまったく変わってない。去年の夏の終わりからなーんにも変わってないね」
そんな事を言って彼女はまた笑った。
やめてくれ、俺にそんな顔をしないでくれ。
「でも、君は変われるでしょ?私はもう変われないけど、君はまだ変われる。それって凄い違いだよね」
「そうだな」
俺は彼女の横に立って、適当に転がっていた石を投げた。
「…。帰ろう。また来年の夏の終わり、ここに来るよ」
8月下旬。
俺は夕暮れに染まる川原に居た。