表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

《500文字小説》葉桜の頃

作者: 十司 紗奈

 子供の頃、何度も歩いた道を歩く。住宅街ということもあり、目に入る風景は然程変わらない。通りを抜けると桜並木が続く疎水が見える。

 真新しい新緑の中で、ふと鮮やかな色が目に入った。四季咲きの桜だ。狂い咲きとも言えるが。

「……あの子ね、戻ってきているのよ」

 僕は母からそんなため息混じりの言葉を聞いた。あの子、とは僕の従妹だ。母親同士が姉妹で、近所に住んでいるので、兄妹か姉弟のように育った。何でも話せて、互いの弱さも狡さも曝け出せる相手だった。その反面、近すぎて、異性と感じたことはなかった。

 ただ、妻は従妹の存在を気にしていた。妻は束縛するのが好きな女で、携帯を勝手に見たり、連絡がつかないと、何度も携帯に電話をかけてきたりメールを送ってきたりした。自然と従妹とは連絡を取らなくなり、彼女の結婚も母から聞いたのだった。

 気疲れして、たまたま実家に顔を出した時、従妹の話を聞いて、久々に顔が見たくなった。他に理由などなかった。

 彼女は一人で家にいた。その懐かしい顔を見た時、心が安らぐのを感じた。

「……久しぶり」

 そう呟いて彼女は嬉しそうに、どこか切なげに微笑んだ。その表情を見た時、僕は思わず彼女を抱き寄せていた。


 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] うわきものーーーっ (>_<)! でも分かるなあ、その気持ち。 すっかり大人の女性になった従妹と、四季咲きの桜のイメージがぴったり重なりますね。 でも浮気しちゃダメだお (^0^)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ