【これまでのあらすじ】
古代。
まだ日本が一つの国家ではなく、さまざまなクニやムラに分かれていた時代。
小さなムラがあり、人々は神を信じ、独自の文化を築きながら、平和に暮らしていた。
そこには、祈祷の力でまつりごとを行う少女・マオと、その付き人であるイチコがいた。
ある日のこと。そのムラに、近隣の大国・ヒノイリノクニの使者がやってくる。
王子・シラヌイ、王女のシラナミ、軍事担当のヒブリ。彼らを中心とした使者たちは、ムラにある要求をする。
このムラの土地をヒノイリノクニの領地とさせて欲しい――。
それは、ムラがなくなってしまうことと同義だった。
相手の要求を呑むべきか、拒否すべきか。マオや他のムラの要人たちは、容認・反対・折衷案、さまざまな見解をもって議論を重ねたが、結論はなかなか出ない。
一方その頃、イチコはヒブリの弟・トワリと出逢う。傍若無人なトワリの言動にはじめは怒りを覚えた彼女だが、やがて彼の純真さに触れ、ふたりは友人関係となり、彼がムラを去った後も文を通じた交流は続いた。
だが、そんなヒノイリノクニの使者の来訪をきっかけに、ムラはとんでもない事態に見舞われてしまう。
ヒノイリノクニの要求を呑むことに反対していたイゾウたちが反乱を起こす。ムラの長の孫・イッキにマオを誘惑したという嫌疑をかけて彼を幽閉、長もその責任を負わせる形で退任させ、自身がその座に就いてしまう。
怒ったマオは、イッキとともにムラを出ることを決意。イチコを後任の祈祷師に指名し、山へと去っていった。イゾウは兵を集め、マオの奪還に向かう。
このままだとムラが崩壊してしまう――そう予感したイチコは、ヒノイリノクニに応援を求め、ヒブリとともに馬で山へと向かった。イゾウらに先回りして、マオたちと落ち合えた二人だったが、やがてイゾウたちに追いつかれてしまう。
彼らにイッキを殺されてしまったことで、マオの怒りが爆発。これまで彼女が一手に引き受けてきたムラの負の情念が山じゅうに散らばり、山のけものたちは邪獣と化して、兵士たちを全滅させた後、ムラの方へとなだれ込んでいった。それはムラの終焉を意味していた。
そのさ中、マオもイゾウの凶刃に倒れ、命を落としてしまう。彼女の霊は悪意の化身・邪霊となって、世界をさ迷うのだった――。
ムラに還ったイチコは、生き残ったわずかな人々とともに、ヒノイリノクニの都に移り住むことを決意する。
これが、とあるムラの崩壊を描いた、『破滅の序章』である。
『破滅の序章~とあるムラの壊滅と新生の物語~』より
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