海にいた少女
読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。
近年、日本各地で多発している高波。浅瀬での深海生物の目撃。雨の減少による海面上昇。明らかに海の様子がおかしくなっている。学者達は大急ぎでそれらの原因を調査しているが、未だに原因は明らかになっていない。
「...来年には海面が1mも上がるか。なんか、ヤバそうだな。」
神奈川の海の近くに住んでいる僕も、もう移住を考えた方がいいのかもしれない。ちょうど海の近くを歩いてて分かるけど、確かに波が少し荒い。明日は高波かもな。
『...けて。』
「ん?誰かいるのか?」
海の方から声がした気がして、僕は砂浜に降りる。なんでだろう、僕はその声のした場所に行かないといけない気がした。
『たす...けて。』
はっきりと助けてと聞こえた。声が大きいというわけでもない。ただ、確かに僕の脳にその声が響いた。僕は走って、脳に響いただけで場所なんて分かるはずがないのに、その声のした場所に向かった。
「はぁ...はぁ...っ!おい、大丈夫か!」
そこに着くと、倒れ込んでいる少女を見つけた。僕は駆け寄って、そしてその少女の顔を覗き込む。
「おい、起きろ!どうしたんだ、何かあったのか?」
「ん...あなた、誰?」
彼女の目は海のように綺麗な青色をしていて、その白い肌は白い砂浜を連想させた。そして、彼女の髪は、いまにも消そうな程に透明感のある綺麗な白色をしていた。
「え〜っと、なんでこうなった?」
「ん?何が?」
今、僕の目の前には寝転がってポテチを食べているだらしないあの少女がいる。ちなみに、ここは僕の家だ。
「あの、まずは名前聞いていい?流石に名前も知らないままじゃ...」
「海、それが私の名前。」
名前だけか、苗字は教えてくれないんだな。まあ、いいんだけど。うみって、珍しい名前だな。
「あなたは?」
「僕は浅海 守。えっと、一応高校生です。」
「高校生...ね、一人暮らしなの?」
「まあ、一応。」
僕は両親がどちらも海の研究者で、そこそこ成功して稼いでいる。だから仕送りをしてもらって一人暮らしをしている。
「じゃあさ、私も住んでいい?」
「はい!?」
「うん、そうと決まれば私はもう寝るね。」
「いや決まってないよ!?」
いくらなんでも勝手過ぎる。女の子だからといって、僕も流石に許すわけにはいかない。実際、僕にとっても迷惑だし。よし、ここはガツンと...!
「そっか、そうだよね...」
「えっ...」
「私も分かってたよ、駄目だって事は。でも、あなたは私を助けてくれたし、せめて何か出来ればと思ったんだけど、まあそうだよね。ごめんね、私帰るね。」
「...いいよ。」
「ん?」
「住んでも、いいよ。」
僕が彼女がここに住む事を許すと、彼女は笑みを浮かべて僕の唇に指を当てた。あっ、これ騙されたな。
「言質、取ったからね?」
「っ...!やられたっ!」
彼女は僕の横を通り過ぎて、ソファに座り、僕の方を見て再び笑みを浮かべる。
「じゃあ、これからよろしくね?まもる君。」
僕の事を見つめる彼女は嬉しそうに言った。僕はこれから、この生意気な超絶美少女と一緒に暮らさなければいけないのか...まあ、悪くはないのか?
「はぁ...よろしく、うみ。」
「おお、いきなり呼び捨て。」
「駄目か?」
「ううん、その方がいいかな。」
僕は彼女の隣に座り、テレビを付ける。テレビでは最近の海の状態についてのニュースがやっていた。
「なあ、うみはどう思っ...」
僕がふと彼女の方を見ると、うみはとても暗い顔をしていた。怯えているようにも見えたその顔は、明らかな敵意のようなものを放っていた。なぜだろうか...僕はその顔を見て、荒れ狂う海の姿を鮮明に想像した。
今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!