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第74話


 余が体育祭に出てしまったら誰も勝てなくなってしまう。


 そもそもこの地球上で余に勝てる奴なんかいない。


 地球上で勝てる奴なんかいないのに高校の体育祭で勝てる奴なんかいるか。


 良い勝負すら出来ないぞ。


「でも一人一種目は出ないとダメなんじゃない?」


 なんだそのめんどくさいルールは。


「何かないのかな?宇野くんが出られるやつ」


「「「う〜ん」」」


 なぜ余より真剣に考えているのだ。


 出ないってことはもう休んで良いってことだよな?


 出ないのにわざわざ体育祭に参加する必要もない。


「あ」


 高宮千沙が何かを思いついたように声をあげる。


「二人三脚があるじゃん」


 二人三脚?


「二人三脚ですか、良いですね」


「二人三脚良いね」


 二人三脚か、まぁこれだったら余の力だけでは勝てる競技ではないからな。


 だが、余が他の奴と協力するわけがない。


「二人三脚は却下だ」


「何で?」


「余はな他の奴と協力なんかしたくないからだ」


「うわっ」


 うわって言うな、高宮千沙。


「ちょっとぐらい我慢しなよ」


「余は我慢しないのだ」


「わがままだなぁ」


 何がわがままだ、余が速すぎるから相手に合わせろって方がわがままだろ。


「何と言われようと余は他の奴に合わせるなんてごめんだ」


「だったら宇野くんは体育祭どうするの?」


「休むに決まっているだろう」


「何も休まなくても」


「出番もないのに余がいつまでもいれるわけがないだろう」


 余は待てないのだ、余は5分以上待つとイライラし始めてしまう。


 だが、余が5分も待ったら偉いだろ。


「だから二人三脚に出なって」


「絶対に何がなんでも出ない」


 ***


 〜一時間後〜


「しっかり合わせろ」


「そっちがね」


 今は体育祭の練習の時間なのだが、余は今二人三脚を練習している。


 結局余は二人三脚に出ることになってしまった。


 もうダメだ、余のクラスは。


 余の意見なんか一つも聞こうとしない、余のこと完全になめているだろう。


 あと、またいつの間にかクラス委員をクビになっていた。


 いや、この余が定期的にクラス委員をクビになるのはなんなのだ?


 余が何をやったというのだ。


「余はなぜお前と組まなくてはいけないのだ」


 余の二人三脚の相手は高宮千沙になっていた。


「仕方ないじゃん、宇野と組めるのは私か莉緒か菫しかいないんだもん」


「なぜその三人なのだ」


 よりにもよって魔法少女しかいない。


「宇野を止められるのはこの三人だからだよ。で、莉緒も菫も忙しいから私になったの」


 なんだよ止められるって、余をなんだと思っているのだ。


 そして、早速体育祭に向けて練習をしているのだが、案の定上手くいっていない。


「遅いぞ」


 高宮千沙が遅いから引きずる形になっている。


「引きずってるって、止まって。昔の拷問みたいになってるって」


「仕方ないな」


 だから余は言ったのだ、余は合わせることなんて出来ないのだ。


「はぁはぁ。しんど」


 高宮千沙は膝に手をついて呼吸を整えている。


「あれ?靴ひも解けてるよ」


 高宮千沙は余の靴を指さす。


 余はしゃがんで、靴ひもを結ぼうとした。


 ?…靴ひもは解けていないぞ?


「私の痛みを知れ」


 ズザー


 高宮千沙は全速力で走りだした。


 余と高宮千沙の脚は繋がっているから余は高宮千沙に引きずられている。


「おい、馬鹿やめろ」


 これ本当に大丈夫なのか?




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