第7話:棚卸しという名のダンジョン攻略
第7話「棚卸しという名のダンジョン攻略」の内容に基づいた、なろう用の前書き・あとがき案です。オーク軍団によるカレー・ラッシュが一段落し、平和を取り戻したかに見えた店内に新たな「異変」が起きる回ですね 。第7話:前書き案お読みいただきありがとうございます!前回のカレー・ラッシュで売上目標を達成し、無事に電力が復旧した「スーパー・ビッグA」 。
快適な冷房とBGMが流れる店内で、カズマたちは束の間の休息を楽しんでいました 。しかし、バックヤードの最奥に眠る「開かずの扉」が、錆びついた音を立てて開き始めます 。四半期に一度の定期イベント。それは、店長に課せられた避けては通れない試練――「棚卸し」の始まりでした。扉の向こうに広がる、悪臭漂う未知の迷宮。
果たしてカズマは、主婦の知恵(と掃除用具)だけで、この「不良在庫」を処分できるのか!? それでは、第7話をお楽しみください!
オーク軍団による「モーニング・カレー・ラッシュ」から数日が過ぎた。 スーパー・ビッグAは、平和を取り戻していた。 売上(魔石)は潤沢、エネルギーは満タン。店内は明るく、BGMの『ポポーポ・ポポポ♪』も軽快に流れている。
「ふぅ……。品出しも終わったし、休憩にするか」
俺はバックヤードで、賞味期限ギリギリの『缶コーヒー(微糖)』を開けた。
「ボス、ボス。アタイ、退屈ダゾ。魔物、来ナイノカ?」
「カズマ、暇なら私に『ポテチ』の袋を開けろ。今度は『のり塩』だ」
ミャーコはダンボールの上で爪を研ぎ、リナリスは休憩室のソファ(廃棄予定だったもの)を我が物顔で占領している。 完全に弛んでいる。
その時だった。
『ガコンッ!!』
突然、店の奥深くから、重苦しい金属音が響いた。
「ッ!? ナンダ、今の音ハ!」
ミャーコが全身の毛を逆立てて跳び上がる。
「奥だ……。『開かずの扉』か?」
バックヤードの最奥。そこには「関係者以外立入禁止」と書かれた、厳重な鉄の扉があった。 俺の店長権限(仮)でも開かなかった謎のエリアだ。
俺たちが駆けつけると、その鉄扉がゆっくりと、錆びついた悲鳴を上げながら開いていくところだった。
『ピロン♪』
頭上に無機質なアナウンスが響く。
『四半期に一度の定期イベント【棚卸し(インベントリ・チェック)】を開始します。』 『店長は速やかに、倉庫内の【不良在庫】を処分してください。制限時間は一時間です。』
「棚卸し……? 在庫処分?」
「おいカズマ、なんだあの中は……。妙な空気が流れてくるぞ」
開いた扉の向こう。 そこにあるはずの「倉庫」の姿はなかった。
代わりに広がっていたのは、薄暗く、湿っぽく、どこまでも続く石造りの迷宮――。
「……ダンジョンじゃねーか」
しかも、とてつもなく臭い。
「ギャァァァッ! クサーイッ!!」
鼻の利くミャーコが、両手で鼻を押さえて転げ回った。
「鼻ガ! アタイノ鼻ガ曲ガルゥゥゥ! コレハ、死ノ匂イダ!」
「うっ……確かに、これは酷い。生ゴミを真夏の炎天下で三日間放置したような……」
俺も思わずシャツで鼻を覆う。 だが、リナリスの反応はもっと劇的だった。
「穢れだ……! これは『腐敗の瘴気』だ! 高潔なるエルフにとっての猛毒! 嫌だ、帰りたーい!!」
「逃げるな! 『在庫処分しろ』って言われてんだろ! 行くぞ!」
俺は嫌がる二人を引きずり、その悪臭漂う暗黒空間へと足を踏み入れた。
ダンジョン(倉庫)内部は、予想以上に広大だった。 天井は見えず、床はぬるぬるとした謎の液体で濡れている。
「気味の悪い場所だ……。カズマ、私の浄化魔法でこの空間ごと消し去ってやろうか?」
「やめろ。店ごと吹き飛ぶだろ」
その時。 暗闇の向こうから、ペタ……ペタ……という湿った音が聞こえてきた。
「ボス! ナニカ来ル!」
「身構えろ!」
姿を現したのは、緑色の球体。 いや、それはかつて「キャベツ」だったものだ。 ドロドロに溶け崩れ、葉の間から濁った汁を垂れ流しながら、不気味に脈動している。
『ブシュゥゥゥ……』
「ひぃっ! オバケキャベツだ!」
「あれは……『ゾンビ・キャベツ(賞味期限切れ)』か!」
ゾンビキャベツが身を震わせると、その体からドス黒いヘドロのような液体が弾け飛んだ。
「危ない!」
ジュワッ! ヘドロが床に落ちると、白い煙を上げてコンクリートを溶かした。
「強酸性だと!? ただの腐った野菜じゃないぞ!」
「汚らわしい! 近寄るな! 『風の刃』!」
リナリスがパニックになり、杖を振り回そうとする。
「待てバカ! ここで風魔法を使うな!」
「なぜだ! 切り刻んでやる!」
「周りを見ろ! あっちには『カビだらけの食パン』がいるんだぞ! 風を起こしたら、カビの胞子が舞い散って、俺たちの肺がカビだらけになるぞ!!」
「ヒィィッ!? 想像させるな!」
「ミャーコもだ! 爪で攻撃したら感染するぞ!」
「ジャア、ドウスレバインダヨ!」
魔法も物理攻撃もリスキーすぎる。 この最悪な「在庫」を、どうやって処理すればいい?
俺は腰に下げた「エプロンのポケット」を探った。 ここに来る前、売り場から持ってきた「武器」がある。
「俺に任せろ。……主婦の知恵を見せてやる」
俺が取り出したのは、一本の細長い箱。 日本が誇る最強の封印具――『サランラップ(業務用)』だ。
「リナリス、奴の動きを一瞬だけ止めろ! 魔法じゃなくて、石でも投げとけ!」
「ええい、ままよ! くらえ!」
リナリスが足元の瓦礫を投げつける。ゾンビキャベツが怯んだ隙に、俺は疾走した。
「鮮度(動き)を……閉じ込めるッ!!」
シュバババババッ!!
俺はゾンビキャベツの周りを高速で回転しながら、ラップを引き出し、幾重にも巻き付けた。 透明なフィルムが、腐った葉を強固に拘束する。
「な、なんだその透明な結界は!? 一瞬で展開しただと!?」
「『密着・真空包装』だ! これで汁も臭いも漏れ出さない!」
俺はぐるぐる巻きにしてボール状になったキャベツを蹴り飛ばした。
「次はあいつだ! 『カビパン・スライム』!」
壁際でモゴモゴと蠢く、青カビに覆われた食パンの群れ。 胞子を撒き散らす厄介な相手だ。
「カズマ、ラップは効かんぞ! 奴らは形を変える!」
「なら、これだ!」
俺が次に取り出したのは、白い粉が入った袋。 『重曹』。
「聖なる白き粉よ……! 穢れを中和せよ!」
俺は袋を破り、カビパンに向かって粉を豪快にバラ撒いた。
シュワワワワワワ……ッ!
粉がかかった瞬間、カビパンたちが激しく発泡し始めた。
「ギャァァァ……!」(ような音)
酸性の腐敗物質が、アルカリ性の重曹と化学反応を起こし、無害な水とガスへと分解されていく。 ドロドロだったカビパンが、シュワシュワと消滅していく様は圧巻だ。
「す、すごい……! なんだその『聖灰』は! 上級神官しか扱えぬ浄化の粉か!?」
「ただの掃除用具だ! 百円で売ってる!」
「ボス、スゲェ! 臭イガ消エタ!」
俺たちはその調子で、襲い来る『液状化したトマト』や『硬度を増したフランスパン(鈍器)』を次々と処理していった。 ラップで巻き、重曹で溶かし、時には『キッチンペーパー』で物理的に吸い取る。
これは冒険じゃない。 大掃除だ。
そして、ダンジョンの最奥。 巨大な空間の中央に、それは鎮座していた。
「……デカい」
見上げるほどの巨体。赤黒く変色し、異臭を放つ肉の塊。 『キング・ロッテ・ミート(腐敗の王)』。
「グオォォォォォ……」
肉塊が唸り声を上げると、周囲の空気がビリビリと震えた。
「カズマ……あれはマズい。私の本能が告げている。あれは『疫病』そのものだ。触れれば死ぬぞ」
リナリスがガタガタと震えながら後ずさる。
「ボス……鼻ガ……モウ限界……」
ミャーコはすでに白目を剥いて倒れかけている。
ラップも重曹も、あのサイズには通用しない。 俺の手元に残された武器は、最後の一つ。
「……やるしかないか」
俺は最後の切り札を取り出した。 緑色のボトル。 パッケージには『まぜるな危険』の文字。 最強にして最悪の毒物――『塩素系漂白剤』。
「リナリス! 俺に『風』をくれ!」
「か、風? 何をする気だ?」
「俺がこいつを散布する! お前の風で、奴の顔面にミスト(霧)として送り込むんだ!」
「分かった! 信じるぞカズマ!」
俺はスプレーノズルを装着し、ボトルのトリガーに指をかけた。 狙うは肉塊の中心核。
「99.9%の雑菌を死滅させろ!! 『完全除菌』ッ!!」
プシュッ! プシュッ! プシュッ!
俺が放った漂白剤の霧を、リナリスの突風が巻き上げ、巨大な肉塊へと運ぶ。
「グォッ!? ガァァァァァァッ!!」
漂白剤が直撃した肉塊が、断末魔の叫びを上げた。 強力な塩素の力が、腐敗した細胞を根こそぎ破壊していく。 赤黒い体表が、みるみるうちに白く漂白され、崩れ落ちていく。
「とどめだ! 全量噴射!!」
俺はボトルの蓋を開け、中身を直接ぶちまけた。
ドバァァァッ!!
「ギョエェェェェェ…………」
肉塊はドロドロに溶け、やがて泡となって消滅した。 後に残ったのは、プールの消毒槽のような清潔な匂いだけ。
『ピロリン♪』
『棚卸し完了。エリア浄化を確認しました。』 『報酬として、冷凍倉庫のロックを解除します。』
アナウンスと共に、薄暗かったダンジョンの壁が消え去り、元の清潔なステンレス張りの倉庫へと景色が戻った。 そして、目の前の棚には――。
「……こ、これは」
霜降りの和牛。 新鮮なマグロのブロック。 輝くような高級メロン。 今まで見たこともない、Sランク食材がずらりと並んでいた。
「す、すごいぞカズマ! 宝の山だ!」
リナリスが目を輝かせて、和牛のパックを手に取る。
「この美しいサシ……! まるで大理石のようだ! これも焼肉にするのか!? するのだな!?」
「ああ。今夜は『すき焼き』だ」
「スキヤキ! 響きだけで美味い!」
「ボス……アタイ、マグロ……」
ミャーコもヨダレを垂らして復活している。
俺は空になったハイターのボトルをゴミ箱に投げ捨て、深く息を吐いた。
「とりあえず……掃除は終わったな」
異世界のダンジョン攻略に必要なのは、聖剣でも魔法でもない。 適切な洗剤と、家事スキルなのだ。
俺たちは戦利品(高級食材)を抱え、意気揚々と売り場へ戻っていった。 だが、俺たちは知らなかった。 このダンジョンの開放が、ある厄介な客を招き入れるきっかけになることを。
「ん? ……なんか、外から『トカゲ』の匂いがしないか?」
ミャーコが鼻をヒクつかせる。
「トカゲ?」
俺が首を傾げたその時、店の外から空気を切り裂くような咆哮が聞こえた。
『ギャオォォォォォンッ!!!』
「……ドラゴン?」
掃除の次は、害獣駆除かよ。 俺のブラックバイト生活は、まだまだ終わらない。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!異世界における「棚卸し」が、まさかのデス・清掃バトルになるとは…… 。
サランラップや重曹、そして最強の切り札「キッチンハイター」 。
日本の家庭にある便利グッズは、時としてどんな魔法よりも強力な武器になるようです 。無事にダンジョン(倉庫)の除菌に成功したカズマたちですが、この戦いの副産物として、店には「新たな変化」が訪れることになります。【次回の予告】
次回、第8話は「黒マントの正体とドラゴンの来店」 。
棚卸しで手に入れた「高級食材」に釣られて、ついに魔王軍の幹部が動き出します 。
さらに、店の前に現れたのは……生ける災害、レッドドラゴン!? 「獄激辛焼きそば」が火を噴く(物理)次回も、どうぞお見逃しなく! 面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価での応援をぜひよろしくお願いいたします!




