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第59話


 私、鈴木杏奈はただ誰かに見て欲しいだけだった。


 私の父親はは小さい頃に離婚をしていなかった。


 だからお母さんが女手一つで私を育ててくれた。


 お母さんは弁護士の仕事をしているからお金には困らなかったから不自由な生活をしていたわけではなかった。


 だけど弁護士の仕事で忙しかったからお母さんと話したことはほとんど無かった。


 お母さんの手料理も食べたことも無かった、基本は私にお金を渡して私が料理をするか、お弁当を買ってくるかのどっちかだった。


 お母さんは外でご飯を済ましてくるから私の手料理も食べたことは無い。


 お母さんは深夜まで仕事をして帰ってきてすぐに寝るか、早く帰ってきた日は部屋に閉じこもって仕事をしている。


 だからお母さんと話せれる時間は帰ってきた瞬間を狙うしかなかった。


「お母さん見て!100点取ったの」


「はいはい、私疲れてるから」


 と言って自分の部屋へ入っていった。


「お母さん見て!ピアノのコンクールで金賞取ったの」


「ごめん。私忙しいから」


 と言って自分の部屋へ入っていった。


「お母さん。私高校受かったよ」


「そうなの、それだけなら私寝るね」


 と言って自分の部屋へ入っていった。


 褒めてほしいなんて贅沢は言わないからただ知ってほしかった、見てほしかった。


 そんな私は高校に入ってようやく気づいた、友達が一人もいないことに。


 これまでお母さんに見てほしくて小中は勉強と習い事ばかりしていて友達が一人もいなかった。


 同級生との話し方が分からなかったからお母さんの真似をしていたら嫌われるようになっていた。


 何となく入った演劇部では部長を任せられて、嫌われながらも一生懸命にコミュニケーションを取ろうとした。


 私が何を言ってもみんなは嫌な顔をして、私だけが頑張っていた。


 本当はみんなでワイワイしたかったけど方法が分からなかったし、自分なんかが好かれるわけがないとも思っていた。


 そして高校も卒業をして、大学に入学した。


 大学に受かった時も特にお母さんからは何も言われなかった。


 大学はただただ勉学に励んだ。


 そして私は高校の教師になった。


「お母さん。私高校の先生になったよ」


「凄いじゃない」


 え?


 初めてお母さんに褒められた。


 今まで褒められたことが無かったけど生まれて初めてお母さんに褒められた。


 生まれてきて初めて感じるものがあったから胸から込み上げくるものがあった。

 

 凄く嬉しかった、涙を我慢するので必死だった。


「ということはもう一人暮らしするよね?私再婚するから早く家出ていってね」


 その一言で私は絶望を味わった。


 もう私はどうでも良くなり、そして私は高校教師になった。


 私は高校教師になりたくてなったわけではなかったから、適当な日々を過ごしていた。


 そして九重菫に出会った。


 この娘は私に似ている気がしていた。


 真面目で勉強も出来て演劇部に入っていて、口調もどことなく似ていた。


 でも九重菫は人望もあって、みんなにも両親にも愛されていて、それに私に憧れていると言っていることに私は気に食わなかった。


 そして、私はクラス劇の3日前にみんなが準備をしていたものをズタズタにしてやった。


 それでクラス委員長である九重菫が困ってくれるのでは無いかと私はそんな幼稚なことを考えていた。


 だけど九重菫はそんなことでは困るわけはなく、見事な演説でみんなをやる気にさせてみせた。


 私は九重菫が言ったクラス劇を完璧にすることが最大の復讐と言っていた通り、完璧なクラス劇を観て私はまた絶望を味わった。


 そして、デスゴーンに怪人化にされてしまい、みんなに迷惑をかけてしまっている。


 本当に何やってるんだろう?私。


 ***


 だからさぁ、余に見せるなって。





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