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第65話


 まさか余まで怒られるとはな。


 あの後高宮千沙と期間限定のパフェを食べて、遅れて帰って来た理由を聞かれた時に高宮千沙がバカ正直に言ってしまい、共に怒られてしまった。 


 高宮千沙は部員だから怒られるのは当然なんだがコーチである余が怒られるのは違う気がする。


 高宮千沙は軽く怒られただけなのだが、余はなぜかしっかり怒られてしまった。


 いや、余が行きたいと言ってしまったのが悪いかもしれないが。


 しかも、それを全部高宮千沙が話したのだ。


 お前は味方であってくれよ。


 教える立場である余が怒られたら示しがつかない。

 

 まぁそんな過去のことはどうだって良い、余は今を生きているからな。


 バレー部のコーチを終え、次のボランティアの場所は演劇部に場所を移した。


「すみません。誰かこっち手伝ってください」


「今行く」


「宇野さん。こっちもお願いします」


「分かった」


「ここ誰か来てください」


「余が行く」


 演劇部の大道具は基本手作りらしく、時には自分たちより大きな物を作るから余の力が必要らしい。


 だから余は色々なところから引っ張りだこなのだが


「宇野さん。手を貸してください」


「分かった」


「宇野さん。今すぐ来てください」


「ああ」


「宇野さん。とりあえず来てください」


「あ、ああ」


「宇野さん。何も無いですが来てください」


「おい」


 何回も何回も九重菫が余を呼んで大道具に集中出来ない。


 しかも、呼ぶ理由がしょうもないのである。


 ペットボトルのキャップを取ってほしいとか、背中がかゆいから掻いてとか、普段髪を結んでないくせに結んでほしいとか、自分でやれよ、みたいなのが多い。


「おい、余も暇ではないのだ」


「そんなこと私も知っていますよ、私も暇ではないんです」


「じゃあ用はなんだ?」


「靴紐結んでください」


 こいつ…余をなめているだろ。


「そんなことは自分でやれ」


 余は踵を返して大道具の仕事をしに戻る。


 後ろから何か言っている声が聞こえてきたが無視をした。


「宇野くん」


 担任の教師が余を呼び止めた。


「おお、お前か」


「お前か、って。まぁいいわ、この前は本当にありがとうね」


「ふ、ふん」


 余も段々耐性が付いてきたな。

 

 これは大きな成長だ、地球を征服するのも時間の問題だな。


「演劇部の顧問になったのか?」


「今はまだお手伝いって形かな、まだ私の中では早い気がするするから」


「そうか」


 こいつもこいつなりな思うことがあるのだろうな。


「それにしても九重さんがあんなに人に頼っているの初めて見たよ。普段は絶対自分のことは自分でやるし、他の人の世話もするの」


 なぜ余だけにそんな態度なんだよ。


「宇野くんにだけだよ、あんな姿見せるの」


「余は望んでいないのだがな」


「でも頼られすぎちゃってるから九重さんは、私より」


「そうだな、お前はもう少し頑張れ」


「ぐっ」


 本当のことだが言い過ぎてしまったか?


「まぁ無理するなよ」


「ふふ、九重さんが宇野くんを頼りにする気持ち分かるな」


 何でだよ。


「宇野さん。靴が脱げてしまいました」


「そんなもの自分で履け」


 



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