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破滅の章  作者: Tomokazu
第三章
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26/41

8

 ここは、ヒノデノクニの王宮。

 ひとりの老婆が、祭壇を前に、白髪を振り乱しながら一心不乱に呪文を唱えている。このクニの女王だ。しわがれた声を張り上げ、何かに取りつかれたようなその表情には鬼気迫るものがあった。


 やがて彼女はかっと目を開き、しばしその動きを止めた。天からの啓示があったのだ。


「どうかされましたか、姉上」


 背後から声がした。弟のキグラだ。女王はゆっくりと彼の方を振り返った。その顔には、不敵な笑みが含まれている。


「機は熟した。ようやく我らの念願が叶う時がきたのだ」


「使者が動いた、ということですかな」


「そのようだ。これで計画を進めることができる」


「『このクニのために犠牲になった者は神に救われる』。連中をそのように諭し続けて送り出した甲斐がありましたな」


「嘘は言っておらぬだろう。このクニのために死んだ者は英雄だと私が認めてやる。それは、神に認められることと同義だ」


 女王はニンマリと笑った。キグラも口ではほくそ笑んでいたが、彼女を見る目は虚無を見るかのように澱んでいた。女王は高らかに命じた。


「この機を逃してはならぬ。今すぐに、ヒノデノクニに兵を出すのだ」


「承知いたしました」


 キグラは女王に頭を下げると、立ち上がって女王の部屋を後にした。女王の命を軍部に伝えに行くのだ。ひとり残された女王は、広々とした室内全体に共鳴するぐらい高らかな声で笑った。


「これが我々の目標達成の礎となるだろう。この地にあるクニやムラすべてを、わがヒノデノクニがまとめ上げ、この地を一つの国家にするという、大いなる野望のな――」

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