第80話
いやー、プリクラで撮った写真はスマホに入れれるのか。
まぁ悪くはなかったな、また機会があれば撮ってやらんこともない。
「時間だし次はご飯にでもする?」
「ん、そうだな」
時間を見たらもうとっくに12時を過ぎていた。
あまりにもプリクラに夢中だったから時間の感覚がズレてしまっていた。
「ご飯どこ行く?」
「まぁブラブラ歩いて適当な店に入ろう」
「そうね」
デートの場所を決めていなかったからもちろんご飯を食べる場所なんか決めているわけがない。
「あれ?」
ご飯を食べる場所を決めようと外に出ようとしていたら誰かを探している男がいた。
余の予想だが、さっきの不良を探しているのだと思う。
「誰かを探しているのか?」
「あ〜、ここにさっき六人くらいのチャラそうな人たち見てなかった?」
やっぱりさっきの不良を探していたようだ。
「外にいたぞ」
「あ、そうなんだ。ありがとう」
「ちょっと待て。お前は佐々木を知ってるか?」
「一応俺は佐々木だ」
「お前が佐々木か、良かった。なぁ体育祭に出ないのか?」
「は?体育祭?お前誰だよ」
「宇野だ」
「げ、宇野じゃねぇか」
「何だ、知っているのか」
「ということは、さっきここにいた奴らって」
ということはって何だよ、余を何だと思っているのだ。
まぁ、予想は当たっていると思うが。
「ああ、ボコボコにした」
「何やってんだよ」
佐々木は余の言葉に頭を抱えた。
「安心しろ、骨は折ってない」
「そういう話じゃないんだよ」
「悪かったな」
「軽いんだよなぁ」
「そうだ、お前体育祭に出ろよ。リレーの選手だそうだ」
やっと佐々木に出会えたし、ここで誘えれば余の仕事が終わる。
「悪い、もう俺は走らないんだ」
上手くいくと思っていたが、断られてしまった。
何だよ、走らないって、走れよ。
またなんか面倒くさいことになりそうだな。
走れないなら分かるが走らないってことはまた何かありそうだな。
チラッ
今チラッと高宮千沙の方を見た。
そうだ、余は今高宮千沙とデートをしているのだ。
「この話はまた今度にしておこう。いくぞ」
今このまま話をしていてもきっと無意味なのだろう、今の時間はデートに費やさないとな。
「え、ちょっと待って」
そして、余たちはゲームセンターから出た。
***
「ねぇ良かったの?私のことなんか気にしなくても良かったのに」
「ああ、お前とのデートの方が大切だ」
「うっ、またそういうこと言う」
そういうことってなんだよ、お前ら全員曖昧なんだよ。
「何で佐々木を体育祭に誘ったの?」
「担任の教師に頼まれたんだよ」
「断れば良かったのに」
「あいつを教師続けさせたのは余だからな、文句は言えん」
「やっぱり優しいなぁ」
やっぱりってなんだよ、やっぱりって、いつ余が優しかったのだ。
というか優しくないし。
「ねぇ、真剣な話なんだけど、頼っていいんだよ」
真剣な話と言ったから何だと思えばしょうもないことだった。
「宇野が言えば莉緒も菫もクラスのみんなも夏休みでボランティアした人たちも宇野のためなら手を貸してくれると思うよ。もちろん私も」
余はそれまで大したことをしていないのになぜ手を借りのだ、意味が分からない。
しかも、それは余のためにやっていただけでお前らのためではない。
「ふんっ、余は誰からも手を借りなくてもなんでも出来るのだ」
「無茶だけはしないでね」
「考えておく」
考えておくとは言ったがやはり他人なんか信じられるか。
余が信じられるのは余だけだからな。




