表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海の子  作者: mito
3/8

海の意思

読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。

あれから1ヶ月、僕は毎日のようにうみの世話を見る生活をしている。うみは本当にだらしなく、どこまでも人間のよう。だけど、僕の行動一つ一つを監視する為に見つめてくる目には、時には恐怖すら覚えてしまう。

「うみさ、そろそろ見つめるのやめてくれない?」

「えっ、なんで?」

「いや、なんか気恥ずかしいし...」

僕だって年頃の男子高校生だ。うみは美少女だし、見つめられると流石にドキドキする。

「でも、ちゃんと見せてくれるんだよね?」

「全部は無理かもって言っただろ?」

「なるほど...人って感情があるのか。」

「人を何だと思ってるんだ?」

やっぱり不思議な子だ。人間なのに、人間っぽくない。いったいどういう存在なのか、1ヶ月経った今でもまだ分からない。何か、彼女の事を知る方法がないか。

「ねぇ、ちょっと出かけようよ。」

「え?どこに?」

「決まってるでしょ?」


そう言って、僕が連れてこられたのは、少し遠くにある水族館だった。いや、わざわざバスに乗ってまで来たかったのかよ。

「なんで水族館なんか...」

「ほら、水族館って海の生物にとって牢屋みたいなものじゃん?だから、確かめようと思って。」

ふと外に出たと思うと、やっぱり怖いし、不思議な事を言い始めた。本人は人間だと言うけど、僕にはとてもそうは思えない。

「うん、帰ろっか。」

「え?もう?」

「うん。だって、もう十分分かったから。」

どこか安心したような、でも絶望したような、うみはそんな顔を僕に向けた。本当に不思議だ。


「よし、じゃあうみは先にお風呂入ってて。その間にご飯は僕が作って...」

「ねぇ、あの人達誰?」

家に帰ってうみがベランダの方を指さした。その先には、見覚えのある人達がいた。

「よ、よぉ、元気だったか?守。」

「...マジかよ。」

そこに居たのは、僕の両親だった。

「それで?守とその子は、どういう関係なんだ!?」

「こら、あなたったらがっつき過ぎよ!守ももうそういうお年頃なんだから!」

「でもお前だって気になるだろ?」

うちの両親はかなりの親バカ。もちろん、僕がうみと一緒に暮らしてる事なんて言ってないから、かなり興味津々なご様子だ。

「あっ、まもる君と一緒に住まわせて貰っていますうみです。」

「ちょっ!」

「「い、一緒に住んでる!?」」

まずい、絶対に勘違いしてる。うみも面白そうにしてるし、こいつわざとだな。

「えっと、うみとはそういう関係じゃなくて!」

「「よ、呼び捨てで呼んでる!?」」

「あっ、しまった...!」

このままでは埒が明かない。仕方ない、追い出すか。

「こほん、これからもうちの守をよろしくお願いいたします。」

「はい、お願いされました。」

「おい!」

それから少しして、僕はなんとか両親の誤解を解いた。うみは何故か悔しそうにしてるし、本当に意味が分からない。

「守、これは父さんからの助言だ。」

「何だよ。」

「結婚しろ!」

「まだはえぇよ!」

「えっ、まだ?」

あっ、しまった。また誤解を生む発言を...!

「と、とりあえず!今日は何しに来たんだよ?」

とりあえずは話を逸らそう。これ以上やっていたら誤解ばかり生まれそうだし。それに、この人達が来る時は何か理由がある時だからな。

「実はな、最近の海の環境について話に来たんだ。」

お父さんの言葉で思い出した。そういえば最近の海は、どこか穏やかな気がする。だけど、もちろん異常はある。

「高波などは収まりつつあるが、深海生物が浅瀬に多く出現し始めた。浅瀬の生物の数も減っている、これは何かしらの災害の予兆かもしれん。」

「何か分からないのか?海の研究者だろ?」

「何も分からないわけではない。だが、お前が信じてくれるかどうか...」

「話せよ、相手は海の研究者の子だろ?」

正直、今までだったらこういう話には興味はなかった。だけど、今は違う。僕はうみとの生活で、彼女の事を知りたくなった。彼女は海と何らかの関係を持っている可能性が高い。だから、聞きたい。

「...お前は、海に意思があると言ったら信じるか?」

「えっ...」

父からの言葉に戸惑った。だって、僕は似たような存在と1ヶ月ぐらい過ごしてきたから。もしかしたら、彼女について何か分かるかもしれない。

「近年、あらゆる海域で人間が捨てたゴミが消えていっていた。これは世間的にはあまり知られていない。だがな、最近になってようやくそのゴミの行き先が分かった。」

父は言葉を溜め、真剣な顔で僕に言った。

「そのゴミ達は、日本海溝に集まっている。」

「...は?」

今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ