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(フォルマルテの目線)vsキング②

―――フォルマルテの目線―――


地下1階層にある地下道を通り、出てきた空間は、要塞都市のインフラ施設が管理されている機械室だった。

20m程度ありそうな天井からは巨大なプロペラファンが回っており、船を漕ぐ際に生じるような音が施設内にこだましている。

正面には、仮面をつけた背の高い侍が腰の刀を抜いて構えていた。

その侍はキングと呼ばれている男で、俺が所属していた組織のボスである。

19種族の剣聖・安杏里とテスタが見守っている中、キングとの戦闘が開始されていた。


向こうには、全身を真っ白なスーツに身を固めた男が、仮面の侍との戦いを楽しそうに見ていた。

その男の名はサマエル。

安杏里の話しによるとキングへ力を分け与えているという15種族から千年戦争に参加している悪魔だそうだ。

ガリガリに痩せ細ったその顔は不自然なほどの歪んでおり、もはや人の容姿ではなくなっている。


仮面の侍に命令されて19種族の剣聖をここへ連れてくる際、安杏里へは俺の命に代えても安全を約束すると誓っていた。

その制約を守るため、そして人類の敵である悪魔と取引きし、組織(マフィア)を利用したキングは、掟に従い始末しなければならない。

仮面の侍が持つ残像剣から生み出され、血を這うように飛ばされてきたセカンドブレードを、人型の憑依体にて相手をさせている隙にその下を擦り抜け、俺はキングへ加速し突撃していた。


仮面の侍は、素顔を隠しているものの、残像剣のブレから生み出されるセカンドブレードを自在に飛ばしてくるその戦闘スタイルから、11種族から千年戦争に参加している天剣豪で間違いないだろう。

その男がテスタの実妹であるASの義父だということも知っている。

遠い未来、何かの事情でキングと戦うことがあるかもしれないと考えており、念のためにといった感じで侍の特性ついて調べ、事前に戦闘シュミレーションを行っていた。

捨て身の戦術スタイルをとる侍は、実は防御力が高い。

とはいっても守備特化型というわけではない。

超攻撃型の防御をしてくるのだ。

つまり攻撃をうけつつ、相手の体勢を崩し、隙をつくる防御を行ってくる。

力だけでなく、技にも優れた武術だ。

俺の目的は、仮面の男を特定のポイントへ誘導すること。


俺の突撃に対しキングは両手に持っていた刀を上段に構えてきた。

受け流してくるものと思っていたが、真っ向から受けてたつつもりなのか。

だが、それも一つの選択肢であると考えその対策はたてている。

俺の方としても真っ向勝負は望むところだ。

ここは一気に押し切ってやるぜ。

刀からの攻撃を受けるため、装備しているミスリル製の籠手を前に出し、両手をクロスさせた。

キングは一歩踏み込み、前へ出した足に体重を乗せていく。

そして、渾身ともいえる上段斬りが振り落されてくる。


ミスリル製の籠手と、振り落とされてきた刀とが接触すると、金属音が衝突する高音が鳴り響く。

その衝撃に全身の骨がきしみ音をあげ、景色が揺れた。

なんて凄まじい一撃なんだ。

さすが天剣豪といったところか。

体に潜行させていた『亀』の憑依体が俺を守ってくれていなかったら、全身の骨が砕けていたと思うほどの威力だ。

―――――――――――――俺は人型以外の亡霊にも憑依を許していた。その一体が防御に特化した『亀』の個体だ。

この憑依体は、通常の攻撃では致命傷を与えてくる攻撃から常に俺の体を守ってくれている。

仮面で表情は見えないが、必殺ともいえる上段斬りを俺が受けきったことに、驚いている感情が伝わってくる。



「私の渾身の一刀を耐えきったか。フォルマルテ。お前、私が知らない憑依体を体に潜ませているな。」



早速、人型の憑依体とは他に別のタイプのものが俺の体内に存在していることを感付いてきたか。

というか、気がついてくるだろうと思っていたぜ。

キングは、俺がまだ何かを隠しているかもしれないと考え始めているはず。

人は不確定要素があると本能的に恐怖を感じる。

それはお前も例外ではない。

そう。ここで俺から距離を置こうとするはずだ。


低い姿勢を保ちつつ、籠手を刀に合わせた状態をキープしたまま更に突進すると、仮面の男は地面を滑るように後退りをしていく。

なぜ距離を取ろうとしないんだ。

嫌な予感がする。

その時である。不意に背中へ、痛みが走った。

全くその予兆のようなものを察知できなかったが、背中から何者かが攻撃を加えてきてる。

亀の憑依体が、背中に刀を突き立てられていることを教えてくれた。

背後には誰もいないはず。

そしてセカンドブレードは、人型の亡霊が相手をしてくれている。

ということは…

―――――――――3本目の刀。サードブレードか!

籠手と刀を合わせ、力比べをしている状態をキープしたまま、キングが抑揚の無い声でそのブレードの名を告げてきた。



「フォルマルテ。お前には初めて見せるな。その背中に突き刺さっている刀は、常に死角の位置から攻撃を仕掛けてくるサードブレードだ。」



やはり3本目の刀が存在していた。

セカンドブレードと同様に残像剣のブレから創世され、独立して自由に動きまわることが出来、威力は弱いものの隠密性能を持っていることが最大の特徴であるようだ。

つまり渾身の一撃を受けきることは折り込み済みで、そのサードブレードを俺の背後に展開させていたということか。

だが、3本目の刀を創ってくるかもしれない事は想定していた。



「キング。そのサードブレードとやらはパワー不足だぜ。」

「何っ。パワー不足だと!」

「その程度では、俺へ致命傷を与えられるほどのものではないということだ。加えていうなら、その攻撃は想定済みであり、お前は俺を追い込んでいると思っていたようだが、実際のところはお前の方が追い込まれているんだぜ。」



俺の言葉を聞いたキングから怒りと戸惑いのような感情が伝わってくる。

そう。俺の体に潜行してくれている亀の憑依体が、背中に突き立てられた刀から命を守ってくれていたのだ。

サードブレードは背中に1cm程度突き刺さったものの、それ以上深く刺さることは無かった。

キングも異変に気が付いたようで、仮面に隠れている顔を歪ませているような声を漏らしてきた。



「サードブレードの刃が、深く刺さらないとはな。やはりお前は防御型の憑依体に守られているようだな。」

「だからその攻撃は想定の範囲内だと言っただろ。お前は俺の手の内にいるということだ。」



本能的に危険を感じとった様子のキングが、体の重心を後ろに下げた。

予測外の事態に陥り、無意識に間合いを空けようとしたのだろう。

俺は勝利を確信した。

お前の背後に、罠を張っていたのだ。

つまり、後退する行為はお前の死を意味する。

俺を甘くみていたこと、命をかけて戦う覚悟が足りなかった事がお前の敗因だ。

俺はここで切り札を使用する。

仮面の男の背後で罠をはっていた3体目の憑依体に命令をした。



―――――――――――――このタイミングを逃すな!キングを喰らい尽くせ!

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