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2年生編 第51話


 本番がやってきてしまった。


 不安か不安ではないかで言えば、余は別に不安ではない。


 ちゃんと練習もしたから余は別に大丈夫なのだが…。


「おい」


「ひゃ、ひゃい!」


 あまりにも緊張しているクソ陰キャに声をかける。


 声をかけると驚いて変な声ををあげる。


「緊張しすぎだ」


 周りから見ても緊張してます、みたいな空気がヒシヒシ伝わってくる。


 そんな空気を出されたら他の奴らにも緊張が移ってしまうではないか。


「で、でも」


「でもではない。練習でやってきたことしか出来ないのだから、こんなの成功するに決まっているだろう」


 練習で失敗しているのに本番で成功するわけがない。


 だが、練習で成功しているのだから、練習通りすれば本番は成功しかないだろ。


 それにあんな練習させられたのだ、成功しか余は満足しないぞ。


「まぁ気楽にやれ」


「は、はぃ」


 もっと自信を持てよ。


 それにしてもすごいシャンデリアだな。


 舞踏会で使うのだろうが、こんな高そうなやつどこから持ってきたのだ?


「このシャンデリアは使うのか?」


 近くにいた7回ビンタ女に話しかける。


「ん?ああこれ?使うよ」


「こんなの吊るしたら危なくないか?」


「ちゃんと何回も試しに吊るしたし、よっぽどのことが無ければ絶対に落ちてこないから安心しなさい」


「そこまで言うなら安心しておこう」


「ほら、そろそろ始まるよ」


「そうだな」


 体育館が真っ暗になる。


 そして、ナレーションの声が入る。


「昔々或る所に、一人の少女がおりました。その少女は幼くして母を亡くし、継母とその連れ子の姉二人、父親と暮らしておりました。」


 とうとう始まってしまったな。


 去年のクラス劇もそうだが、絶対に何かが起きてしまうな。


 去年も余はポスターを貼りに行かされてしまったし、その時にもクソガキに出会って面倒を見させられたし、担任のこともあったし、色々なことがあった。


 今回もまんま同じ出来事が起こっている。


 なぜこんなことが起きてしまうのだ!去年と同じことが起こるとか、こんなキモい奇跡起きて良いのだろうか。


「あともうちょっとで出番よ」


「ああ」


 少し考え事をしていたらあっという間に余の出番が近づいてきた。


「こうしてシンデレラはかぼちゃの馬車に乗り、お城へと向かっていきました」


「はぁ~間に合った」


「シンデレラが会場についた時には12時にギリギリでした するといきなりシンデレラの前に王子が来ました」


 さぁ余の出番だ。


「美しい姫、私と踊って頂けますか?」


 完璧だ。


 さすが余だな。


「喜んで」


「こうしてシンデレラは王子と踊り始めました」


 ここで軽く踊らなくてはならないのが少ししんどい。


 なぜただ踊っているところを皆に観られなくてはならないのだ。


 頼むから早く終わってくれ。



 ギィィ



 やばい。


「離れろ」


「えっ」


 余はクソ陰キャを突き飛ばす。



 ガッシャーーーンッッ!



 吊るされていたシャンデリアが落ちてしまい、余は下敷きになってしまった。


 ガラスの破片が飛ばないように咄嗟に魔法で防いだ。


 シャンデリアを浮かしてしまったら余が魔法を使ったことがバレてしまうから大人しく下敷きになる。


 普通なら大怪我で済めば良い方の大事故なのだが、余は普通ではない。


 ザワザワ


 こんなことが起こればザワザワするのも仕方ないな。


 余は普通に立ち上がる。


 サッサッとガラスの破片を払い、演技を続ける。


 こんなことで失敗にさせてたまるかよ。


「大丈夫でしたか?怪我はありませんでしたか?」


「やっぱり私は周りにいる人を不幸にしてしまうんです!」


 なんだ?これは演技なのか?


「そんなことはありません。これはたまたまの事故です」


「私に近づかないでください!」


「いいえ、私をあなたの側にいさせてください」


「もう私に関わらないでください」


 うじうじうじうじ鬱陶しいな。


 こっちはこの演劇を早く終わらせたいのだ。


 というかこいつ本当に泣いていないか?


「あ〜、おい」


 そんなうじうじされると余も我慢の限界だ。


「ごちゃごちゃうるせぇ、幸せにしてやる。だから余の側にいろ」


 思わず余と言ってしまったが、まぁ大丈夫だろう。


「!…はい」





 クソ陰キャは余に抱きついてこの演劇は無事?に終わった。


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