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第88話

 なぜこのタイミングでデスゴーンがやってくるのだ。


 なぜ今なのだ、なぜこの体育祭のこのタイミングで邪魔してくるのだ。


 ああ、余の邪魔しやがって。


 あともう少しだったというのに。


 このことを知っているのは余だけだ、魔法少女どもはまだ気づいていないな。


 一瞬パニックになって冷静ではなかった、余がまずやることは


「おい、デスゴーンが現れたからいつでも避難できるようにしておけ」


「え?」


 あいつが怪人化してしまったらこの学校にいる奴らが危ないからな。


「じゃあ余は行ってくる」


「え、ちょっ、無理だけは絶対にしないでよね」


 余は返事はせずに手を挙げるだけにした。


 余が無理をするはずがないだろ、余はすごいのだからな。


 落ち着け、まだデスゴーンが現れただけで佐々木が怪人化になってはいないはずだ。


 急げばまだ間に合うはずだ。


 やっぱりムカつく奴だよ、デスゴーンは。


 ガラガラッ


「お、早いじゃないか」


「またお前かよっ」


 余の目の前には憎いあいつが立っていた。


「なぁ、お前に仲間っているのか?」

 

 余が今一番気になっていることを聞く。


 こいつの返答次第では今後の動きに関わってくるからな。


「そんなことを聞いている暇はあるのか?ほら」


 デスゴーンは佐々木を指さす。


 そうだ、佐々木だ。


 佐々木の方を見ると佐々木は今まさに怪人化になりかけていた。


 スライム状のやつに飲み込まれていて、佐々木の意識は無いようだ。


「じゃあ俺様は帰るとするぜ」


 デスゴーンは佐々木を怪人化にして、やることやって帰っていった。


「くそっ」


 佐々木はまだ怪人化になりかけているだけだからもしかしたらまだ間に合うかもしれない。


 考えている暇はない、出来るか分からないが抑え込んでやる。



 ***



 俺は何の不自由のない人生を送ってきた。


 中学にあがるまでは本当に何の不自由がなかったし、挫折も壁にぶち当たることもなかった。


 中学にあがったら陸上部に入って初めて挫折や壁にぶち当たった。


 だけど、それを乗り越えていくのも楽しかった。


 当然高校も陸上部に入る予定だった。


 だが、中学の陸上を引退した時に一個上の先輩たちに誘われて一緒遊んでいたら、後々分かったのがそれが有名な不良の集団だったらしい。


 分かった時にはもう遅く、俺はいつの間にかそこの仲間になっていたらしく、仲間になったらもう二度と抜けれない。


 仲間になったら頻繁に集まるから部活に入るのを禁止されていた。


 なんだそのめちゃくちゃな決まりはと思い、不良のリーダーみたいな奴に部活はやらせてくださいと頼んだ。


 そしたら「良いけど、その脚置いていくなら良いよ」と言われた。


 そう、つまりはもうこの集団から抜けられないということだ。


 何度も抜けようと考えたけど、俺は見てしまったのだ、抜けようとした奴がどうなったのかを。


 だから、もう俺は走れないんだと思った。



 だけど、宇野に出会ってしまった。


 宇野は俺を走らせようとしてきたが、俺はその誘いを断った。


 だけど、別に部活ではないからもしかしたら走らせてもらえると思ったが、


 「確かお前って妹いるよなぁ?」

 

 と言われ、また俺はこの集団がどれだけ恐ろしいのかを知った。


 そんなことを知らない宇野は俺が断ろうとしつこく誘ってくる。


 やめてくれよ




 また走りたくなるだろ。








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