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ここは、ヒノデノクニの王宮。
ひとりの老婆が、祭壇を前に、白髪を振り乱しながら一心不乱に呪文を唱えている。このクニの女王だ。しわがれた声を張り上げ、何かに取りつかれたようなその表情には鬼気迫るものがあった。
やがて彼女はかっと目を開き、しばしその動きを止めた。天からの啓示があったのだ。
「どうかされましたか、姉上」
背後から声がした。弟のキグラだ。女王はゆっくりと彼の方を振り返った。その顔には、不敵な笑みが含まれている。
「機は熟した。ようやく我らの念願が叶う時がきたのだ」
「使者が動いた、ということですかな」
「そのようだ。これで計画を進めることができる」
「『このクニのために犠牲になった者は神に救われる』。連中をそのように諭し続けて送り出した甲斐がありましたな」
「嘘は言っておらぬだろう。このクニのために死んだ者は英雄だと私が認めてやる。それは、神に認められることと同義だ」
女王はニンマリと笑った。キグラも口ではほくそ笑んでいたが、彼女を見る目は虚無を見るかのように澱んでいた。女王は高らかに命じた。
「この機を逃してはならぬ。今すぐに、ヒノデノクニに兵を出すのだ」
「承知いたしました」
キグラは女王に頭を下げると、立ち上がって女王の部屋を後にした。女王の命を軍部に伝えに行くのだ。ひとり残された女王は、広々とした室内全体に共鳴するぐらい高らかな声で笑った。
「これが我々の目標達成の礎となるだろう。この地にあるクニやムラすべてを、わがヒノデノクニがまとめ上げ、この地を一つの国家にするという、大いなる野望のな――」




