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第38話

 デカブツの中に入ったら相手の過去を見ることが出来るの本当にやめてほしい。


 余に見せてどうしてほしいのだ。


 これがあったせいで桜井莉緒の父親の時に少し手助けしてしまったのだ。


 もう余は知らないからな、見て見ぬふりをしてやるからな。


 そんなことを置いておいて、今はこのスライム状から出なければ。


 あ〜こいつを放っておければ簡単にここから出ることが出来たんだがな。


 魔法少女どもにあれほど言っておいて今更引くことは出来ない。

 

 仕方ない、もう一度魔法を使うか。


 このままだったら一生デカブツの中に居続けることになってしまうからな。


 右手にマナを集中させて、一気に風を送り出した。


 一瞬誰かの視線を感じたが、今は気にしてられない。


 しっかり井上美咲の腕を掴み、共に脱出することが出来た。


「おい、高宮千沙。お前たちの活躍は余が奪ってやったぞ」


「うわー、悔しいなー」


 そうだろう、そうだろう、余がお前の活躍を奪ってやったんだからな、さぞ悔しいだろうな。


 お前らの手で井上美咲を救い出したかったんだろうが、余が救い出したのだ。


 あれ?よく考えたら救い出したらダメなのではないか?

 

 井上美咲を救い出したら


「「「スーパースマイルスプラッシュ」」」


 ドガーンッ


 こうなるよな。


 何をやっているのだ余は。


 もしかしてこれってまんまと騙されたのか?


「いやぁ宇野に良いところ取られちゃったなぁ」


 高宮千沙が変身を解いて余に近づきながらそう言った。


「お前、余に井上美咲を救い出すように仕向けたな?」


 余は高宮千沙に詰め寄る。


「さ〜何のことかな?」


 高宮千沙は目が泳いだ。


 嵌められた、こいつが思うようにまんまと嵌められた。


 こいつの嘘は完璧だった、だから余はただただ奥歯を噛み締めることしか出来なかった。


「んっ」


 井上美咲が目を覚ましたようだ。


「美咲っ」


 高宮千沙は駆け出して井上美咲の元へと向かう。


「千沙ちゃん」


「大丈夫?美咲」


「大丈夫だよ」


 当たり前だ、余が救い出してやったんだからな。


 他の奴だったら大丈夫では済まなかっただろうな。


 もう一度言うが余が救い出したんだからな。


 何で救い出したんだ?


「何で美咲は私をストーカーとか嫌がらせしてたの?」


 高宮千沙は井上美咲になぜストーカーや嫌がらせをしていたのか問いただす。


「ごめん。それは違うの」


「何が違うの?」


 高宮千沙の言葉に怒りがこもっていた。


「本当に違うの」


「だから何が違うの?はっきり言ってよ」


 おいおい怒鳴るなよ、まともに会話が出来ないだろ。


 高宮千沙はもう冷静ではなかった。


「ごめん」


「ごめんじゃ分からないよ」


 もうダメだな、これじゃいつまで経っても会話にならない。


「ちょっとイタズラしたくなって」


 井上美咲は嘘をつく。


 本音を隠すなよ、そうじゃないだろ。


「嘘、言わないでよ」


 流石に嘘だと気づいた高宮千沙だが、途中で涙が出てきていた。


 もうこれはダメだな、このままこの二人は一生友達、親友の関係には戻ることは出来ないな。


「私のこと嫌いなら嫌いってはっきり言ってよ。そんな陰湿なことやめてよ」


「嫌いじゃないよ」


「嫌いじゃないなら何でこんなことするの」


「……」


 とうとう井上美咲は黙ってしまった。


「もういい」


 そう高宮千沙は言う。


 少し沈黙しているが、それは高宮千沙は次に言う言葉を探しているからだ。


 多分この言葉の続きを高宮千沙が言ってしまったら本当にこの二人の関係は終わってしまう。


 お前らはただすれ違いが起きているだけなのに。


 お前らは本当にこんなことで終わって良いのか?


 こんな結末はお前らが望んだことなのか?


 もう本当に過去を見せるとかズルだよ、ズル。


 あのシステムなんとかならないのか?


 なぜこいつらに感情移入なんかしなくてはならないのだ。


 あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー


 もう本当に今回だけだからな、本当の本当に特別に今回だけだからな。


 もう今後は絶対に知らないからな。


「本当にお前って最低だよな」


 高宮千沙と井上美咲は余の方へ振り向く。


 さっきまで黙っていた奴が急に喋ったらそら驚くよな。


「井上美咲、お前は高宮千沙のことを友達だと言いながらストーカーや嫌がらせをするとか人間性が知れるな」


「えっ」


 何を驚いている、まだ終わらないぞ。


「しかもデスゴーンにデカブツにされて一時的とは言え、お前はデスゴーンの味方だったって訳だ。お前はもう余らとは同じ人間ではない」


 余は人間でないがな。


「高宮千沙にストーカーや嫌がらせしたり、デスゴーンにデカブツにされて暴れたり、お前の良いところって一体どこにあるんだ?」


 案外スラスラ言えたな。


「高宮千沙、お前もそう思うだろ?お前もこんな奴早く絶交しろよ」


 パンッ


 と乾いた音が周りに響いた。


 高宮千沙が余の頬を引っ叩いたのだ。


「美咲はそんな子じゃないから」

 

 いてぇな、こいつ思いっきり叩きやがったな。


「宇野は美咲のこと全然知らないのに変なこと言わないでよ。美咲は全然最低じゃないから」


「千沙ちゃんっ」


「今回は悪いことして周りに迷惑かけちゃったけど、そんなことで最低とか人間性が、とか言わないでよ」


 さっきまで井上美咲に怒っていたが今は余に怒りの方向を向けている。


「美咲は悪いところより良いところの方がいっぱいあるんだから!美咲はこんな私でもずっとそばにいてくれた唯一の親友なんだから」


 井上美咲は泣きながらしっかりと高宮千沙の言葉を聞いていた。


「それに悪いのは私もだよ、ちゃんと美咲の気持ちを聞いてあげてたらこんなこと起こらなかったから」


「千沙ちゃんっ」


 井上美咲は高宮千沙に抱きつく。


「これ以上美咲の悪口言うんだったら許さないから」


「ああ、そうか。何も知らないのに悪かったな」


 そう言い残し余はこの場を後にする。


 余だって高宮千沙に騙されたのだから今回は余が騙したってバチは当たらないだろう。


 仕返しだ、仕返し。


 あとはちゃんと二人で話し合え、馬鹿野郎。

 


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この辺本当に王の風格あるわ
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