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32話 (フォルマルテの目線)イケメン③

———フォルマルテの目線———


古いレンガ造りの家と家の隙間にある路地は、人がすれ違えるくらいの幅が確保されていた。

24時間日陰になっているせいで湿度が高く、空気が停滞しており不快に感じる空間だ。

向かいには地下1階層で最も凶悪と言われている武闘派マフィア鬼宿日の構成員のFMが警戒しつつこちらを見ていた。

キングから注意するように言われていた男だ。

俺よりも背が高く190cmはあり、痩せ型で修羅場をくぐり抜けてきた雰囲気を感じさせる。

武器の類は所持していないようだが、注意が必要であると俺の勘も告げていた。

理由は不明であるが、気を失っている義弟の屑礼を担ぎ、商店街へ向かっていた俺とこの路地で鉢合わせになったのだ。

FMは急いでいる様子で、屑礼を地面へ寝かせると両手を上げながら戦う意思はないことと、この先にある商店街に行かないように警告をしてきた。



「俺達にはどうすることも出来ないことがこの先で起きている。急いでいるのでこれ以上の説明は出来ないが、俺からお前に一つ忠告させてもらうと、そこには行かない方がいい。」



テスタから送られてきた『エアメール』にて、この先にある商店街で鬼宿日がトラブルを起こしていると知らせてくれた。

FMを見ると、何かに追い詰められた表情をしているが、予測を超える何かが起きているとでも言うのか。

俺の横を擦り抜けるために警戒しながら足を進め始めたFMへ、とりあえずみたいな感じで、商店街で起きていることについて尋ねてみた。



「この先で何が起きているというんだ?」

「俺達のようなちっぽけな存在では出来る事なんて何も無い。遥か別次元の事が起きている。」



その言葉には具体性がなく、その情報量では何かを判断をする事が出来ない。

FMが少しずつ歩く速度を上げ、俺の横を擦り抜けようとする。

困惑し、この先に行くべきか考え始めた時である。

―――――――とてつもない轟音が地下1階層を駆け抜けた。

俺は反射的に身を屈めていた。

何だ。何が起きた。

その圧で街全体が揺れている。

地震の類ではないと直感した。

計り知れない何か、そう巨大な隕石のようなものが落下してきたような衝撃だ。

その圧倒的なプレッシャーに、かつて体験した事がない恐怖を覚えた。

FMが言っていたとおりだ。

この世の終焉を迎えているような気持ちになっていた。

これは俺達ではどうにもならない、まさに神の領域に達するほどのものじゃないか。

走り抜けたはずのFMが、背後で地面に伏せボソリと呟く声が聞こえてきた。



「今の衝撃は、剣聖が放った一撃かもしれないな。」

「剣聖だと。この先に19種族がいるのか。また誰かと戦っているとでもいうのか。一体何が起きているんだ!」


「そうだ。この先で、15種族の悪魔と19種族の剣聖とが戦っている。」

「悪魔と剣聖だと!」



19種族は、全種族の中で最強と言われている。

さらにキングからの話しによると、この世代に生まれてきた剣聖は、歴代の中でも圧倒的であると言っていた。

FMがいうとおり、巨大隕石が落下してきたような轟音が剣聖の一撃だったとしたら、俺達なんてあっという間に消し飛んでしまうぞ。

そして戦っているという15種族は、19種族や13種族に次ぐ戦闘力を持っていると言われている奴等じゃないか。

FMの言うとおり、ここから逃げるべきところで、今すぐに屑礼を背負って逃げるべきなんだろう。

だが、この地下1階層には俺を育ててくれたシスターや、テスタがいる。

黒燐(マフィア)の構成員の立場というだけではなく、俺はここを守らなければならない。

そう、俺に出来ることと言えば、戦うことしかない。

そもそも、どこに逃げたらいいんだ。

俺はここで生まれここで死ぬと決めていた。

逃げるという選択肢なんて初めからないんだ。

屑礼を置き去りにして、商店街に走り始めていた。


大通りに出た時である。

商店街で熱爆発は起きる景色が見えていた。

炎をまとった熱風が吹き荒れ、街を飲み込んでいく姿がスローモーションのように見える。

熱爆発が、生物のように要塞都市を飲みこもうとしている。

一応ではあるが、俺の体に憑依している亡霊が、体から抜け出して俺を守ろうとしてくれているが、あの爆風では出てきた亡霊も楯役に成りえる事は出来ない。

俺の本能が、死を回避する事が出来ないと告げていた。


だが、何故か俺は生きていた。

―――――――スローモーションのように見えていた爆炎が消えていたのだ。

一帯が熱爆発により焼け野原になっているはずが、街も破壊された様子がない。

何故だ。

何が起こったのだ。

夢でも見ていたのだろうか。

何者かがあの爆炎から要塞都市を守ったようにも思える。

判断材料が何もない状況下で、何かを予測しても無意味なのだろうが、考えずにはいられない。

気持ちの整理がつかないままでいた俺へ、追ってきていたテスタが声をかけてきた。



「フォルマルテ。何をボーっとしているんだ。らしくないぞ!」



テスタの言葉に正気を取り戻した気がした。

そうか。俺はボーっとしていたのか。

辺りをみるといつもとかわらない様子に戻っている。

FMは、15種族と19種族との戦いが行われていると言っていたが、もう終わったのだろうか。

そもそもだが、15種族は地下2階層に封印されているはずではないのか。



「フォルマルテ。商店街へ行くんだろ?」

「この先は危険だ。テスタ。お前はここに残れ。」

「何を言ってる。その命令は却下だな。」

「15種族、もしくは19種族がいるかもしれない。」

「まじかよ。剣聖と悪魔が闘っていうのかよ。それって頂上対決じゃん。」

「いいだろう。テスタ。『エアメール』で周辺の情報を拾うことができるか?」

「そう言うと思ったぜ。『エアメール』なら、もう飛ばしているぜ。」



テスタが指さす方を見ると、風にのり商店街の方へ紙飛行機が飛んでいた。

相変わらずよく機転が利く奴だ。

『エアメール』は対象者へ手紙を送ることができるが、索敵機能もある。

既に商店街が見通せる位置まで到達しているようだ。

早速情報を拾い上げ様子を報告してきた。



「『エアメール』からの映像では、特に町が破壊された様子はない。人がいない商店街を腰に剣を刺した女の子が一人で歩いている。もしかしてあれが剣聖だって言うのかよ。」



腰に剣をさした女の子と聞いて、緩んでいた体に緊張が走った。

そこに剣聖がいるのか!

キングは剣聖を連れてくるように言ったが、性別については何も言っていなかった。

テスタの様子はというといつもと変わりなく見えるが、強心臓なのか、鈍感なのか。

だが、今はそのお前が羨ましく感じるぜ。

19種族は人類でありながら、俺達と同盟関係にない。

いわば敵だ。

むやみにやたらに殺戮を楽しむ者だとしたら、どうしようもない。



「テスタ。その剣を持った女はどこにいる?」

「あそこだ。ここからでも見えるじゃん。」



テスタが指さす方へ顔を向けると、向こうに少女がいる。

小柄な可愛い女の子だな。

確かに腰に剣をさしているようが、剣の達人といった雰囲気は微塵も感じられない。

19種族であるか、本人に聞いて確かめるしかないのか。

足を止め少女を凝視していると、テスタが正面にまわり込み緊張感のないしょうもない事を言ってきた。



「フォルマルテ。なに見惚れてやがる。お前って、ああいう可愛い感じの女の子がタイプなのかよ。」

「確かに可愛い女ではあるが、俺の興味は違うところにある。」

「興味が違うところって、それはどこですか。おい、おい。まわりくどい言い方はやめろよな。」

「だから、あの少女が19種族の剣聖かもしれないんだろ。」

「なんだ。そんなことを考えていたのかよ。そんなこと、本人に聞いて確かめたらいいじゃんか。」



やれやれのポーズをしていたテスタが、いつもの感じで緊張感なく俺を置き去りにして歩き始めた。



「フォルマルテ。何をしている。あの少女に剣聖であるかを確認するんだろ。」

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